<cannon>
目覚めると、僕は砂浜に倒れていた。
荒廃した世界。
終わりの無い夕闇。波の音。風の音。
海の上に佇む小さな駅舎、ホームには、まだ彼女の小さな背中が揺れていた。
何度、僕らは同じ別れを繰り返すのだろう。
僕は知っている。
もう二度と彼女には会えないことを。
彼女は、忌々しい黒い煙を吐き出す蒸気機関車によって、どこかへ連れ去られてしまうし、僕はこの何もない海の中に溶けて消える運命なのだ。
運命? なんだろう、その言葉は……、
しかし、僕は知っているのだ。
もう少しで、背後で汽笛が聞こえるのだろう。
そして、僕は駆け出す。
それがわかった。
しかし……、
僕は後ろを振り返ろうとして、あるモノに気がついた。
こんなモノは知らない。
大きなモノだ。
いつからここにあるのだろう? 砂の上に堂々と鎮座する、ずっと潮風を浴びてきたにしては、錆一つない車体。
誇らしげにその勇士を掲げる、51ミリ主砲。
ああ、違う。そう、僕はこれを知っている。僕が最も大好きな、旧旧ドイツ軍の戦車。その名は――、
レオパルド1。
ああ、そうか。これがあれば……。
その時、彼方から汽笛が聞こえた。
やはり来た。
しかし、僕にはこれがある。このピカピカの戦車で、あの蒸気機関車を撃ち砕いてやろう。51ミリ主砲が、一瞬ですべてを粉々に吹っ飛ばしてくれる。
それをしたところで、また彼女と会える保障はない。もしかしたら、いつかもっと巨大な蒸気機関車がやってきて、戦車を踏み潰してしまうかもしれない。
でも、今は……、今だけは……。
何故、そうしなければならないのか。
それは単純だ、
そう、僕は彼女を……。
汽笛がすぐ近くまで迫っていた。




