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「ジェニーの肖像」   ロバート・ネイザン原作。    それは時を越えてまで成就されなければならない愛だった。  研究

作者: 舜風人


甘くセンティメンタルな、そしてファンタジスティックな小説。

というよりは、1947年に映画化されたからそのほうがより、有名だろう。


映画ではジョセフ・コットン、ジェニファー・ジョーンズが甘くドラマを奏でていく。




売れない画家エブン・アダムスは

今日も、絵を抱えて画商のもとを訪れる。


しかしその絵は、どう見ても、平凡な、霊感のかけらもない、風景画である。

これでは売れるはずもない。


しかしエブンになにかを感じ取った画商の老嬢は花の絵を13ドルで買い取ってくれた。

エブンには何かかが足りなかった、


そう、芸術家にとってもっとも大事なもの、霊感が欠けていたのだ。


そんなエブンの前にある日、不思議な少女が現れる。

「私はどこから来たのでしょう?」と歌う少女。


不思議な印象だけ残して少女はふいと消えてしまう。


エブンの幻覚だったのか?

しかしエブンはその少女のスケッチを思い出しながら描く。


そのスケッチには確かに何かかがひらめいていた。


画商に持っていくと、これはすばらしいといってすぐさま買い取ってくれた。

エブンのミュウズが現れたのだった。


まさにこの少女が現れてからというものエブンは憑かれたように

この少女の肖像画に情熱を燃やす。



しかしこの少女、ジェニーはエブンにしか見えないのだ。

ほかの人には誰にも見えない。


ジェニーは定められた愛を成就するためだけに、

死を乗り越えてよみがえりつかの間だけエブンの前にあらわれたのである。


そして肖像画の完成とともにジェニーは再び死の世界へ帰っていく。


ジェニーの肖像はやがてメトロポリタン美術館に飾られ、

多くの人を感動させることになる。


エブンアダムスは絵画史に名を残したのだった。

ジェニーというミューズの霊感のおかげで。


ところで、フェルメールに真珠の首飾りの少女という名画がある。

この少女も謎である。

一体どんな少女だったのか?


今となってはすべて憶測の域を出ない。

しかし肖像画のみは残っている

そして見るものを魅惑し続けているのである。


ジェニーの肖像もそうなのだ。


それからずっとのちにジェニーの肖像は美術館に飾られている。


美術館でジェニーの肖像に見入る三人の乙女がいる。


「きれいな人ね」

『実在の人なのかしら?」

『きっと実在の人よ。少なくとも、画家にとってはね」


ジェニーはエブンに肖像画を描いてもらいながらかってこんなことを言っていた。


「きっとこの肖像画は美術館に飾られてみんなが見に来るわ」


貧しい売れない画家のエブンは、ある日、偶然、ジェニーと名乗る少女とであう。

何か運命的なものを感じさせる出会いだった。


不思議な少女は、「私、すぐ大きくなるからそれまで待っててね。」

なんて変なことを言って消えていく。


しばらくのち、再び出会うがそのときはもう数年分成長しているのだ。

エブンは彼女の肖像画を描く、それは画商から初めて、高い評価をもらう。


また再び出会うとすっかり大人の女性に成長している。

エブンはジェニーの肖像画に取り付かれたように励む。


やがて、ジェニイーはその悲劇的な宿命のままに、

嵐の海で溺死してしまうことが、古い新聞に書いてあり、

エブンは岬に駆けつけるが、間に合わず、ジェニーは死んでしまう。


しかし、ジェニーの姿は、そもそも、エブンにしか見えないのだ。

それはエブンの妄想が生み出した幻影なのかもしれないともいえる。


確かに古い新聞に、ジェニーの手がかりが出てはいる。

しかし、35年も前のことである。


時間を越えた愛の成就のためにジェニーはやって来たのか?

其れともエブンの生み出した、アニマなのか?


確かに売れない画家のエブンはジェニーに出会ってから、

ミューズの霊感を得たように、すばらしい、肖像画を描く。


エブンの心の中の詩神とも言えるかもしれない。


余韻を残す不思議な小説、そして映画だった。


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