SEA - ADVENTURE ☆11☆
☆ 11 ☆
「海の王が見つかったって…」
真っ直ぐ、だけどどこか辛そうな表情で帰ってきたイットから話しを聞いた。
「そう、名前は神崎野分…茶色い髪に青い瞳…」
イットは隊長からもらった写真を皆に見せながら話すが、その説明も途中で止まってしまいじっと写真を見つめた。
「大丈夫だよ!イットには私達がついてる!!」
マミロはイットの肩をポンッと軽く叩くとにこっと笑った。
シンとリラも頷いていた。
「ん…ありがとな!」
3人の様子にイットも安心したように笑った。
"海の王…必ずっ…お前を倒す…"
「ねー…獣神ってなんなんだ?」
野分達はシェスカの獣神テストに洞窟に入っていた。
「獣神は他の召喚獣とは違って、神に近い存在と言われていて、それだけ力が強いってことです。今では同じ人種の獣神一族生き残りのシェスカにしか手におえないでしょう」
アロスがゆっくり話す。
「だから獣召喚士試験一発トップ合格…」
「当たり前だ…自分の事を試験で出題されてるようなもんだ…」
アロスとカリスの話しを聞き、シェスカが言っていた事を納得した。
「じゃあ、なんで獣神は洞窟にいるの?」
野分が更に質問する。
「獣神は何年も前から海の王とマガとの戦いに存在していました。その巨大な力は獣神一族しか手におえず、人々から恐れられ獣神一族とともに滅ぼされたと言われてましたが封印されていたんですね」
「マガの復活に恐れて滅ぼせなかったんじゃねーの?獣神一族は絶滅させてしまったから獣神だけでもって…守り神みたいにしたんじゃね?」
アロスとカリスの話しを聞いていると洞窟内に風が吹き奥からシェスカが帰ってきてにっと笑った。
「へへっ、合格!」
「お疲れ様です」
帰ってきたシェスカにアロスがにこっと笑い、4人揃うと洞窟を抜けるために歩き出した。
洞窟を抜けると野分は洞窟の入り口をじっと見つめ、再び歩き出した。
「なぁ…なんか都合良すぎじゃない?」
近くの街へ入り宿をとり休憩していると野分が考えていることを口にした。
野分の突然の言葉に3人は首を傾げていた。
「マガを倒して世界を救って、でも人から恐れられて封印されて、マガの復活が預言されたらまた世界を救うのに力をかせって…自分勝手だよな…」
野分はそう話すが、自分達も同じことをしている事にどうしようもなく、ぶすっとする。
「…そうだよね」
野分の言葉に3人は何も言えず、シェスカはぎゅっと杖を握っていた。
「ん、シェスカ?」
夜になり窓を開けて涼んでいると外でシェスカがどこかへ歩いて行くのが見え外に出て後を追った。
「こんな時間にどこに………」
野分は歩いて行くと急に風が吹き目を閉じた、その後、前を見るとシェスカと小さな獣がいた。
「ごめんね…でも一緒に頑張ろう」
シェスカはその獣をぎゅっと抱き締め話していた。
するとその獣はシェスカの顔を舐め、シェスカと笑っていた。
「シェスカ…ごめんな」
「野分…」
野分はゆっくりシェスカに近づきそう言うと獣の頭を撫でた。
「お前もごめんな…でも力を貸してほしいっ…」
野分が悲しそうに、真っ直ぐ見つめながら言うと獣は野分の手をペロッと舐めた。
「ははっ…人懐っこいやつだな!」
「風の獣神「フウガウ」だよ。こう見えて力は強いんだから!」
野分はフウガウを抱えながらシェスカと話していた。
「野分…ありがと!」
「ん?…おう!」
そろそろ帰ろうとフウガウを戻すと、シェスカが野分に言い、野分も嬉しそうに笑っていた。
……………ーーズシンッッ!!!
宿に帰ろうと歩き出した時、地響きに驚く。
「なっ何今の!」
「宿屋の方だ!行こう!!」
野分とシェスカは走って宿屋へ向かった。
「あっぶねー…」
「あなたはっ…急に何を…」
そこにはアロスとカリスがいて構えていた。
目の前にいるのはカズミだった。
「さぁ…海の王はどこだ…」
カズミは剣を2人に向けて話す。
「さあ?…はいここですって答えられないもんでね…」
カリスが剣を抜いて構えた。
アロスも構える。
「誰っ…敵…?」
「アロスとカリスが…」
野分とシェスカは少し離れた所からその様子を見ていた。
「ーーーーー見つけたぞ、海の王っ!!」
「つっ!?」
後ろから聞こえた声にゾクリとして振り向くと同時にシェスカはマミロに拘束され、野分はイットの杖から出る強い風に飛ばされた。
「つっ…野分っ!!」
「大人しくして…イットのためなの…」
野分はカズミ、カリスとアロスの前まで飛ばされ転がる。
「つっ…げほっ……」
「野分っ!!」
「おっと……動いたら刺さるぜ?」
カリスとアロスが動こうとすると目の前にカズミの剣が突き出される。
マミロはシェスカを拘束したまま歩き近くへ来る。
「カズミさん…手助けなんていらないですよ」
「いやー…可愛い後輩の手伝いしたくなったんだ」
イットが野分に近付き杖を構えながらカズミに話す。
「野分!!」
シェスカがもがくがマミロの拘束から抜けられない。
「海の王、神崎野分……」
イットが冷たく言い、野分を見下ろす。
その冷たい瞳にゾクリと体を震わせた。
冷たくて…氷のようで…それは悲しみで…痛みで…
『早く殺せ!!』
またあの時の声が聞こえた。
『1人逃げた!捕まえろ!』
頭が痛いっ……。
『野分っ…希望の…子』
意識がっ…持っていかれるっ……。
「つっ……」
「……イット!!」
何がおきたか一瞬で解らなかった…。
そこには野分がいて…
頭を抱えていた…
すっと立ち上がると雷がなって、雨が降り出した
気付いたらイットが倒れていて…
そこには背中にゴポゴポと水の龍が2匹…
野分が立っていた…
「つ…一旦退くぞ!」
カズミに連れられてイットとマミロも姿を消した。
「野分……?」
「……2人の息子か…2人ともそっくりだ…なっ…」
野分を呼ぶと野分はそのまま振り返り、カリスとアロスを見て笑った、その後ふらっと力無く倒れた。
「野分!」
アロスが倒れる野分を支えた。
「っ…取り合えず宿へ!」
野分を連れて宿の中へ入って行った。
"海の王…神崎野分"
あれ…俺この声どこかで…。
"私は初代海の王、オリカスラ=メデル"
初代…海の王……。
"良かった…巡り会えたのね"
…………誰…?