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第30話:俺ってこんなに引き運なかったんだね...

よろしくお願いします!

 外は雲ひとつない晴天だった。

 一時間ぐらい歩き、街中に着いたのだが、やはり休日と言うことだけあって、人がたくさんいた。


「...やっぱ帰らね?」


 俺は久々に人の多い場所に来たので人酔いしそうになっていた。

 それなのに妹たちは、


「何言ってんの?置いてくよ兄貴」

「お兄ちゃんはやくー、こっちこっち」


(お前ら、どんだけ元気なんだ...)


 妹たちは、勇ましく人混みを掻き分けて歩いていく。

 俺はそれについてくのもやっとだった。


「お、おーい、お前らちょっと速くね?」


 しかし、その声は人混みに下記消されてしまいあいつらには届かなかった。

 そうして俺は、とうとうあいつらを見失ってしまった。


「マジかよ...」


 俺は辺りを見渡してみた。

 すると、前方にそれらしき人影が二つ見えたので俺はそれに向かって歩いていき、片方の手首を掴んで、こっちを向かせた。


「ちょっと待てって、もうちょっとゆっくり...」


(...あれ?)


 しかし、俺が呼び止めた人は全くの別人だった。


「えっ?あんた何?」

「ナンパ??」


 不審な目で俺を上から見下ろす二人に俺は少し恐怖を抱いていた。


「ちょっと離してよ!」

「す、すすすいませんでした」

「何あんた?マジキモっ」

「行こっ」


 二人がどっかに行っても俺はそこに立ちすくんだままだった。

 俺が立ち止まっている横を通りすぎる通行人。


(おい、何でみんなこっちみてんだよ。やめてくれ、そんな目で俺を見るな。俺を...俺をおいてかないでくれよ)


 俺はあの頃のトラウマが再発しそうになっていた。

 そんなとき、誰かが俺の手を掴んできた。


「兄貴、ごめんね。もう少しゆっくりいくから」

「ちょっと浮かれすぎちゃってました。お兄ちゃんごめんなさい」


 それは加奈子と恵だった。

 加奈子と恵は俺の手を握って今度は俺のペースに合わせながら歩き出した。

 俺はホッとした反面、自分を情けなく感じていた。


(ほんとは俺が引っ張ってやらなきゃ行けねぇのに...兄貴なのに情けねぇな)


 俺はこのときはなにも言えず、下を向いて二人についていくような形で歩いていった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ねぇ、兄貴はどこいきたい?」

「別にどこでもいいよ」

「じゃあ...」


 そう言って加奈子が指差したのは、


「あそこ行こっ」


 映画館だった。


「あ、私も行きたいと思ってたんだ」

「それならちょうどいいじゃん。決まりー♪」


 そして俺たちは映画館に向かった。

 映画館もやはり人が多かった。

 でも今はそんなに気にならない。

 誰かがそばにいるのを肌で感じていたからかな。


「あのさー、私見たいやつあるんだけど」

「かなちゃんも?実は私もあるんだ」

「うそぉ、メグもなんだ。一緒じゃん」

「じゃあ、せぇーので一緒に指差そ」

「いいよん」

「「せぇーの!」」


 そして二人が指差したのは、


「えっ!?これじゃないの?」

「かなちゃんこそ...」


 全く別々の映画だった。

 ジャンルすらバラバラで、しかも二人とも特殊だった。

 俺はまず恵に聞いてみた。


「...なにその映画?」

「お兄ちゃん知らないの?これは最近話題のゾンビ映画『ハウス・オブ・ザ・デッド』だよ」

「知らねぇよ。てかハウスって何だよ」

「これの舞台が3LDKの一戸建てだからハウス・オブ・ザ・デッドです」


(規模ちっさ!いや、住むには中々広いげどよ。そんな映画10分も持たねぇだろ!たぶん話題って別の意味だな)


 しかし、これよりも、加奈子のチョイスした映画は特殊なものだった。


「加奈子...お前のはなんだ?」

「何って、今話題の清純ラブコメ『愛さえあれば...』だけど?」

「ああ、そうだな。確かにタイトルにはなんの問題もねぇよ。でもな...何でこの貼り紙には男同士が抱きつきあってんだ?」

「そんなの決まってんじゃん!」


 加奈子は自信満々に言う。


「これは今話題のガチホモ映画なんだから!」

「だめえぇぇぇぇえええぇぇぇぇええ!」

「ど、どうしたの兄貴!?」

「そんなの見れるわけねぇだろ!絶対だめ!」

「なんでぇ!?別にR18じゃないじゃん!」

「そんなの関係ねぇよ!何?お前こんなの好きなわけ?」

「友達に勧められて見たら...はまっちゃったw」


(やってくれたな友達...俺の妹を腐女子にしやがって!)


「あ、でも大丈夫だよ」

「...何が?」

「別に兄貴と誰かをカップリングして妄想何てしてないから」

「当たり前だろ!そんなことしてたら俺はお前を軽蔑する!」


(って、すでにしてるけどね)


「でも、私と兄貴のカップリングでは毎日妄想してるけどね///」

「............」


(なーんもいえねぇー)


 俺は何も言わなかった...その代わりにとびっきりの軽蔑の眼差しを加奈子に向けてやった。

 しかし、加奈子はというと、


「やーん、そんな見つめちゃ。照れる~///」


 全くの逆効果だった。


「それでどっちにするのお兄ちゃん?」

「兄貴が決めてよ」

「んなこと言われても...」


(どっちもみたくねぇー)


 詰め寄ってくる二人。


「さぁ、どっち?」

「どっちにするの?」


 後ずさる俺。

 すると、後ろの壁にぶつかって身動きがとれなくなってしまった。


(ええい、こうなったら...)


「じゃあ、これ見ようぜ!」


 俺は後ろにあった貼り紙をタイトルも見ずに指差した。


(まぁ、こいつらのよりましだろ)


 しかし、二人の反応はというと、


「「...えっ?」」


 なぜか少し引いているように見えた。

 俺は恐る恐る振り向いた。


「なっ!?」


 そこにはにゃんこのかわいい絵が描かれていて、タイトルは『猫にゃんまと7匹の猫』。


「なんじゃこりゃ!」

「兄貴って...こうゆうお子様っぽいの好きなんだ」


 グサッ


「ち、違うよ!きっとお兄ちゃんは猫が好きなの猫が」


 グサグサッ


(恵、それフォローになってないから...)


 俺は痛恨の一撃を二発もくらい、顔から耳まで真っ赤になっていた。


「で、でも兄貴が見たいって言うんだからこれにしよっか?」

「そ、そうだね。意外と面白そうだし」


(も、もうやめて!立ち直れなくなっちゃうよ僕!)


 二人はそう言って、券を三枚買ってきた。

 そうして俺たちはその映画をやるシアター5へと向かった。

 そこはやっぱりなと言っていいほどに子供とその親ばっかしだった。

 俺は顔を見られないように手で顔をおおって席につき、映画が始まっても下を向いたままで結局終わって映画館からでるまで顔から手をどけることはなかった...





お読み頂き感謝です♪

恵がゾンビ映画が好きなのはゾンビを見て恐怖に顔を歪める登場人物を見るのが至極だからですw

何故かは...察してくださいww

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