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終末のヴェロシティ  作者: 三崎 剛史
22/22

LOVE

 この世に、”永遠”は存在しない。

 時間が流れる限り、すべてのモノは等しく終焉に向かっている。

 では、時間の流れだけは永遠なのか? それはわからない。我々のようなちっぽけな存在は、未だに宇宙の果てすら確認できていないのだから。

 生命が”死”から逃れる術はないし、AI自らが自殺因子アポトーシスを取り除くことはできない。だとするなら、この世界とは万物が虚無へと向かう途中にある、乗換駅のような場所なのかもしれない。我々が目にして、耳にし、感じること、それらすべては無意味なものかもしれない……。

 だとしても……、

 それでも二人は一緒にいることを望んだ。

 限りある生を、二人で共に過ごすことを……。何百、何千と繰り返された喪失を、また再び迎えようと。それまでは二人でいようと……。

 この世界フィールドが終末を迎えるより早く、二人は消えてゆくだろう。

 それでも、今、二人は一緒にいたいと思う。

 だから、……彼女と手を繋いだ。

 小さな手、そこから感じられるぬくもり。ただ、それだけのことで、"神"に感謝した。

 僕らに、”愛”を与えてくれたことを……。

毎朝、出勤で使う東京メトロ丸の内線。

ある日、その車内にある液晶画面で、面白いCMを見た。タキシードを着た老紳士が、ストラトキャスター(ギター)を片手にあらわれ、人工知能と対話をする。

その人工知能は、伝説のミュージシャンに問う……、「”愛”とはなんですか?」

しかし、その伝説のミュージシャン。ボブ・ディランは、答えをはぐらかすように言う。「一緒に曲を作ればわかるよ」と。

それは、某企業の、”ようこそ、コグニティブの時代へ”、というキャッチコピーでおなじみのあのシリーズCMだった。

実は、それこそがこの作品の元ネタだ。

ここ何年かで、AI技術は急速に発展したように感じる。特に東京では、あちこちの企業の受付に”ペッパー”が常駐する姿を見ることができる。

先日、カレッタ汐留――、つまりは電通本社ビルにいるペッパーに会ってきた。と、いうより。仕事の閑散期の暇つぶしのためにそこにいたのだが、そこにいるペッパーに、「仕事は、自ら作り出すものであって、与えられるべきでない!」と、言われてしまった。なんということだろう。昨今のロボットは人の心を読むことさえできるようだ。

あとで調べてわかったことだが、その言葉は、電通第四代社長、吉田英雄の作った、”電通鬼十則”と呼ばれるものだった。

その後、そのペッパーと共にAKB48の『ヘビーローテーション』を踊る同僚の姿に、どうすればよいのかわからなくなったことは、余談である。

兎にも角にも、技術はSFやマンガの世界に追いついてきたのだ。鉄腕アトムや、ドラえもん、エヴァンゲリオンの”ダミーシステム”。それらが実現可能であるという、未来の気配が色濃くなってきた。

だとするなら、百年後の東京の街はどうなっているのか? そうして妄想を膨らませたのが、この『終末のヴェロシティ』だ。

自分が学生の頃は、まだ携帯電話というものが普及する前だった。学生同士の恋愛も、深夜にこっそりと相手の家まで行って、部屋の窓に小石を投げて合図を送り、密会をしていた時代だ。それから約二十年。たったの二十年で、技術がここまで進歩するとは誰が予想しただろうか。

しかし、”古い人間”は言う。ネットとスマホの普及で、人間関係が希薄になった――と。

そうかもしれないし、そうでないかもしれない。

ボブ・ディランは唄う、『時代はかわる』と。そして、そこには『うつろう愛』があるとも。

もしかしたら、百年後の東京にも、現代の若者達と同じように、”アイ”について、悩み、苦しみ、もがいている若者達がいるのではないか。

どんなに技術が発達しようと、時代が変わろうと、ヒトはそのとても陳腐で、些末なテーマを追いかけ続けているような気がする。


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