SEA - ADVENTURE ☆15☆
☆ 15 ☆
ーーーーー「そして…森の中で倒れているハブを隊長が助けたんだ」
カズミの話しに4人は固まり、何も言えなかった。
「実際にマガと同じ力を持つ、初代海の王の魂は逃げたお前の中にある…この前の水龍が証拠だ…そして……」
カズミは野分を見た後、カリスを見つめた。
「カリス=アリマ…お前の実の姉『ミカロ=アリマ』の魂もだ」
カリスは下を俯き、3人は動揺してカリスを見つめた。
「お前はハブの人生を壊し、アリマ家の器にされた…都合の良い人形なんだよ!」
カズミはそう言うとゆっくり野分に近付いて来る。
俺がハブの人生を壊した…?
『野分っ…私の希望』
『ごめんねっ…さよならっ』
『僕は誰…僕はいらないの…?』
あれが…ハブ……?
「お前はっ…ハブのクローンだっ…あいつらは俺が必ず守るっ…」
カズミは野分を睨んだ後横を通り姿を消した。
都合の良い人形…ハブのクローン…
ハブから一体いくつのものを奪った…?
母親、父親、優しい村の人、命、人生…
カリスのお姉さんの魂が…俺の中にある…?
「野分…すみません、話せなかった訳ではなくて…」
「アロス、姉さんのことは俺が話す…」
放心状態の野分にカリスがゆっくり話し始める。
「俺の姉さん…ミカロ=アリマは不思議な力を持っていてその力のせいで体が弱かった、だけどいつも元気で、優しかった…」
風に揺れるふわふわの長い髪…
"カリスー!"
明るく、無邪気な笑顔が大好きだった。
まだ父さんが城にいた時の事だ。
「しっかり剣を構えろカリス!」
「うっ、ちょっ…と…うわあっ!?」
父さんとの訓練で重たい剣を持ちヨロヨロして倒れる。
「いってーっ…」
「カリスにはまだ早いって…カリス大丈夫?」
優しく笑い、温かい手を差し出してくれケガをするといつも姉さんが手当てをしてくれた。
「また、こんなにケガしてー」
「いてててっ…大丈夫だよ!強くなってミカロ姉ちゃんを守るんだから!」
カリスは真剣に言う、ミカロはきょとんとした後、クスクスと笑った。
「なっ、なんだよー!」
「あははっ!ごめんごめん!」
カリスはブツブツ言いながら拗ねてしまい背中を向けてしまうがその背中をミカロが抱き締めた。
「ふふっ、ありがと、頼りにしてるよ!」
ミカロがそう言うと2人で笑い合った。
ふわふわとした甘いにおい…。
優しい声…温かい手…。
ずっとずっと一緒にいたいと思った。
ミカロ姉ちゃんは俺が絶対守るって決めていた。
だけど別れは突然で…
父さんと姉さんが出掛けから帰ってきて、次の日に2人で久々に出掛けようて話していた日だった。
「ミカロ姉ちゃんっ!!」
いきなり青白い顔をしてミカロ姉ちゃんは倒れた。
カリスは走り寄り、助けを求めて周りをキョロキョロするが誰もいない。
「つっ…嫌だっ!嫌だよっ…誰かっ…」
「ふふっ…力…使い過ぎちゃったみたい…」
ミカロは弱々しく笑う。
「ごめんねっ…カリス…楽しみにしてたのに」
「そんなの良いよっ!!」
「私もっ…楽しみだったのになー…」
ミカロの顔色も悪く、呼吸も浅くなっていく…
何も出来ないカリスはどうしたら良いか解らず涙を流すだけだった。
「ミカロ姉ちゃんっ…嫌だよっ…死んじゃやだぁ!!」
「カリスっ…」
ミカロはカリスを見つめて涙が流れる頬に触れた。
「カリス…大丈夫っ…また会えるよ…きっと」
ミカロはふと優しく笑った。
俺の大好きな笑顔だ。
「絶対…会えるっ…カリス…またねっ…大好きよっ…」
ミカロはそのままゆっくり目を閉じて、触れていた頬から手が力無く下りた。
「つっ…ミカロ姉ちゃんっ!!!」
カリスはミカロを抱き締め、泣き叫び続けた。
2人の姿を見つけたのは辺りも真っ暗になっていて、カリスはミカロの上でぐったりとしていた。
暫くは混乱していて何も手につかず、ミカロの言葉の意味も考えられなかった。
そんなある日、父さんが話しているのを聞いてしまった。
「海の王を作るだって!?それじゃっミカロの魂をっ…不思議な力を持っていて…」
カリスは最後まで聞かず走り出していた。
海の王…?ミカロ姉ちゃんの魂…?
"また絶対…会えるから"
ミカロの言葉が頭に浮かぶ。
「解ったミカロ姉ちゃん!俺っ…もっともっと強くなる!」
カリスは決心したように両手を握り締めた。
「ミカロの魂を使えば…カリスもまたミカロに会えるっ…」
父さんは目の輝きも強く、相手を真っ直ぐ見つめていた。