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<stand.by.me>
線路は二股にわかれていた。
一方は海の中へ、
そしてもう一方は砂に埋もれてその行方がわからない。
「ここが分岐点なの。私はあちらへ、あなたはそっちよ」彼女は言った。
繋いでいた手がスルリと綻びる。
「嫌だ!」僕は叫んだ。こんなことは初めてだった。
「あなたはそっち、私はこっちなの」
砂が零れ落ちるように、するりとその手が離れる。
彼女は水の上を歩いてゆく。
僕は水には近づくことができなかった。
海の上に駅舎が見えた。水面に浮かぶ小島のようなホームも見える。
彼女はそこへ向かっているようだ。
「嫌だ!」その言葉しか、僕は知りえないようだ。
オレンジ色の海の上、彼女の背中がゆらゆらと小さく小さくなってゆく。
僕は初めて、悲しみという感情を知った。




