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第45話:あ、あんまり見ないで…ね

よろしくお願いします!

 それから30分経ち、やっと着替えが終わったらしく、律が玄関から出てきた。


「お、お待たせ~」

「ほんといつまで待たせる気…」


 俺は律の私服姿を見て、驚いた。

 だって俺の好みドストライクのファッションだったからだ。

 肩をだした白のニットワンピに黒のニーハイソックスで見えている太ももや鎖骨が妙にエロさを引き立てて、すごく色っぽい。

 しかも、恥ずかしいのか律はワンピを引っ張って太ももを隠そうとする仕草とどんどん赤くなっていく顔がダブルパンチで俺の理性を刺激するので俺は目のやり場に困っていた。


「あ、あんまり見ないで…ね」

「じゃ、じゃあ何で着替えたんだよ」


 今まで律を見てこんなにドキドキすることはなかったのに…成長って恐ろしい。


「真っ昼間からお熱いね~お熱いよお二人さん」

「なっ!」


 そう言ったのは舞姉で、いつの間にか律の後ろでひょこっと顔を覗かせていた。


「まだいたのお姉ちゃん!?」

「…それはさすがにひどくね。まぁ、さっき来たんだけど。そんなことより、大ちゃんそんなとこずっといて寒くないの?」

「えっ?あっ…」


 律が来るまでは寒くて帰ろうかと考えていたくらいなのに、今は寒さを感じていなかった。

 むしろ、火照って暖かいくらいだった。


「家上がんなよ。そんなとこいるよりさ」

「えっ、でも…」


 俺はチラッと律の方を見た。

 律は俯いて、そわそわしていた。

 やっぱ嫌なんだろうなと俺は思った。


「いや、別にすぐ終わるんでここでもいいっすけど」


 そう言ってもう一度律の方をチラ見する。

 すると、ホッとしたのか、律はガクッと肩をおとした。

 どことなく表情が残念そうに見えたのは俺の気のせいだろう。


「何いってんの?あんたに拒否権何てあるわけないでしょ」

「はっ?」

「いいから入んなさい。久しぶりなんだしお姉ちゃんいっぱいお話ししたいなぁ」

「ちょ、えっ!?」


 そういえば舞姉はこんな人だった。

 舞姉は俺の袖を引っ張って無理矢理家のなかに連れ込んだ。


「いやー、大ちゃんがうちに来るのはいつ以来だろぉ?中学生になってから滅多に来なかったもんね。大ちゃん来なくて舞、寂しかったんだぞ」

「舞なんて言うキャラじゃねぇだろ」

「あぁ?何か言ったか」

「何でもねっす」


 俺は舞姉にされるがまま連れていかれるのだった。


「…やった」


 後ろで律が何か言ったみたいだったが、舞姉の声に遮られて俺にはうまく聞き取れなかった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・


 俺が連れ込まれたのはまさかの律の部屋だった。


「……………」

「……………」


 無言の沈黙が続く。

 だいたい舞姉が話したいって言ってたくせに…


『あたし、リビングでテレビ観たいから一人で』


 そう言ってリビングにこもってしまった。

 去り際に『二人で楽しめよー』なんて余計なことまで口にして。

 それから行くところがなく、律から『部屋来る?』と言われたのでそれしかないのでそうすることにしたが、


「……………」

「……………」


 気まずいっすこれは!

 前を向くと律の真っ赤になった顔、下を向くと律の太ももが見えてさらに気まずい。

 その気まずい雰囲気を打破してくれたのは律だった。


「大介くん…えっと、今日はどうしてうちに?」

「あ、あぁそれな。お前今日お袋と会ったんだって?」

「うん。ちょうど大介くん家の前で…」

「えっ?俺ん家?」

「じゃなくて、い、家に帰ろうとしたとき偶然ね!」

「へぇー」


 何をわたわたしている。

 何か俺変なこときいたか?


「も、もしかしてだけど…チーズケーキのこと?」

「そうそう。お袋から貰ったんだ律からってほんとありがとな」

「ぜ、全然気にしないで!趣味で作っただけだし。ちょうど余ったからだから!」

「それでも俺は律の作ってくれたチーズケーキめちゃくちゃ好きだから久しぶりに食べれて良かったぜ」

「いやいやいやいや!そんな、そんなこと…ってもう食べてくれたの?」

「そりゃ貰ってすぐ食べた」

「そっか…へへ、嬉しいなぁ」


 そう言ってほんとに嬉しそうに笑う律を見て、俺はこんな時間がもっと続いてほしいって思った。

 もっと律と一緒にいたい。俺は素直にそう思った。


「それで、味はどうだった?」

「もちろん!めちゃくちゃ美味かった」

「ほんと!良かったぁ。でも、今回のは結構自信作だったんだ」

「だからか。今まで食べたやつで一番美味かったのは」

「でしょでしょ!ね、ねぇ…今度また作ってもいいかな?」

「むしろこっちからお願いしたいくらいだよ」

「うん。ありがと」


 俺はこの時間が楽しくてしょうがなかった。

 楽しくて楽しくて、いつの間にか俺はここに来るまでずっと考えていた妹のことをすっかり忘れてしまっていた。


「あっ、そう言えばずっと外いて寒かったよね。ホットココア入れてくるからちょっと待ってて」

「いや、悪いよ」

「いいからいいから」


 そう言って律は立ち上がり、ドアへと向かおうとした。


「きゃっ!」


 その時、律は何かに足をとられて、転びそうになった。

 俺はすぐに反応して、


「危ねぇ!」


 律を庇おうと、律に抱きついた。

 なんとか、間に合ったが、その拍子に俺が律を押し倒したかのような体勢になってしまった。


「ご、ごめん。大丈夫?」

「うん。私は平気…」


 そして、俺は律の上から退き、律はゆっくりと立ち上がった。


「あ、ありがとう」

「お、おぅ」

「じゃ、じゃあ私ココア入れてくるね」


 そう言うと、律は少し早足で部屋から出ていった。

 律が出ていって、俺はことの重大さに気付き、みるみるうちに顔が赤くなっていった。

 心臓の鼓動もいつもより二倍は早く動いていて、どちらもしばらく収まることがなかった…







お読み頂き感謝です♪

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