第53話:問題はそこじゃないよね
よろしくお願いします!
俺と楓ちゃんはとりあえず近くのショッピングモールに行ってみようということになった。
近くのショッピングモールまでは電車に乗り、そこから徒歩5分。
俺たちは現在、電車に乗っているところだ。
「お兄ちゃんとデート♪お兄ちゃんとデート♪」
足を上下にバタつかせ、楽しそうな楓ちゃん。そんな様子を隣で見ていて、俺を服を買いに行くのがなんだか楽しみになってきていた。
「ごめんね、こんなことに付き合わせて」
「お気になさらずですぅ。むしろ大歓迎ですぅ」
楓ちゃん、なんていい子なんだ。
「そういえば、お兄ちゃん?」
「ん?どうしたの?」
「その人とはどういう関係何ですか?」
とても良い笑顔だなぁ。癒される。
「ただの幼馴染だよ」
「へぇー、幼馴染ですか」
楓ちゃんは笑顔のまま、続けた。
「可愛いですか?」
「まぁ、可愛い方だと思うけど」
「そうなんですかぁ♪」
明るい口調で言う楓ちゃん。でも、何故だろうとてもいい笑顔のはずなのに、目が笑ってない気がするのは。いや、きっと気のせいだろう。
「じゃあ、、、私とどっちが可愛いですぅ?」
少し照れているのか両手で顔を隠す楓ちゃん。
もぅ、本当可愛いなぁ。ぐへへ、ぐへへ。俺は、こんな楓ちゃんをもっと見ていたくて少し悩むふりをした。
「うーん、、、どっちだろうなぁ。どっちも可愛いしなぁ。迷うなぁ、、、」
、、、それが間違いなのはすぐにわかった。
それは一瞬だった。俺の目の前に鬼神が現れた。
「何迷ってんだくそが」
「、、、へぇ?」
すごい握力で胸倉を掴まれ、目の前では鬼神が異形の形相で俺を睨んでいる。
たぶん、気のせいだろうがその鬼神は楓ちゃんに似ていた。
「楓ちゃんが一番可愛いって言えよっ」
「はい?」
「聞こえなかったのか、このヘタレ野郎。楓さんが世界で一番可愛いって言えって言ってんの。わかった?」
さっき言ってたことより誇張されてない!?いや、問題はそこじゃないよね。何このカオスな状況。楓ちゃんにどことなく似た鬼神が楓ちゃん可愛いって言えって言ってんだけど。
「早く言えやこらぁっ!」
「はいぃ!楓ちゃん可愛いです!」
「ちげぇだろ!楓さんだろうが!あと、世界一が抜けてんだよ!」
「すいません!楓さんは世界一可愛いです!」
威圧感に気圧され、言われた通りに答える。すると、鬼神は姿を消し、目の前には照れた様子で顔に手を当て、もじもじしている楓ちゃんがいた。
「わーい♪嬉しいですぅ。楓、お兄ちゃんにそんなこと言ってもらえてとっても恥ずかしいですぅ///」
「あれ?さっきここに、、、」
「どうしたんですか?お兄ちゃん?」
心配そうに俺に顔を寄せてくる楓ちゃん。
そんな楓ちゃんを見て俺は先程のことがどうでもよくなった。
「いやぁ、やっぱなんでもないよぉ。ごめんね、心配させて」
楓ちゃんの頭をなでなですると、嬉しそうにまた笑顔を見せてくれた。
ありえない。こんな可愛い子が鬼神なんて。さっきのは幻覚か何かだろう。疲れてるんだな、俺。
そんなことはないと、俺は自分の心に言い聞かせ、楓ちゃんで癒されていると、あら不思議。最寄り駅に着く頃には、先程のことはすっかり綺麗さっぱり忘れていたとさ。
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