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<do.humans.dream.of.AI>
僕は、海に向かい歩みはじめた。
わかっている。
僕が彼女の元へたどり着くことはできないと。
彼女はとうの昔に、列車に乗り、行ってしまった。
忌々しい黒い煙を吐き、威嚇するような汽笛を上げ現れた蒸気機関車。それが、僕からすべてを奪い去っていった。
彼女は僕のために存在したし、また僕は彼女のために存在した。
で、あるなら。きっと僕はもう存在しなくてもよいのだ。
もうこの世界には僕しかいない。もう、”僕”である必要はない。そう、君がいないのだから。
僕はどこから来たのだろう? そしてどこへ行くのだろう?
きっと、永遠の無に還るのだろう。
きっと、この世界も幻で、僕も幻で、彼女さえ幻だったのだろう。
もしかしたら、どこかの誰かが見ている夢なのかもしれない。
もし、そうだったら、どんなに素晴らしいことだろう。
きっと、その人は、朝目覚めると、こんな悲しい夢のことなんか、キレイさっぱり忘れてしまっていて。
目覚ましを止めると、慌てて晴れ渡る空の下、自転車をとばして、愛おしい人の元に駆けてゆくのではないか?
そうだったらどんなにいいだろう。
僕は、海に足を進めた。




