SEA - ADVENTURE ☆18☆
☆ 18 ☆
あの夜…カリスは笑っていた。
ちゃんと謝って、自分の思いを伝えると吹き出して笑っていた…。
いつもと変わらない笑顔で笑っていた。
「カリス、どこ行ったのかな…?」
野分達はあの森にある獣神の洞窟に来ていて、野分とアロスはシェスカが出て来るのを入り口で待っていた。
「どこに行ったんでしょ…きっとそのうちひょっこり顔出しますよ…」
アロスは野分に伝えるがこちらを向かない野分に一息ついて外を見つめた。
カリス…一体どこに行ってるんですか?
あなたはお姉さんを、野分を守るんじゃないんですか…?
暗い暗い廊下をカズミが歩いていた。
『お前は、ハブのクローンだ!!』
海の王と会って話しているうちに昔の事を思い出していた。
「おー…カズミー!!」
歩いていると声を掛けられ顔を上げると、そこには四神将のガンテがいて、小さい子どもを連れていた。
「どうしたんすか?その子…まさか隠し事!?」
「んな訳ないだろ!!」
カズミが近付いて行きガンテをちゃかす。
カズミの様子にガンテはツッコミをいれて一息つく。
「隊長が連れてきたんだよ、俺のとこで面倒みろって…」
その子どもはビクビクとしていて、ガンテの後ろに隠れようと体を縮ませていた。
カズミはその様子を見てしゃがんで子供の目線に
合わせ手を伸ばした。
「つっ……!?」
子どもは怯えてカズミの手を弾き返す。
「おいっ……!」
ガンテは驚き声を掛けようとするとカズミはそのまま子どもの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「ごめんな、驚いたか?大丈夫、何も怖いもんはねーし、このおじちゃんが助けてくれるからな?」
「おじちゃん言うな!!」
カズミは子どもに目線を合わせたまま話し、優しく笑い立ち上がった。
「じゃあまたな!」
カズミは軽く手を振り歩いて行く。
「……………」
あの子供の姿がまだここに来たばかりのハブに重なった。
ーーーーー
「隊長~!おかえり!!」
ふと顔を上げるとまだ幼かったマミロが隊長に向かって走って行くところだった。
その先には隊長がいて、一緒にボロボロで弱々しくビクビクと怯える少年がいた。
「その子、誰?」
マミロが近づくが少年はビクビクと怯え体を縮ませて隊長の後ろに隠れるのに必死だった。
「イットだよ、仲良くね?マミロ」
マミロは少年をじっと見つめていた。
自分の場所を取られ少し嫉妬しているようにも見えた。
「宜しくね!イット!」
「つっ!?」
少年は、差し出された手にもビクビクと怯え震えていた。
「う~ん…ちょっと時間掛かるかな~…」
自分から全く離れない少年に隊長は困ったように頭をかいた。
それから見る度見る度、その少年はビクビクと怯え少し離れられてもすぐに隊長の後ろに隠れてしまっていた。
一度庭に1人でいるのを見掛けてマミロがそっと近付いて行くのを見た。
「…………わぁあっ!!」
「ぎゃああああっ!!!」
マミロが草むらから驚かせ、少年は叫びバチンッとマミロの頬を叩いてしまった。
「ぁ…と……っ……」
「っ………ぅわあぁあっ~!!!」
2人とも驚いて固まり少年はビクビク怯え、マミロは叩かれたと理解すると大声で泣き叫んだ。
「なんだなんだっ!?」
「どうしたっ!?」
その声に人が集まってくる。
少年は逃げるように森の中へ走って行った。
「ずっ…ぐずっ……」
森の中、マミロはお気に入りの場所で痛みよりもショックで泣いていた。
あれから手当てをしてもらうと、軽い擦り傷で済んでいた。
「暗くなるの早くなってきたな…帰ろ……」
暫くお気に入りの場所にいるが周りを見ると暗くなりはじめていて、立ち上がり歩き出した。
ーーーガサガサッ…ガサッ……
歩いていると草むらから音がしてびくっとする。
「なっ…何っ?」
"もしかして…おばけっ!?"
ーーーガサガサガサッッ!!
「っ……やだぁ!!!」
マミロが怖がりうずくまるが、おばけは襲ってくる感じが全くなく、ゆっくり目を開けて顔を上げた。
そこにはイットがいて、葉っぱまみれだった。
「ぁ…と……その……ごめんっ!!!」
イットはビクビクしながら頭を下げて謝り、片手に握り締めた花の冠をマミロに突き出した。
握り締められた花の冠はボロボロで、イットも震えていた。
「ふっ……ふふふっ……」
マミロはなんだかおかしくて笑い、イットの握り締められた花の冠を受け取った。
「っ…そのっ……ほっぺ…叩いちゃって…」
「大丈夫だよ!ありがとう!!」
イットはビクビクしながら顔を上げるとボロボロの花の冠を頭に乗せてマミロが嬉しそうに笑っていて、イットも安心したような顔をした。
「一緒に帰ろ!」
「っ……うんっ!」
マミロはイットについている葉っぱを取ってあげると手を差し出した。
イットは返事をするとぎゅうっとマミロと手を繋いで歩きだした。
「さっきは、驚かせちゃってごめんね?」
「僕も驚かせちゃったから…それに……」
2人は歩きながら話し、マミロは顔を上げてイットを見た。
「僕、男の子だから大丈夫だよ!」
イットは夕日に照らされて茶色い髪が少しオレンジに光り、真っ直ぐな深い青い目に引き込まれて行った。
「私っ…マミロ」
「……イット…宜しく!」
2人は無邪気に笑って歩いて行った。
『カズミさん!俺、四神将になるよ!』
ハブの真っ直ぐな目、これからの未来へのワクワク感が伝わるような無邪気な笑顔にこっちまで笑っていた。
『キミは本当は海の王で、何もかも奪われた…』
隊長から四神将の集まりの時、聞かされた海の王、ハブの話しがあるまでは……。
ハブはなんもないように過ごしているが、当時は何もかも手につかず荒れて荒れて…泣いていた。
そんな姿を見て俺は、こいつらを守る…。
そう決心したんだ。