第43話:ほんとにどうしちゃんたんだろうね
よろしくお願いします!
秋も過ぎ去り季節は冬…俺のもっとも嫌いな季節がやって来た。
その理由として、俺の部屋にはエアコンなるものがついていないしこたつもない。
したがって、どんなに窓を締め切っても、すきま風が容赦なく襲ってくる。
なす術のない俺は、布団をかぶり電気ストーブひとつで凍死を防いでいた。
しかし、そんな寒さを忘れさせてくれるアイテムがひとつだけある。
それが俺の愛用する妹もののギャルゲーだ。
これをプレイしているときだけは興奮して体はいつでもどこでもどこまでも火照ったまま維持できると言うわけだ。
と言うことで俺は今その妹もののギャルゲーをプレイしている最中なのだか…
「おにぃさいてー。もう知らない!」
「うーん…おっかしいなぁ。またバッドエンドだ」
俺はさっきからバッドエンドを連発していた。
「また選択肢逆だったのかよちくしょー!」
このギャルゲーの選択肢は3つあるのだが、俺はことごとく3分の一の確率をはずしていた。
決して難しいと言うわけではないのだが、心なしか今日はなんだか集中できなかった。
いや、今日だけじゃない。ここ最近はずっとこんな調子だった。
「てか寒いなぁ。いつもならゲームやってると体温は暖かいはずなんだが」
ゲームに集中できていないということは当然のめり込めていないということなので、暖かくなるどころか寒くなっていた。
ほんとに最近の俺はどうかしている。
正直な話、今は全くあやとみやびのことを見ても興奮しない。
むしろ違うことを考えてしまっていた。
それは、俺のリアル妹のことだ。
今日、あいつらは終業式で学校に行っている。
多分昼頃には帰ってくるだろう。
(今は、11時…あと二時間くらいか)
「はぁー」
さっきから俺は、ちらっと時計を見ては溜め息を吐く動作を繰り返していた。
別に寂しいから早く帰って来てほしいって訳じゃない…たぶん。
あぁー!ほんとにおかしいぞ今日の俺は特に!どうやってもあいつらのこと考えてしまう。これはあれだ。たぶん妹しか考えられなくなる病にかかったんだ。それか妹しか考えられなくなる薬を一服盛られたか。そうだそうに違いない…ってそんなもんあるわけない…か。
気付くと俺はパソコンの電源を落とし、部屋のドアの方を向いてボーッとしていた。
その時、
ピンポーン。
とインターホンが鳴った。
家には誰もいなかったので、俺は部屋着のままだったがそのまま玄関に向かった。
ピンポンピンポンピンポーン。
「はいはい今いきますよ!」
(誰だこんなイタズラじみたことやるやつは。ピンポンダッシュとかだったら許さんぞ)
俺は少し早足で玄関に向かった。そして玄関に着き、ドアを開けた。
そこにいたのは、
「よっ!遊びに来たぜ」
俺の元クラスメイトの男子三人だった。
「さっきのピンポンお前ら?」
「どうだった?めちゃくちゃ連打早かったろ」
バタン…ガチャリ。
「てんめぇ!ドア閉めんじゃねぇよ!」
「うるせぇ!お前らが悪いんだろうが!」
「ちょっとした遊び心だろ!そんくらいお前の寛大な心で許せよ!」
「あいにく、そんな心はもってましぇーん」
「むかつくなその言い方!」
「それはこっちの台詞だ」
「いいから開けてくれ!めっちゃ外さみぃんだよ!」
「おぉー、そりゃよかったな」
「頼むよ!すいませんでしたもうやりません!だから開けてくださいお願いします!」
「ったく、しょうがなぇなぁ」
俺は渋々ドアを開けた。
「お邪魔しまーす」
来た三人の名前はそれぞれ陸、空、海。
三人とも体育会系なので、体はそれなりに引き締まっており、陸以外は俺より背が高い。
ちなみに陸は陸上。空はバレーボール。海は水球をやっている。
「どうした?今日学校じゃないのかよ?」
「あぁ、学校は昨日で終わりだよ」
「そんなことより早く部屋行こうぜ」
「寒くて敵わんわ」
皆がそう言うのでとりあえず俺の部屋にあがったが、
「うわっ!寒っ!」
「よくこんな部屋にいれんなお前」
「俺だってその電気ストーブから離れると死ぬわ」
「とりあえずストーブストーブ」
「あ、俺も俺も」
そんなこんなで俺たちはひとかたまりになって電気ストーブの周りを囲んだ。
「あったけぇー」
「生き返るぅ」
「おい」
「ん?」
「何で家主の俺がストーブの裏側なんだよ」
「もう、ちっちゃいことは気にしなーい」
「ちっちゃくねぇーよ!」
何度いっても離れる気配はなかったので仕方なく俺は布団を被った。
「さてと…そいじゃやりますか」
「うむ」
「さいですな」
三人は見合って頷くと、急に俺のベッドの下やら机やらタンスやらをガサ入れしだした。
「おい!何やってんだ!」
「何って…エロ本探してんだけど?」
「何その普通じゃねって顔は。いいからやめろ!」
「あぁー!」
すると、一人が何かを見つけたのけ叫んだ。
「どうした!?」
「こ、こ、ここここここれは!?」
残りの二人が目にしたのは…
「これは…エロゲーやないかーーーい!!」
今さっきまでやっていたギャルゲーだった。
「エロゲーだとぉぉぉ!!」
「エロ本じゃ飽きたらずエロゲーにまで手を出すとは…とんだ変態だな」
「おいよく見ろ。それはエロゲーじゃないギャルゲーだ」
「しかもこれ妹ものだぞ!」
「おまっ!そういう趣味が!?」
「いいから話し聞けやこらぁ!」
それからこれが健全なギャルゲーであると分かってもらうのにものの数分がかかってしまった。
「あ、これギャルゲーだったんだ」
「や、やっとわかってくれたか」
「そんでこれおもしろいの」
「当たり前だ。めちゃくちゃブヒれる」
「そんなら貸してくれよ」
「あぁ、いいぜ」
「おぅ、さんきゅうな」
それから俺らは少しだけ雑談をして、
「そんじゃそろそろ帰るわ」
「えっ?もうか??」
「だってそろそろ愛しのいもうとちゃんたちが帰ってくるからな」
「邪魔しちゃ悪いだろ」
「何が愛しのだ。んなわけねぇだろ」
「冗談だよ冗談。そんじゃな」
「あぁ、またな」
そうして三人は帰っていった。
「さてと…これからどうすっかな…とりあえずゲームするか…あっ」
俺は今になってやっと気づいた。
「ゲーム貸しちまったぁぁぁぁ!!まだクリアしてねぇのに!」
俺は追いかけるため部屋を飛び出した。
しかし、そこで足が止まってしまった。
俺はこう思ってしまったんだ…
(今から追いかけても間に合わねぇか。てか今さらだしな。そんで寒いし )
今までの俺ならあり得ないことを俺は思ってしまった。
ほんとにどうしたんだ俺は。今までこんなことなかったのに…
俺には原因はわかってなかった。
しかし、それに気づくのはそう遠くない未来だと、このときはまだ知るよしもなかったのだった…
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