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第25話:お兄ちゃんへの愛ゆえに...ですかね

よろしくお願いします!

 シャキーン


 ハサミを構える恵。


「うふふ」


 笑いながら近づいてくる恵。


「や、やめろ...」


 後退る俺。

 しかし、後ろの便器に当たり逃げ場がなくなる。


「うふ、死ね死ね死ねー」

「いやーー!」


 グサッ、グサッ、グサッ!


「ばいばいお兄ちゃん...」


 こうして俺の人生は幕を閉じた。


 ーーEND


「............お兄ちゃん何ですかその妄想は」

「はっ!俺まだ生きてる!」


 恵の一言で我に帰った俺は体を隅々までチェックした。


(よかったぁー。体もまだくっついてる)


「いや、別にそこまでするつもりはありませんよ」

「えっ、マジで?」

「えぇ...でも唇はもらいます」

「はいどうぞ、ってなるかい!結局そこまでやっちゃってるからそれ!」

「いいツッコミ頂きました」

「しまっ!はめられた!」


(くそ!最初から読まれてたってのかよ俺がツッコむってことを。こりゃ一本とられた!なんつって...ふー、この状況でここまで冷静でいられる俺が怖い)


「............冷静な割には」


 そう言って俺の足を見る恵。


「お兄ちゃんの足、ガクブルですね」

「ほっとけや!てかさっきから何で俺が思ってることわかるだよ!」

「そんなのお兄ちゃんへの愛ゆえに...ですかね」

「意味わからんわ!」

「簡単に言うと、愛さえあれば関係ないよね!ってことです」

  「イコール勘ってことじゃねぇか!」


(このままじゃダメだ!どんどんあいつのペースに飲まれていっちまう!なんとかしねぇと...)


「そんなことよりお兄ちゃん」

「な、なんだ?」

「そろそろ本題に入ってもいいかなー?」


 恵はそう言うと、トイレの中に入ってきてドアを閉め、鍵をかけた。


「これでもう逃げられないよ」


 さっきとは違い、ドスの効いた声で言ってきた恵に俺は萎縮してしまった。


「じゃあ始めよっか♪」


 そして恵はハサミを取り出すと、いきなり俺の唇に先端を当ててきた。

 俺はあまりの速さについていけず、とっさに後ろに仰け反ったが少し血を流してしまった。


(やべぇよ!マジでやる気じゃねぇか!)


「もう、動くからうまく切れなかったじゃないですかー。ちゃんと止まってて下さい」

「そんなの無理に決まってんだろ!死ぬわ!」

「しょーがないなー。だったら私が押さえててあげるね」


 そう言って恵は俺の肩を掴み、強引に便座に座らせてきた。

 俺は足掻こうとするが全くの無意味だった。

 そしてそのまま俺の足に馬乗りしてきて、俺は完全に身動きがとれなくなった。


「これなら動けないよね」

「め、恵、一回落ち着こう。な?」

「どうして、そんなに怯えているの?」


(可愛く首傾げんな!誰だってこんな状況ビビるに決まってんだろ!)


「大丈夫だから、安心して私に任せて」

「いやだ!離してくれ!」

「それはダメだよ。とにかく...」


 ガシッ


「ぶほっ」


 恵は俺の顔をしっかり掴んで動かないようにした。


「唇もらい受けます」

「ばめぼ!(やめろ!)」


 しかし、恵は俺の思いを無視してハサミを近づけてくる。


(神さまーー!いい子になるから助けてくれー!!)


 これだけ願っても恵のハサミは近づいてくるのは止まらない。

 そして、ハサミが俺の唇に当たった。


(万事休す!)


 俺は目をつぶった。

 その時、神は舞い降りた。


 ピカッ!


 急に辺りが明るくなったと思うと、


 ゴロゴロゴロ!


 雷がどこかに落ちたのか、ものすごい音が響いた。


「うわっ!」


 さすがの俺もあの音にはびっくりして、思わずしゃがみこんでしまった。


(...あれ?俺なんで動けんの?)


 目を開けると、俺の唇にはハサミは当てられてなく、近くにハサミすら見えなかった。

 見えたのは、トイレの隅でうずくまる恵の姿だった。

 恵はすごく震えていた。


(まさか...こいつめちゃくちゃびびってる?)


 俺はそっと恵に近づき、


「お前、雷怖いの?」


 と聞いた。

 すると、恵は声をかけられただけでビクッ!となり、そっと顔をあげて、


「べ、べべべべ別にこ、怖くなんてないよ!」


 と答えた。


(めちゃくちゃびびっちゃってるじゃんこの子)


 ゴロゴロゴロ!


「きゃあ!」


 ゴロゴロゴロゴロ!


「ひぇ!」


 雷が鳴る度に悲鳴をあげてビビる恵。

 その様子を見ていると、俺は笑いが堪えられなくなり、


「ぷっ」


 思わず吹き出してしまった。


「な、なにがおかしいんですか!?」

「いや、だってさっきまであんなだったのに雷でびびるなんてって思ったらなんか堪えられなくてな」

「ぅぅ、お兄ちゃんひどい...」

「わりぃわりぃ、でも....ぶふっ」

「あ!また笑った!むぅー」

  「だからわるいってw」


(いっつもこんな可愛いげがあったらいいのにな...あ、そうだ。恵がこの状況のうちにこっからでよう)


「じゃあ恵、悪いが出さしてもらうぜ」

「あっ...」


 ギュッ


 出ようと思った俺のズボンの裾を恵は掴んできた。


「............行かないで」

「えっ?」

「お願い...」


 少しうるんだ目で俺を見上げる恵に俺はすごくドキドキした。

 すると、自然と出る気が失せて、


「...分かったよ。お前が落ち着くまでなら一緒にいてやる」

「お兄ちゃん...」


 そうして俺は恵の横に座り、二時間ほど一緒にいてやった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 二時間ほどすると、雨も止み、恵も落ち着きを取り戻した。

 しかしそのせいで、結局アニメは見ることができなかった。


(まぁ、なにもなかっただけましか)


 そして俺たちはさっきまでのことがなかったかのように晩御飯を食べて、眠りにつこうとしていた。


「お兄ちゃん、今日のことは誰にも言わないで下さいね」

「はいはい、分かってるって」

「それじゃあ、おやすみなさいお兄ちゃん」

「ん、おやすみ」


(ふぅー、今日は長い一日だったぜ。でもよく眠れそうだな)


 そうして俺たちは、自分の部屋に戻ろうとした。


「お、お兄ちゃん!」


 すると、入ろうとしたところで恵が俺のことを呼んだので振り向いた。


「なんだよ?」

「あの...その...」

「ん?」


 そして、


「か、雷から守ってくれて、ありがと///」

「...お、おう」

「じゃ、じゃあホントにおやすみ!」


 そう言って、恵は急いで自分の部屋に入っていった。


「............」


 俺は無言で自室に戻り、ベッドに入った。

 しかし、頭のなかでさっきの恵の言葉が何度もこだましていつになってもドキドキがおさまらなかった...






お読み頂き感謝です♪

いやー、感動のフィナーレでしたねーww

次回、これがあった次の日、いつもと違う兄と恵の様子を見た加奈子のお話です!

以後お見知りおきを~

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