SEA - ADVENTURE ☆4☆
☆ 4 ☆
今まで誰も帰って来なかったという死の穴。
真っ暗で、先の見えない。
全てが無になり、闇に飲み込まれ、全てを失う。
現実世界と黄泉の世界をつなぐ洞窟。
たった1人…帰って来れた初代海の王。
だがその姿は重症…すぐには旅には出られなかった。
それからは、誰も寄り付かず伝説として名だけ残り、存在し続けた。
伝説の剣…スカイ。
初代海の王のみ手にした深い深い真っ青な剣。
はたして、第15代目海の王 神崎野分。
スカイを手にし、洞窟から無事に出て来れるか。
「うわあぁぁあっ!!」
『ザバババババッッ』
野分は洞窟内で大量の水に流されていた。
ようやく止まる頃にはだいぶ奥まで流されていた。
「げほっげほっ!!なっ…なんなんだこの洞窟!
仕掛けなんか聞いてないぞ!!」
『カチッ』
咳き込み体を起き上がらせるために手で壁に触れるとこの場に似合わない音がした。
……………嫌な予感。
『ガゴンッ…ゴロゴロゴロゴロッ』
地響きをさせながら何かが転がってくるような音がする。
「うっ…うわあぁあ!!!」
野分に向かって大岩が転がってきた。
全速力で逃げ回る野分だった。
「……………」
シェスカは城から洞窟を見つめていた。
「シェスカ、どうしました?城の人達が元気がないと心配していますよ?」
アロスが横に立ち声を掛ける。
「ま、考えてる事は解りますがね…大丈夫ですよ。予言もありますし、なんせ約束したんですから"帰ってくる"と…」
アロスの言葉にシェスカは顔を上げると優しく笑うアロスがいた。
そんな様子を見てシェスカも笑った。
「そうだね!うじうじしててもしょうがない!私らしくない!」
シェスカのいつもの様子にアロスも安心したように笑った。
「よーし!今日は私がご飯作ろうかな!!」
「えぇっ!?」
にこにことご機嫌なシェスカの発言にアロスは変な声が出た。
……城中に悪臭がしだすのは時間の問題だった。
『野分…海の下にも世界があるんだ』
『海の下の世界?どんなとこ?』
『んー…そうだなぁ…海の下の世界にはな、晴れの日がないんだ!海の下だから上には海の波があるんだよ』
『上は波なんだ!すっごい!見たい!!』
『よーし!一緒に行こうな!』
『本当!約束だよ!』
……そっか…だから…ゆらゆら揺れてたんだ…。
「……………」
目を覚ますが光はない、真っ暗だ。
あれからどのくらい経ったのかな…解らない。
こんな真っ暗の中でどこにもぶつからないのが不思議でしょうがない。
野分は立ち上がりゆっくり歩き始める。
"野分"
しばらく歩いていると名前を呼ばれた気がして振り返る、すると真っ暗の中何かが光った気がした。
「つっ………」
ゆっくり近付くと急に周りが明るくなり目を開けてられなくなる。
"海の王…"
ゆっくり目を開けると周りは真っ白で少し先には真っ青に光る剣があった。
「真っ青な剣…青空みたいだ……」
野分がゆっくり近付いていくと剣はふっと消えて野分の手に移動した。
"海の王…選ばれし者…"
"初代の魔力を感じる…心地よい…"
声が聞こえる…ふわふわする…。
"我、伝説の剣、スカイ…海の王…神崎野分とともに"
ふわふわして…飛んでるみたいだ…。
そのまま意識が遠退いた。
「これはまた、凄いのを作りましたね…」
「えっ!アロスに初めてほめられた!」
城ではあの日から毎日のようにシェスカがご飯を作っていた。
「いえ!ほめてません!」
アロスはキッパリ言うが安心したように笑っていた瞬間……………
『ガラガラガラガラッッ!!!!!』
物凄い音がして驚き、2人は音がした方へ向かい構える。
「っ…ぃてててっ…あれ!城…?」
「「つ…野分様!?」」
そこには野分がいて2人は慌ててそばへ駆け付ける。
「大丈夫ですか!?いつからそこに?」
2人は心配そうに声をかけるがどこか嬉しそうにしていた。
だがそこで野分は首を横に振る。
「そんなっ…どこかお怪我をっ……」
シェスカが心配して声を掛けると野分は顔を上げて2人を見つめた。
「…"様"はなし!後…敬語もな!」
野分はそういうとにっと笑った。
その様子に2人は安心したように笑った。
「ん?つっ…何この匂いっ…」
すぐに漂っている匂いに野分が顔をしかめる。
「あ!私がご飯作ったの!」
シェスカが思い出して野分を引っ張り連れて行こうとする。
「野分……御愁傷様です…」
アロスが両手を合わせ頭を下げる。
「ええっ!?ちょっと…王としての扱いは無しにしてないからな!!」
見た目も味もばっちりな料理は期待出来ない。
「……神崎野分」
3人で騒いでいるとカリスがいて立ち止まる。
「約束通り帰って来たぜ!スカイもとってきた!!」
野分は真っ直ぐカリスを見つめてにっと笑って手を伸ばすとスカイが野分の手に現れる。
「野分っ!本当にスカイなの!?」
皆驚きすぎて呆然としてしまう。
カリスが近付きスカイを手にして見つめる。
「…確かに…伝説通りの真っ青な剣…」
すぐにカリスの手から消え、野分の手に戻った。
「初代海の王ですら生死をさ迷い、重症で手に入れた伝説の剣を、殆ど無傷でっ…」
アロスは信じられないと言うように話す。
"……予言通り…いや…それ以上か…"
カリスはそのまま野分の前で方膝をつき頭を下げる。
「第15代目海の王 神崎野分様…今までの御無礼をお許しください…」
「んー…やだっ!!」
カリスの言葉に野分はキッパリ答える。
「野分っ…カリスはそのっ…」
アロスが慌てて弁解しようとするが野分に止められ。
野分はカリスに近付きしゃがむ。
「…様はなしだって…様なしにしないと許さない!!」
野分の言葉にカリスは勢い良く顔を上げる。
そこには、にっと無邪気に笑う野分がいた。
アロスとシェスカもその様子に安心したように笑った。
「…野分…ようこそ海陸界へ…お待ちしておりました。」
カリスも無邪気に笑うと野分と手を取り合い立ち上がった。