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第19話:兄貴はやっぱり優しい...ね

よろしくお願いします!

 久しぶりの外の空気は正直、いい気分ではない。


 てか...しんどい...


 俺は今、全力疾走で目的の場所まで向かっているが100メートルぐらい走ってもう息が上がっている。


 そりゃそうだ、俺はずっと家にこもってたんだからな。


 って、別に自慢できることではない...


(あいつまだあそこいってんのかなぁ...昔のことだしなぁ)


 しかし、俺にはそこしか宛がない...


(まぁ、いなかったら他の場所探せばいいしな。行くだけ行ってみるか)


 そこは昔、加奈子が俺を案内してくれた場所...


 俺は、走りながら昔のことを思い出していた...


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 それは、俺が小6で加奈子が小2の時のお話...


「お兄ちゃん、こっちこっち」

「なぁ、お前が言ってるその秘密の場所っていつになったら着くんだ?」

「もうちょっとだから、もうちょっと」

「はぁー...」


 俺は、学校帰りに加奈子がこの前見つけたらしい秘密の場所に案内されていた。


 今日は俺的に見たいアニメがあったのだが、しぶしぶ了承し行くことになった。


 その場所とは神社の裏にあり、加奈子いわくとてもきれいな場所で落ち着くらしい。


(そんな場所、ここら辺にあったか?)


 俺は、半ば半信半疑でついていっていた。


「あ!あったよお兄ちゃん!この道をまっすぐ行ったら秘密の場所だよ」


 そこには確かに道があった。それはよく見ないと気付かないような正に抜け道のような道だった。


「へぇー、こんなとこあったんだな」

「ね!すごいでしょ」


 俺たちはその道をどんどん進んでいった。


「ほら、着いたよ!」


 その道は案外短く、目的地にはすぐに着いた。


「お兄ちゃん、見てみて」

「............」


 俺は、驚いて声がでなかった。

 そこに広がっていた景色は、予想以上のものだった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 あれからもう6年が経った...

 そして、俺はまたあの時と同じ景色を見ている。


「はぁ、はぁ...相変わらずここは良いところだな」


 ここの景色は昔と全く変わってない。


(やっぱここだったか)


 そこには初めて来たときと同じく、加奈子が体育座りであの景色を見ていた。


「えっ....兄貴?」


 よかったぜ、お前も忘れてなかったみたいで。

 お前も昔と全く変わらないんだな。


「やっぱりここにいたんだな」

「な、なんで?...どうして?」


 加奈子の目にはうっすら涙が浮かんでいた。


「決まってんだろ...お前を迎えに来たんだよ...」


 さて、これからどうやって謝るか....

 もしかしたら、嫌われるかもしれねぇな。

 けど、俺は全部覚悟してるさ。

 なんたって...


「俺はお前の兄貴なんだからな」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ~加奈子 view~


 気が付くと、私はあの場所に来ていた。

 私は悲しいことがあったときやイライラすることがあったときはよくここに来て自分を慰めている。


 この景色を見ると何でもどうでもよくなると言うかその事を忘れることが出来る。


 しかし、今回に限ってはこの景色を見てもあの事が全く頭から離れず、むしろそのことで埋め尽くされていく。


 それもそのはず、ここは私と兄貴の思いでの場所...だと私は思っているからだ。


 兄貴がどう思ってるかは分からない...てゆうか、覚えてないかもしれない。


 そんなことを考えると、また心が苦しくなって悲しくなった。


 そんなとき、兄貴の声が聞こえた気がした...


「はぁ、はぁ...相変わらずここは良いところだな」


 私は、その声がした方向におもいっきり振り向いた。


「やっぱりここにいたんだな」

「えっ...兄貴?」


 そこには本当に兄貴が立っていた。


「な、なんで?...どうして?」

「決まってんだろ...お前を迎えに来たんだよ...俺はお前の兄貴なんだからな」


 私は、夢じゃないかと疑った。だって、兄貴が外に出るわけないから。


「兄貴は外に出るのあんなに嫌がってたじゃん。だから、兄貴がいるわけがない。これは夢...」


 私は、頬をつねってみた...痛い。


「お前なにやってんだ?夢なわけないだろ。現実だよ」

「じゃあ、なんで?」


 私はまだ、信じられなかった。別に兄貴を信じたくない訳ではない。むしろ、信じたい...けどあの事を知っている私としてはどうしても信じられなかった。


「私の兄貴は、あんなことあって一年以上もひきこもってるの。そんな兄貴が私のために出てくるわけないじゃん!夢なら早く覚めてよ!私の妄想なら...早く消えてよ!」

「うるせぇ!」


 私は叫んだ。そうすればまた元に戻ると思ったから...でもそれは違った。逆に怒鳴られてしまった。


「あ、わりぃ...でもな、これだけは言わせてほしい...俺はあの事よりも、今は妹の方が大事なんだよ。俺も、ついさっき気づいたところだ」


 驚いた...兄貴が、あんなこと言うなんて...しかし、その反面、物凄く嬉しかった。


「ほ、ほんとに兄貴なの?」

「当たり前だろ」

「ほんとにほんとに?」

「何度も言わすな。俺はお前の兄貴だよ」


 私はついに、我慢できなくなってしまった。


「兄貴!」


 私は兄貴のもとに駆け寄り、おもいっきり抱きついた。


「...加奈子、昨日はほんとにごめんな。お前のこと信じてやれなくて。それに...夜のことも...」


 いつもなら抱きつくと離そうとする兄貴だけど今日は受け止めてくれて、しかも頭を撫でてくれた。


「もういいよ兄貴...それよりも兄貴がこの場所覚えててくれて私、嬉しかった」

「...忘れるわけないだろ。ここは俺とお前の思いでの場所だからな」


 兄貴も同じこと思っててくれた。やっぱり兄貴は優しいな...


「兄貴...」

「ん?どうした?」


 私は指で涙をぬぐいながら、少し笑顔を浮かべて言う。


「ありがとね」


 そして、


「大好きだよ」





お読み頂き感謝です♪

やっとクライマックスやん♪

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