第18話:妹を助けたいと思うのは兄貴としては当然...だよね
よろしくお願いします!
俺のせいで加奈子が家出をしてしまった...
その事実に俺は愕然としていた。
『...ねぇ、大介聞いてるの?』
「...ん?ああ、ごめん」
『それで、何か知ってるの?』
「............」
俺はあの事について言うか迷った。
もしそれをお袋が知ったら...そのことを考えると怖くて話せなかった。
「...俺は知らない」
『そう...』
(そういえば...)
「あのさー、楓ちゃんが家にいないんだけどーーーー」
『お兄ちゃん、私はここにいるですぅ!』
楓ちゃんの声が聞こえた。
でも、それは受話器の中からだった。
「どうして?」
『楓ちゃんがどうしても一緒に探すって...』
『お兄ちゃん、昨日はごめんですぅ...楓のせいですよねこうなったのは...だからお兄ちゃんは気にしないでくださいですぅ!』
「か、楓ちゃん...」
楓ちゃんはあー言ったが本当にそれでいいのか?
確かに、楓ちゃんがあんなことしたからこうなってしまったともいえる...でも、俺がもし楓ちゃんを止めていたら?普通に寝ていたらこんなことにはならなかったんじゃないか?
俺は頭のなかが混乱してどうにかなってしまいそうだった。
『とにかく、私達はもう少し探してみるからあんたはもしかしたら加奈子帰ってくるかもしれないから家で待ってなさい。ほんとはあんたにも探してもらいたいんだけどね...』
「ごめん...」
『...それじゃ、切るよ?』
そう言って、お袋は電話を切った。
とりあえず、俺はソファーに腰かけた。
「はぁー...」
俺の心は後悔と絶望の渦に飲み込まれそうになっていた。
だが、それは俺だけじゃない。
ましてや、加奈子は一人の女の子だ。
それこそ胸のうちではいろいろな感情が渦巻いているだろう。
それに俺はとどめを刺してしまったようなものだ。
俺には加奈子が何で怒ったのか分からない。
あんなことをしたからか?それとも他に何か理由でもあるのか?
でも、一つだけ分かることがある...それは原因は俺にあるということだ。
俺は加奈子のことは好きではない。
飯を食べる時はいっつも足を踏まれるし、無意味に抱きついてくる。
そんな加奈子を俺は鬱陶しいと感じている...はずだった。
しかし、心のどこかではそれが心地いいとも思えている。
俺はいつでもあやたんとみやびたんのことを考えていたい...
でも今は、どんなにそうしようとしても頭の中ではあの時の加奈子の顔がぐるぐると回っていた。
俺は一体どうしたいんだ?
加奈子のことを助けたいのか?
でも、あの時俺は追いかけるのをやめた。
それなのに今さら助けたいなんて変じゃないか?
それならここで待ってるのか?
待って、加奈子が帰ってきたらそんとき謝ればそれでいいじゃないか。
お袋にも言われたはずだ。
加奈子がもしかしたら帰ってくるかもしれないから家で待ってなさいって。
だったらそれでいいじゃねぇか。
しかし、思いとは裏腹に俺の心はもやもやしていた。
そんなとき、またしても電話がなった...
(お袋か!まさか見つかったんじゃ...)
俺は急いで電話のもとへ向かい、受話器をとった。
でも、それはお袋ではなかった。
『ちょっと!お兄ちゃん今何やってるの!?』
電話の主は恵だった。
「恵!?」
『お母さんから聞いたの。加奈子がいなくなったんでしょ?』
「ああ...」
どうやら恵は部活に行ってて知らなかったみたいだ。
『今、私も探してるの。それでお兄ちゃんは!?』
「俺は...家で加奈子の帰りを待ってる...」
『ふざけないでよ!なんで探さないの!?』
「いや、だって...」
俺はあることがあってから家には出なくなった。
もちろん恵たちも知っている...だから許されると思った。
しかし...
『だってじゃない!お兄ちゃんの事情なんて知らないよ!そんなことより加奈子を助ける方が大事なんじゃないの?』
「な...か、簡単に言うんじゃねぇよ!」
『うるさい!!』
「!?」
俺は驚いた。
こんなに怒った恵は見たことがなかったから...
『そんなこといってる場合じゃないって分かんないの?もしかしたら、もう加奈子と会えなくなっちゃうかもしれないんだよ?お兄ちゃんは...お兄ちゃんはそれでもいいの!?』
「............」
俺は言葉につまった。
前までの俺なら、どうでもいいと答えるだろう。
でも、今の俺にはそれが答えられなかった。
「あ、そうか....」
俺はやっと本当の自分に気付けた。
なんだ、結構簡単なことじゃねぇか。
昔の俺は、あいつらはずっといるもんだと思ってただ甘えてただけだ。
でも、今の俺は違う...妹がいなくなるという体験をしたからやっとわかった。
俺は....あいつらにずっといて欲しいんだ。
俺はやっと自分の思いに気づき気が抜けてしまった。
「ぷふっ...あはははははは!!」
『お、お兄ちゃんどうしたの!?』
「いや、何でもねぇ...恵、ほんとにありがとな。お前のおかけでやっと決心がついたぜ」
『お兄ちゃん...うん!やっぱりお兄ちゃんはそうじゃなきゃ♪じゃあ、そろそろ切るね』
「おう!...ってちょっと待ーーーー」
俺が言い切る前に電話は切れてしまった。
しまったな...加奈子が行きそうな場所聞くの忘れてた。
ただ闇雲に走り回ってたってみつかんねぇもんな。
とりあえず、俺は考えてみた。
加奈子が行きそうな場所...ってそんなのわかる分けねぇだろ!
それもそのはずだった。
俺は一年半もずっと引きこもったままだったからだ。
と、とにかく考えろ...ゲーセン?コンビニ?いやいや、そんなとこならもうとっくに見つかってるはずだ。
ん?てことは加奈子は今見つかりにくい場所にいるってことか?...待てよ?
見つかりにくい場所という単語に俺は何かつっかかりを感じた。
「むむむ...あ、思い出した」
そうだ、加奈子はきっとあそこだ。
なんで今まで忘れてたんだ俺は。
俺はいく場所も決まり早速玄関へ行った。
そして、靴を履き玄関のドアへ手をかけた。
俺の手は震えていた...
今ごろなんだ?びびったのか?
しゃーないよな。久しぶりの外だもんな。
でも、もう俺は決心したんだろ?
だったらびびることはねぇ。
さっさといっちまえ。
俺は一回手を離し、顔を叩いて気合いを入れ約一年半ぶりの外へと駆け出した。
妹を助けるために...
お読み頂き感謝です♪
つ、ついに...外に出たぞー!




