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二人で眠る夜

「さて、寝るか」

「そうですね、明日は商業都市にきちんと着かないといけませんし」


「ああ。といっても、ここまでで、だいぶと近くまでは進んできているから、朝出発すれば、昼ごろにはたどり着けるだろうけど」

「何もなければ、きちんと着けますけど、なんかあったらというのを考えると、そうとも言い切れませんよ」


 そう、何かあったら。


 それは冒険をするという上で、よく考えなければいけないことだ。


 道中には、そこまで強い魔物はいないはずだし、足場が滑りやすかったり、地盤が緩いような地域はなかったはずだ。


 今のところ、そこまで危険な要素はないはずだ。


 そのような危険となるような要素について考え出すと、きりがない。

 だが、そうする必要もあるのが旅だ。


 俺の元いた世界なら、旅、すなわち旅行は軽いモノに考えられている。


 それは言うなら、あちらの旅が観光であることによる。


 何かを探すため、誰かに何かを伝えるため、そんなことのために歩いたりして遠方まで旅をすることはない。


 あるとしても、ごく少数だ。


 この世界で進んでいくと決めたときから、旅をするうえで安全に配慮することは頭に置いている。


 さらに、今は俺だけではない。


 隣には、俺の仲間であるエイダがいる。

 より一層、その意識を高めておく必要があった。


 だが、それは念頭に置いておく必要があるだけのことであって、考えすぎて、深刻な顔しながら歩けという意味でもないのは分かっている。


 何より、そんな顔しながら歩いていたら、彼女に心配されてしまう。


「何、深刻そうな顔をしているんですか?」


 だが、そんな物思いに耽っていたことが察されたらしい。


「これからの旅について色々考えなければなぁって」

「大丈夫ですよ。蒼真は強いんですから」


 そう言って、彼女は笑う。

 俺の思っていること、それとは違う意味での解釈をしたらしい。


 だが、それは正直都合がよくもあった。


 エイダは場を読んで、自分に必要なことをやろうとする人だ。


 自分が他人の迷惑になるのなら、自分が身を引くということすらするようなタイプの人間だ。


 それは相手に譲るという優しさを持つと同時に、あまり自己主張をしないという意味合いも持つ。


 そんな彼女には、俺がこういう意識を持っているということはあまり伝えるべきではない、そう思う。


「まぁ、な。だけど、これから先進みゆく道で、俺の優位性が保たれるとも限らない」

「蒼真は一人ではないですよ、私もいます。それに、これから行く商業都市で行うことは、そんな仲間を集めるためなんでしょう?」


 そう、これから行く商業都市。

 そこで資金を稼いで、ギルドを作る。


 それが一番最初の目的だ。


 ギルドを作って、それを大規模なモノへと拡大するか、大きな功績を上げるか、どちらかをすれば、徐々に知名度が上がるだろう。


 もし、他のβテストプレイヤーがいるなら、合流できるかもしれないし、いなかったとしても、ギルドメンバーによる強固なパーティーを組むことが出来るようになる。


 多少は時間がかかるかもしれないが。


「そうだな。よろしく頼むよ、エイダ」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 そう言って、二人は寝転がる。


 残念ながら、布団などといった寝るための物を、俺は現在持ち合わせていない。


 商業都市に着いたら、それを買って、俺の所持品として魔法のポーチに入れておかないとな。


 俺だけならまだしも、彼女の綺麗な髪や肌が汚れてしまうのはどうかと思う。


 そんなことを考えていた時だ。

 ふいに服の裾をつかまれた。


「どうしたんだ?」

「その…、恥ずかしい話、誰かが近くにいるって感じたいんです。夜だと何も見えませんし…」

「なら、好きなだけ掴んどいてくれ」


 そう言って、俺は口を押えて静かに笑った。


 最初に彼女に服の裾をつかまれた時のことを思い出して。


 そして、自分自身の気恥ずかしさを紛らわせるために。


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