第48話:悪夢って忘れないものだよね
よろしくお願いします!
その後、恵にゆらり揺らされていた俺だったが、なんとか恵をあやめて、今度会わせてやることを条件にやっとのことで解放された。
俺は自室へと戻り、ベットに仰向けで倒れこんだ。
「はぁ~、疲れた」
ベットに横になると、すぐに眠気がやって来た。
今日は、色々ありすぎた。
最近まで引きこもりだったやつにはちょいとハードな1日だったってもんだ。
友達は家に来るわ、律の家に行くわ、帰ったら帰ったで恵に縛られるわで…って、あれ?そういや…誰か忘れ…て…
「…zzz」
考えの途中で、俺は眠りに落ちていった。
・・・・・・・・・・・・・・・
「あに、き…」
……………ん?
「あ・に・き」
誰がが俺を呼んでいる。
俺はそっと目を開いた…そこには、
「あ、やっと目、覚めたぁ」
加奈子が添い寝していた。
「か、加奈子!?」
「もう、びっくりしたよー」
「それはこっちのセリフだ!何で俺の布団の中に入ってきてんだ!」
「…?なにいってんの?」
加奈子は本当に不思議そうに、俺の方を見ていた。
俺はその態度に少し違和感を感じた。
どういうことだろう。俺は、状況把握のため、周りをぐるっと見渡した。
俺はそこで気がつく。この部屋って、
「ここ、私の部屋だよ?」
なんてこった、部屋間違えた。 でへっ☆
って、おいぃぃぃぃぃぃぃぃい!
俺は確かに自室で寝たはず、、、ほんとどゆこと!?
「なに慌ててるの兄貴?いつものしに来てくれたんでしょ?」
いつものとは?
全くもって意味がわからん。
とりあえずここは、出ていくに限る。
俺は体を起こそうとした。しかし、いくら動こうとしてもまるで金縛りにあっているかのように全く動かなかった。
「ほら…んっ」
加奈子は俺になにかを求めるように、そっと目を閉じた。
「何やってんだお前?」
「もう、焦らさないでよ」
加奈子はもう一度目を開けて俺の方を見ると、頬を赤らめて、
「おはようの、キス、して」
と言って、俺の首に腕を絡めてきた。
…………えーっと。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「いつもしてるでしょ。ちゅぅー」
なにがなんだか大介さんっと。
そんな、状況を全くつかめていない俺をよそに、加奈子は少しずつ顔を近づけてくる。
「ちゅーーーー…」
ヤバい、ヤバい、これなんてギャルゲー!?
「ちゅーーーー…」
なおも、顔を近づけてくる加奈子。
「ちゅーーーー…」
そして、ついに加奈子の顔は俺の顔数センチまで近づいてきた。
なんとか、逃れられないかと体を動かそうとするが、動く気配はない。
万事休す!俺は思いっきり目を閉じた。
すると、急に体が動くようになり、そのまま…
…ドスンッ。
突然の衝撃に目を開けると、見えたのは俺の部屋の天井だった。
どうやら…さっきのは夢だったみたいだ。
「…夢か」
時計を見ると、朝の7時。
起きるにはまだ早い時間だったけど、あんな夢を見たせいか、目が冴えてしまった。
それにしても…最悪な目覚めだ。
夢ってすぐ忘れるもんじゃないの?
未だに鮮明に覚えてるんだが…
俺は気分が悪いまま、起き上がり、一度リビングへと向かうことにした。
リビングに向かう途中、加奈子に会わないか不安だったが、やはりまだ時間が早いのか加奈子と会うことはなかった。
リビングに入ると、お袋が朝ごはんを作っている最中だった。
それ以外の人影はなし。
俺は喉が乾いていたので、一旦、冷蔵庫に向かった。
冷蔵庫を開け、中から麦茶を取りだそうとしたところで横から、
「キャアアアア!」
ムンクの叫びっぽいのが聞こえてきた。
見ると、お袋が俺を見て何故か青ざめていた。
「大介…の幽霊?」
何てやつだ、いちおあんたの子供だぞ。
まさかそんなこと言う親がいるとは…
「えっ、大介?」
当たり前だろ。
なんだ、その信じられんみたいな顔は。
ちょっと早く起きただけでこの扱いだよ全く…嘆かわしいねぇ。
「ど、どうしたのあんた…あんたの飯はないわよ?」
分かってたけどさ!べ、別にちょっと仲間はずれみたいで寂しいとか全然思ってないんだからね!
「別に、喉乾いただけだよ」
「そう、ならちょうどいいわ。じゃあ、加奈子起こしてきてくれる?」
「なんで?」
「あの子、もうすぐ出ないといけないのよ。だから早く起こしてきて」
ちくしょ!使うだけ使いやがって!俺をなんだと思ってるんだ!まぁ、ニートだから逆らえませんけどね!…とほほ。
しかもよりにもよって加奈子とは…とほほほほ。
俺はしぶしぶ階段を上る。
そして、加奈子の部屋の前…今となって思えば、これ、夢と同じ状況なんじゃ…
えぇーい!どうにでもなれ!
俺は意を決して、部屋のドアを開けた。
「お、おい加奈子!お、おき…ろ?」
ドアを開けてまず目に飛び込んだのは、部屋の真ん中で突っ立っている加奈子の姿だった。
加奈子は俺に気づき振り向いた。
「あ、兄貴…」
「なんだ、起きてたのか。早く降りてこいってお袋が…」
俺が言い切る前に、突如"それ"は起こった。
加奈子が…加奈子が、俺の腰に手を回して、抱きついてきたのだ。
女の子っぽいいい匂いに、柔らかな何かの感触…あまりにも急すぎて、くらくらしてしまう。
俺はそんななかなんとか声を絞り出した。
「か、加奈子…どうしたんだ?」
「…………兄貴、」
加奈子は何か思い詰めたような表情をしていた。
よく見ると目には涙が溜まっている。
「私、兄貴と離れ離れになっちゃう…」
その一言で、一瞬時が止まったような感じがした。
そして、加奈子の次の言葉に、俺は…
「兄貴…私、遠くに行くことになっちゃった 」
…頭が真っ白になった。
お読み頂き感謝です♪
またまた遅くなってしまい申し訳ありませんでした(>_<)




