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〜ニュージーランドの地へ〜

「お前、生きてて楽しいか?」

 楽しい分けないだろ・・・。そう思った。両親による暴行、体は毎日悲鳴を上げる。その事でクラスメートからのいじめ。何が楽しい?いや、楽しいって何だ? 

「まあ楽しいよ・・・。」

 勇人は苦笑いをしながら答えた。

「俺だったら耐えられないけどな・・・。自殺するかもな。」

 自殺か・・・。考えてもみなかった。TVでよく自殺した中学生や高校生のニュースが流れるが、とても他人事のようだった。しかし今、一気にそれが身近になったような気がした。

「自殺・・・。」

「あぁ・・・。考えたことないのか?」

「・・・。」

 勇人はその場から立ち去った。今はまだ2時間目。このまま逃げ出してしまおうか。どこへ行こう・・・。考えているうちにたどり着いたのは保健室。なかに保健の先生はいた。

「あのお・・・。ちょっとお腹が・・・。」

 保健の先生は書いていた書類を置き、そして体温計を持ってこちらへ来た。

「じゃあ熱測って。」

 待つこと5分。体温計を先生に渡す。

「熱はないようだけど・・・。どうする?」

「具合が悪いんで帰ります・・・。」

「そっか・・・。じゃあ担任の先生には伝えておくわ。そのまま帰っていいわよ。」

 かばんを持ち家へ帰る。家までは10分。もう学校へ行く気はなかった。家にも帰らない。取りあえず公園で暇をつぶそう。そう考えた勇人は近所の公園に向かった。懐かしのブランコ。前は良く母さんと乗ったな。しかし母さんは死んだ。ガンで・・・。

「もう三年か・・・。」

 思わず口にして息を大きく吐いた。今の母は血はつながっていない。父との再婚の相手なのだ。酒癖が悪く、ストレスがたまると勇人を殴って解消する。父はどうしてるか・・・。父の前ではとても優しい母に変わるのだ。

「なにしてるんだ?」

 突然後ろから声をかけられた。耳慣れた声だ。父さんだ。

「何してるんだ?こんなところで?今日は学校休みか?」

「休みだよ・・・。振り替えなんだ・・・。」

 父さんは笑いながら歩みよってきた。

「父さんを馬鹿にしてるのか?いくらなんでも休みなのに制服は着ないだろ。いくら出張で半年いなかったからといって学校の休みの日くらい知ってるよ。」

 流石だ・・・。なんでも見抜かれてしまう・・・。

「なあ、勇人。」

 当然、目がまじめになった。なにかあるな、と思った。おこられるのか?

「お前、母さんと上手くいっていないだろ・・・。母さんは俺の前ではお前に優しくしているらしいがお前の顔を見ればわかる。母さんと話してるとき、笑わないだろ。」

 母さんと話すとき笑ったことは確かにないかもしれない・・・。むしろ、いつ殴られるのかと母さんの行動1つ1つにつねに意識を集中している。

「そんなことないよ・・・。」

 父さんを心配させてはいけない。とっさに思った。

「無理するな。おまえ今日友達に生きてて楽しいか?って聞かれたんだってな。実は今、学校へ言ってきたんだよ。先生に呼ばれてな・・・。」

「そっか・・・。それでなんて?」

「クラスの子達と上手くいっていないようで・・・。注意をしてきたつもりなんでが・・・。転校も考えては・・・?ってな。」

「転校。めんどくさい。どこにいってもいっしょさ。」

 父さんは息を大きく吸い込んで大きく吐いた。そして言った。

「お前、ニュージーランドは知ってるか?」

 ニュージーランド。オセアニアにある島国。地理で習った。

「父さん、半年ニュージーランドに出張してたんだ。そこでな、世話になった日本人の方がいてな。名前は阿部由馬さん。もう六十近い男性だ。そのお宅でホームステイしてみないか?」

 ホームステイ。母さんにあうより絶対いい。

「いつから?」

「早ければ、今週の日曜のチケットを取ってある。」

 今日は金曜日。明後日・・・。

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