SEA - ADVENTURE ☆13☆
☆ 13 ☆
正直…野分の言う話しには驚いた。
野分はもう彼女を知っているのか…。
優しい無邪気な笑顔…。
"カリスー!"
今度は守ると決めたんだ…。
いつもは賑やかな廊下、カズミは目的地に向かってそこをゆっくり歩いて行く。
「あ!カズミさん!!」
声が聞こえ顔を上げるとイットが走ってくる。
その後ろをマミロ達も歩いて来る。
「おう、もうケガは大丈夫か?」
「はい、もう全然大丈夫!」
イットは嬉しそうに笑いながら腕をブンブン回していた。
それでもどこか元気がない気がするのはやっぱり海の王のことがあったからだろう…。
「カズミさん…?」
「ん…いや、なんでもない!」
カズミはイットの頭をぐしゃぐしゃと撫でると、じゃあな!っと言って歩き出した。
海の王、神崎野分…真実を知ったらどうするんだろうな…。
ハブ達は俺が必ず守るっ…命にかえても…。
カズミは真剣な顔になりどこかへ消えて行った。
『私の希望の子…』
『僕は誰…僕はいらないの…?』
『いたぞ!捕まえろ!!』
『母さんっ!!!』
『さよならっ…』
「つっ…!?」
はっと目を覚ますとパチパチと木の弾ける音。
近くでアロスとシェスカが寝ているのが目に入り、野宿していたのを思い出した。
「どうした…?」
「あ、ごめん…大丈夫!」
カリスが起きていて起き上がる野分に声を掛けた。
あの声が夢に出てきてリアルにうつしだされる。
大勢の人の声…。
悲しい声…。
"いったいなんなんだよっ……"
野分は難しそうな顔をしながらそのまま横になった、その姿をカリスは見つめていた。
そのまま横になっていたが眠れず朝になってしまい、また4人で歩き出した。
寝れなかったからか頭がぼーっとしている。
そんな様子をシェスカが心配そうに見つめる。
カリス、アロスが歩いて行くのを後ろからついていく。
「次の獣神は、この森の中の洞窟みたいですね」
アロスの言葉に我にかえり顔を上げるといつの間にか目の前に大きな森があった。
「この森の中から洞窟探すのは大変そうだな…」
カリスも森を見つめてため息をつく。
「大丈夫!私なら解るよ!!」
「本当ですか…?」
前をアロスとシェスカが言い合いながら歩いて行くのを後ろからついていく。
「つ…野分っ!!」
森に一歩足を踏み入れた瞬間、カリスが叫び3人は野分の前後に立ち構えていた。
「…先日はどーも」
視線を感じて顔を上げるとそこにはカズミが立っていた。
「お前はハブ達のっ…」
カリスが先頭で剣を構える、シェスカとアロスは周りを警戒する。
「今日は俺だけだ…そう言えば自己紹介してなかったな…俺は、カズミ…宜しく!」
カズミは野分達にへらっと笑う。
おちゃらけた様子を見せるがカリスとアロスが睨み付ける。
「……神崎野分…なんでお前がそこにいるんだろうな…そこにはハブがいるはずだったんだぜ?」
カズミは下をうつむき、話しながらゆっくりと野分達の前まで歩いて来る。
「ハブが…ここに…?」
「カリス=アリマ、アロス=ミナス…お前等2人は知ってるはずだっ…」
カズミは何も知らない野分の様子に苛立ち4人を睨んだ。
ゾクリと背筋が凍るように動けなくなる。
「どういう事?ねぇ!海の王は野分なんでしょ?預言されたんじゃないの?」
シェスカは理解出来ず2人に聞くが答えは帰ってこない。
「海の王、神崎野分…」
名前を呼ばれ顔を上げると冷たい目をしたカズミから目が離せなくなる。
「教えてやるよ…お前は本当の海の王じゃない…じゃあ何者なんだって…そこの2人が言えない理由…教えてやるよ……」
カズミはため息をつくと4人をまた真っ直ぐ見つめた。
"嫌ー!助けてっ…助けてください!"
"嫌だよっ…死んじゃ嫌だ!"
"もう1人はどこだ!絶対に逃がすな!"
"またっ…必ず会えるっ…"
頭の中で飛び交う悲痛な声…あの声だっ…。
"僕は誰っ…僕はいらないのっ…?"
『俺はお前を倒してっ…自分を取り戻す!』
「そう…あれは俺がまだ四神将になったばっかの時…ハブは俺達のところへ来た…」
森の中の、小さな小さな村でおきた…大事件だった…。