第22話:夏休みが終わりました...俺には関係ないけどね
よろしくお願いします!
今日は夏休みも終わり、二学期の登校日である。
休み明けというものはどうしても生活リズムがおろそかになるもので、うちの妹二人も朝からバタバタしていた。
「加奈子!恵!はやく支度しなさい!」
「やばっ!もうこんな時間じゃん!早起きはしたのに!お母さんパン焼いといて!」
「うぅ...メガネメガネ」
「ちょっ!メグ今頃起きたわけ!?遅刻しちゃうよ!」
「あ、かなちゃん私の眼鏡知らない?」
「あんたもうかけてるじゃん!」
そんな感じで、我が家は忙しそうだった。
しかし、そんなとき俺はというと...
「...zzz...あやたん、みやびたん...うひひ...じゅるり」
まだ夢から覚めていなかった...
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺が目を覚ましたのは結局11時30分。
もちろんその頃には家のなかはもぬけの殻だ。
俺は喉が乾いたので、牛乳を飲もうとリビングへと降りた。
リビングに入ると、テーブルの上にいつもはないはずのものが用意してあった。
「あれ?なんで俺の分の朝ごはんあんの?」
俺はだいたい昼前に起きるので朝ごはんはいらないと言ってあるのだが、そこにはごはん、味噌汁、焼き魚、肉じゃがといたって普通の朝ごはんが置かれていたのだ。
しかもラップでくるまれた朝ごはんの上には、ご丁寧に「食べてね♪」とメモが残してある。
「お袋...さすがにその年で食べてね♪はねぇよ」
でもせっかく作ってあったので、俺は食べることにした。
まずはごはんを一口...うん、うまい。続いて味噌汁を一口...うん、お袋の味だ。そして、焼き魚を一口...うん、塩加減もさいこーだ。最後に肉じゃがを...ん?
俺はその肉じゃがを見て少し違和感を感じた。
なぜなら肉じゃがだとは判別できるのだが、形がいささかいびつだったのだ。
「お袋って肉じゃが苦手だったっけ?」
しかし、味には問題ないだろうとその肉じゃがに手をつけた。
今思えば何故この大量の違和感に俺は不審だと思わなかったのか...
そして、俺は肉じゃがを口に入れた...その瞬間、
「ブーッ!」
不味すぎて噴いた。
「ゲホッゲホッ...!なんだこれ!くそまじぃー!」
俺は不味さを紛らわすために水を一気に飲んだ。
しかし、それは間違いだった。
「ごくごく...ぷはぁー...うぐっ!」
俺は水を飲んだ直後、激しい腹痛にみまわれた。
「あ、あいたたた...ううっ」
その原因は水を飲んだときに口のなかに残っていた肉じゃがも一緒に飲んでしまったことであろう。
俺は耐えられなくなりトイレに駆け込んだ。
しかし、全くなおる気配がなく、逆に悪化していった。
「く、くるしい...」
ここにいてもどうしようもならないと思ったので、俺はとりあえず自室に戻り横になろうと考えた。
「ダメだ...うまく歩けねぇ」
歩くだけでも困難なのに部屋に戻るには階段を登らなければならない。
俺は四つん這いになりながらなんとか登りきった。
そして、そのまま部屋に入る。
「あ、あと少し...」
しかし、俺の意識は朦朧としていて途切れる寸前だった。
「もう...無理」
そしてベットに手をかけた瞬間、俺はついに意識が途切れてしまった...
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「...兄貴」
「............」
「兄貴、起きて」
誰がが呼ぶ声がする。
「...んん」
俺が目を開けると、
「やっと起きた♪」
「なっ!」
そこには唇が触れあいそうなほどに顔を近づけた加奈子の姿があった。
「お、お前何やってんだ!?」
「何って、兄貴の寝顔見てたんだよ?」
悪びれもせずに恥ずかしいことを平然に加奈子は言う。
俺は恥ずかしさで顔が真っ赤になっていた。
「へ、変なことしてんじゃねぇ!驚いただろう!」
「いいじゃん、いいじゃん減るもんじゃないんだし」
「そういう問題じゃねぇよ!」
俺は一回落ち着こうと深呼吸をした。
そして、加奈子にここにいる理由を尋ねた。
「んで、なんかようか?」
俺がそう聞くと、加奈子は急にもじもじしだした。
「あのさー、今日朝ごはん食べた?」
その時俺はあの肉じゃがのことを思い出した。
俺は腹をさすってみる。
さすがにもう痛みは消えているみたいだった。
「食べたけど...それがどうした?」
すると加奈子はとんでもないことを口にした。
「肉じゃがあったでしょ...あれ私が作ったんだ」
あの兵器...いや肉じゃがを作った犯人...それは加奈子だったのだ。
「お前だったのか!何てもの作るんだよ...」
「えへへ、けっこう自信作だったんだ」
(ああ、確かに自信作だ。兵器として売ったら相当儲かるだろうよ!)
「何でそんなことしたんだよ?」
「私ね、最近お母さんに料理教わってるんだ」
(お袋、こいつに料理は百年...いや、一万年は早かったみたいだぜ...)
俺は呆れて怒る気も失せていた。
「急にどうしたんだ?」
「他にも色々やってるよ。洗濯とか、掃除とかも」
「へぇー、まるで花嫁修行だな。誰かんとこに嫁ぐのかよ」
(まぁ、こんなやつに嫁がせるやつがいないだろうけどな)
俺は冗談で言ったつもりだったのだが、加奈子は真面目な顔で、
「何いってんの?決まってんじゃん!私、兄貴のお嫁さんになるんだもん♪」
と言った。
俺は予想外の返答に思わず噴いてしまった。
俺の顔はまたしても真っ赤になっていた。
「ブーッ!はぁ!?」
「もう兄貴照れんなって」
「照れてねぇよ!」
「それで、未来のお嫁さんの肉じゃがはどうだった?」
「死ぬかと思ったわ!」
「えっ?死ぬほど美味しかったわけ。だよねだよねー。やっば私天才だわ」
「ちげぇーよ。逆だよ逆!」
しかし、加奈子は俺の言うことを完全無視で、何やら後ろをごそごそし出したと思ったらそこからタッパーを取り出した。
その中身は大量に詰められた....例の肉じゃがだった。
「実は、兄貴がそう言うと思って大量に作ってみました」
「...は?」
加奈子はそう言うと、どこからともなく箸を取り出して俺の目の前に肉じゃがを突き出して来た。
「はい兄貴、あーんして?」
「やめろ!そんなもん近づけるな!」
「遠慮すんなって♪ほらはやく口開けて」
「も、もう勘弁してくれぇぇ!!」
このあと抵抗むなしく口のなかに肉じゃがを押し込まれた俺がどうなったかは言うまでもない...
お読み頂き感謝です♪
今年ラスト更新!なんとか間に合って良かったです!
少々早いですが、皆さんよいお年を~♪
来年もよろしくお願いします!




