SEA - ADVENTURE ☆12☆
☆ 12 ☆
"初代海の王、オリカスラ=メデル"
ああ…海陸界に来る前に聞いた声だ…。
"良かった…巡り会えたのね"
知らない女の人…誰…?
"また…一緒にいられるのね"
あ…俺この笑顔どこかで………。
「イットー?そろそろご飯食べに行こ!」
「……んー」
マミロはイットを見つけると近付いて行き食事に誘うがイットはぼーっとしたままだった。
海の王のところから帰ってきてからずっとこんな調子でぼーっとしている。
マミロはその様子を見て一息つくとイットの後ろに座りその背中に寄り掛かる。
「イット…大丈夫だよ、1人じゃない!まだはじまったばっかりじゃない!」
「ん……おう!」
イットはマミロの言葉に驚くがふと安心したように笑いそのままマミロに寄り掛かった。
「つ~!!重い重い!!」
「いやいや~…マミロの方が重いだろっ…!」
2人とも騒ぎながら笑い合いイットにもいつもの笑顔が戻っていた。
「……やっぱりイットにはマミロちゃんだよね」
「なかなか来ないと思ったら…」
少し離れたところに、リラとシンがいて2人の様子に安心したように笑った後、騒ぐイットとマミロの元に走って行った。
『大丈夫…私には君が必要だよ、一緒に行こう』
痛み、悲しみ、恐怖の中…。
差しのべられた手…。
俺はこの人に救われて、今がある。
返しても返しきれない恩がある。
強く、強くなるんだ!!
隊長のために、皆のために!
「ん…………」
ふと目が覚めると天井が目に入った。
ゆっくり起き上がるとすぐ横に伏せて寝ているシェスカがいた。
良く見ると目下の頬のところにテープが貼ってあった。
「……あの時だよなー…バカ…」
野分はハブに襲撃されたのを思い出し呟くと手を伸ばしシェスカの頬に貼られているテープに触れて優しく指で撫でた。
ーーー「カリス…あの時の野分どう思いますか?」
カリスとアロスは宿屋の外で静かに話していた。
"2人の息子か…親父にそっくりだな…"
「あれは…野分じゃないよなー…」
「初代海の王の魔力、特別な存在…預言されてたことに関係あるんでしょうか…」
2人とも、話しながら思いあたることはあった。
でも、そんな事が有り得るのか確信ではない。
「もう、本人に聞くしかねーよ…考えててもしょうがねーし」
「そうですね…」
2人は不安気に話し合い、1つの答えが出ると宿屋の中へ入り野分のいる部屋へ入って行った。
「あ!カリス、アロス」
「野分!シェスカ!体はどうですか?」
部屋へ入ると目を覚ましている野分とシェスカが目に入り様子を聞く。
「大丈夫、どこも痛くないよ…カリスとアロスもケガないか?」
そこにはいつもの様子の野分がいて、どこか安心するように笑うカリスとアロスだった。
「じゃあ今日はシェスカちゃんスペシャルで元気をつけよう!」
「余計おかしくなりますって!」
シェスカは目をキラキラさせながら言うがアロスがバッサリときる。
シェスカが膨れっ面になりアロスと言い合い、その様子を見てカリスが笑っていた。
「その…3人とも!………ごめんっ…」
野分は3人の顔や腕などにテープがある事に気がつき、謝る。
「何のごめん?」
「これが私達のお役目ですよ」
シェスカとアロスがきょとんとしながら言う。
カリスが野分の頭に軽くチョップをする。
「そこはごめんじゃないだろ…?」
カリスは真剣に言った後、ふと笑ってベットに腰掛けた。
「つ……ありがと!!」
野分は無邪気に笑いながら素直に3人にお礼を行った。
3人はその様子に安心したように笑っていた。
「野分…なんか辛いことないか…?」
シェスカとアロスが出ていくとカリスが野分に問い掛けた。
「ほら、なんか頭抱えて意識失ったり…いろいろあったから、なんか辛い事あったら話せよ?」
カリスは真っ直ぐ野分を見ると優しく笑った。
その様子に野分はゆっくり話し始める。
不思議な声が聞こえた事…。
初代と知らない女の子の声…。
野分はカリスに自分の中での出来事を全て話した。
カリスはその話しを真剣に聞いていた。
「そうだったんだな…」
話し終わると2人の間に沈黙が流れ、野分は下を俯いた。
「まあ、俺はアロスみたいに本もあんま読まないし、頭も良くねーから野分にとって良い答えは見つけられねーけど、話し聞くだけならいつでも出来るからなんでも話せよ?」
カリスは手を伸ばして野分の頭をぐしゃぐしゃと撫でる、顔を上げると優しく笑うカリスがいた。
……気持ちが楽になった気がする…
ありがとっ…カリス…。
その様子を見て野分も安心したように笑った。
その話しを外の扉の前で聞いていたシェスカとアロスも安心したように笑っていた。
「さて、出発しますよ!」
翌朝、4人は街を出て行き歩き出す。
シェスカと並んで前を歩く野分を、カリスとアロスは目を合わせた後、その背中を見つめていた。
初代海の王…オリカスラ=メデル。
あなたはそこにいるんですか…?
どうか、野分を一緒に守って下さい。
力を貸してください。