SEA - ADVENTURE ☆9☆
☆ 9 ☆
『シェスカお誕生日おめでとう!』
『シェスカは今日で何歳?』
『シェスカ5歳!お姉さんだよ!』
『あーもー!可愛いっ!!』
『もー親バカ!』
優しい声、あたたかい笑顔…。
大好きな場所と、大好きな皆…。
『つっ…シェスカっ!あなただけでもっ!!』
『やだっ!やだよ!!ママ!パパ!』
『ジョラルロ!そこにいるな?シェスカを連れて行け!』
『さよならっ…大好きだ…シェスカ』
『ありがとうっ…』
優しい声…あたたかい笑顔…。
全て一瞬にして真っ赤な炎に飲み込まれた。
「…帰ってきたよ…パパ…ママ………」
シェスカは街の高台にいてそこから街を見渡し、後ろにある大きな墓石を振り返った。
墓石をじっと真っ直ぐ見つめた後、暫くすると野分達のいる宿屋へ向かった。
下を俯き、顔が見えないように歩く。
宿屋につくとカウンターの所で声を掛ける。
「あ、シェスカ!どこ行ってたんだよ?」
声を掛けられびくっとする、ちょうど野分達が部屋から出てきてシェスカの姿が見え声を掛けた。
「……シェスカ…?…っ…姫……?」
宿屋の人が驚いたような顔で呟いた。
「姫だって!?」
宿屋の人達が名前を聞いて騒ぎ始める。
「確かに似ているがっ…まさかっ…」
「姫だ!面影があるっ…」
ザワザワと騒ぎ口々に話しはじめる。
「つっ………」
シェスカはビクビクと怯え、不安そうな顔で宿屋を飛び出して行った。
「シェスカ!!」
野分がシェスカを追いかけ宿屋を飛び出して行った。
『シェスカちゃん!お誕生日おめでとう!』
『パパー!ママー!』
『しっかりね…』
『頑張るんだよっ…』
どんどん悪夢が流れていく。
嬉しい!楽しい!
真っ赤な炎…苦しい…悲しい…。
あの日の出来事が物凄い速さで流れていく。
「つ…シェスカっ!!」
走るシェスカを野分が腕を掴み止める。
「シェスカ…ごめん俺っ…」
野分は話そうとするがシェスカは前を向いたまま
動かない。
なんて声を掛けて良いか解らないっ…。
「……シェスカ=ロンリ…このガツガルで育ち皆に愛された姫…ある事件がきっかけで多くの人が亡くなり、姫も姿を消した」
後ろからカリスの声が聞こえ野分は振り返りカリスの話しを聞く。
「その事件は闇に包まれたまま…シェスカ=ロンリ…本当の名前は「シェイルイン=ロンドリー」ロンドリーと言えば有名です。獣神をまつえる獣神一族…この事件もそれが原因なのかもしれません」
アロスが真っ直ぐ見つめながらゆっくり話す。
「…それ…知ってたんだ…」
シェスカは野分の手を離させると少し離れ3人を振り返った。
「そう…私は獣神一族生き残り、シェイルイン=ロンドリー…一族は人間でもあるけど、獣神に近い人種…獣神一族は、いつしかその巨大な力を恐れられ、絶滅させられた…」
シェスカは悲痛な表情で話し、ごめんっと言うと逃げるように、隠れるように走って行った。