9/22
<endless.twilight>
半分以上が砂に埋もれた鳥居を抜けると、風に、潮の匂いが混じっているのに気がついた。きっと海が近い。
線路はまだ続いている。この先に僕達の目的地があるのだろうか?
しばらく歩くと、彼方に海が広がるのが見えた。
線路もそちらに向かっている。
「行きましょう」彼女がそう言った。
僕は彼女の声を、言葉を、初めて耳にした。
水平線で揺らめく夕日はこの世界に光と影をもたらし続けている。
ふと、僕は感じた。何かを、確かに感じたのだ。そして、僕は振り返る。するとそこには、何もない砂地が広がるだけだった。
先ほどくぐり抜けた鳥居もない。そして、誰の足跡もない……。僕らの足跡もだ……。
そして、僕らが何者なのかを知った。
僕らには過去が存在しない。
過去が存在しないモノに未来は存在しない。
終わりなき黄昏の中で生まれ、そして僕らは……。