SEA - ADVENTURE ☆14☆
☆ 14 ☆
森の中にある、小さな小さな村。
そこで今まで数えるくらいしかない大嵐の日。
1人の男の子が元気な声をあげて生まれた。
母親は体が弱く子供を生む事は生死をさ迷うと言われていた。
母親は無邪気な笑顔と優しく明るい性格で、その明るい性格が前を向き、子供を生む事が出来た。
男の子は希望だった。
でも何も求めない、元気に育って欲しい。
それだけが両親の願い…。
だが1年後…男の子から不治の病が見つかった。
生死をさ迷いながら生んだ子供…。
希望の子…その子を失う…?
母親はその日から変わってしまった…。
無邪気な笑顔が消えた…。
男の子を見なくなった…。
ついに…………。
「希望の子…いないわっ…そんな子っ…」
男の子の存在を否定し、壊れてしまった母親。
男の子は痩せ細り、衰弱していった…。
危険を感じた村人が男の子を助け、育てた。
男の子は自分の病を知り、必死に戦った。
また母親に会えるように…希望になれるように。
全ては母親のために……。
そんな男の子の願いが届いたのか、不治の病は消えていた。
男の子は元気な体で走る…。
これから思い描く未来にドキドキしながら全速力で走った。
走って…走って走って……。
いつも遠くから見る家、父さん、母さん…。
家の前にはたくさんの人…。
その理由を聞かず、皆や母さんを驚かせようと裏に回り窓へ手をかけ家の中をこっそり覗いた。
そこには、村の皆と、父さん、母さん…。
そして…自分にそっくりな男の子がいた…。
その男の子から目が離せなくなる…。
父さんがその男の子の背中を優しく押した。
「つっ…ああっ…うっ…」
母さんが泣きながら弱々しく両手を伸ばし、その男の子を抱き締めた。
"この先は見てはいけないっ…聞いてはいけない"
そんな警告が聞こえるのに、動く事が出来ない。
村の皆と、父さんの悲しい顔…。
母さんの安心した嬉しそうな顔…。
そして……
「つっ…お帰りっ…野分…私の…希望っ…」
母さんの言葉に何もかも真っ白になった。
気付いたら逃げ出すように走っていた。
"見なければ良かった"
"聞かなければ良かった"
『私の…希望っ…』
"嘘だっ!!"
『野分っ…』
"あの子が野分っ…"
男の子は急に走るのをやめてふらふらと歩く。
"じゃあ…僕は誰っ…"
立ち止まり…下を俯き呆然とする。
"僕は…いらないのっ…?"
ーーーガサガサッ…
物音がしてゆっくり振り向くと、僕を育ててくれた人がいた。
その瞬間涙がボロボロとこぼれ、その人にしがみつき大声で泣き叫んだ。
それから暫くして、大事件はおきた…。
"マガと同じ凶悪な力を持つ者が村にいる"
そんな噂が広がった。
『野分は違うっ!』
『こっちが本物よ!』
いつも優しい村の皆の怒鳴り合う声…怖いっ…。
『これじゃらちがあかない!』
『2人だ!2人とも殺せっ!!』
怖い…怖いっ怖いっ!!
『マガが生まれてしまうっ!』
『1人逃げたぞ!捕まえろ!!』
急に乱暴に引きずられ床に叩きつけられる。
一瞬、僕の偽者を抱き必死に逃げる母さんが見えた。
『ぐっ…つ…げほっ…嫌っ…助けっ…』
何人もの大人に見下ろされ、次々にくるとまることのない全身の痛み…。
『嫌ー!助けて!!』
骨の折れる音…何かが潰れる音…。
血のにおい…大人の荒い呼吸…悲痛な声…。
『ぐ…ぅぐっ…助けっ…かっ…母さんっ!!!』
必死に伸ばした手は届くことはなかった……。
村はそのまま内乱がおき、焼け野原になった。
小さな小さな村の…大事件だった…。