内閣総理は傍若無人!
「今回、第99代内閣総理大臣となりました。白粉健司新総理です。お入りください」
パチパチパチパチ。議員たちの拍手が巻き起こる。
そこで俺は―舞台へと立った。
「こんにちは。白粉です。まず私の政策は―」
キッと目を鋭くする。
「この日本中にいる議員の半数を、クビにします」
ニコニコ顔でそう言ってやると、ニコニコ顔でこちらを見ていた辛気臭いおっさん共が、一斉に怪訝な顔をする。おー、怖いこと怖いこと。
「そして、残った半数の給料を、半数にします」
ニコニコ顔のままそう言ってやると、いよいよ虫の居所の悪くなってきたおっさん議員とおばさん議員が乗り込んでくる。
「おまえ、本気で言っているのか!」
「あんた、それほんと!?」
血相変えて飛び込んでくるあたり、気持ち悪いったらありゃしない。
「安心してください。石橋議員、中田議員」
一拍置いて、溜めながら言った。
「あなたたちはクビですから」
おーおー、そんな怒った顔しなさんな。
「そもそも、この国が負っている損害の赤字は、すでにここにいる数多くの頭の悪い人が数えられない域に達しています。京ですよ、け・い。あなたたち議員に読めますか、わかりますか? 兆ですら馴染みのない人に聞けば、『なにそれ、京都?』なんて返されてしまうような域に達してしまっているんですからね。果たしてだれのせいか」
議事堂に集まった議員全員が息をのむ。いや、あんたらだってわかってんだろ?
「この日本には一体どれくらい議員がいるんですかねぇ。もしかしたら人口の100分の1人くらいいるんじゃないんですか? そんな人たち一人ひとりに年一億円も税金払う国民。あなたたちはかわいそうと思ったことはないんですか? ……まあ、ないでしょうね。誰もそんなこと言わないうちは」
そこで俺は、上っ面のきれいごと猫かぶりを捨て去った。
「てめぇらが貪り食って使った金。どれくらいだと思う? 少なくとも半数いなければ30兆は浮いたんだよ。で、その他の議員の給料を半分減らすだけで15兆円は浮く。そこに選挙とか無駄なダム建設とかしなきゃ、黒字の出来上がりじゃねぇか。未来の子供たちのため? はっ。どうせ未来には俺たちはいないんだから、使えるうちに使っちまえって思っている奴が半数いるうちは、そんなの目標じゃねぇ、詭弁だ。いい年したじじいとばばあが金ばかり集めてどう思うよ、ええ? いつ使うんだどう使うんだ何に使うんだ?」
一気に静まり返る議事堂。
「ここで今未来と国民のためになんて思っている奴に忠告する。
お前の立場はなんだ? 議員ってのは国民よりも偉いのか? 違ぇだろ! むしろ議員は国民の下なんだよ! 国民が議員のために金を払うんじゃねぇ。議員が国民のために奉仕すんだよ。じゃあお前らは奉仕で来てんのか? ここで迷いなく奉仕出来ていると思っている奴は精神科に行って入院して来い!
年増たちが子供たちの未来を創るんじゃねぇ。子供たちが自分の未来を創るんだ。さっき言った詭弁を使っている奴、赤字国債なんて言葉聞いて微塵も悲しく思わねぇのか? 今あんたらは未来をつぶして回ってんだよ」
! ハッとなって議員共が顔を上げる。中には涙を流している奴もいた。
だが、嘘と責任転嫁、揚げ足取りにだけ取り組んできた議員がそれだけで終わるはずもない。
「じ、じゃあ、あんたは国のために何かしてんのかよ!」
そうだそうだ! と、一挙に立ち上がる腐った奴ら。……日本はこうも腐敗したか。
だが、その質問が愚の骨頂だな。
「バカか。俺はもうすでに給料なんかもらってねぇよ。他でバイトやらなんやらして生活費をとっているんだ。なあ、責任転嫁と揚げ足取りのみ高い能力値な屑ども」
そんな本当のことを言っているだけで、嗚咽こらえて泣くか普通? 俺は真実を言っているまでだというのに。
「お前らは誇って国のためにやったって言えることがあんのか?」
後日。議員の4分の1が自主退職。そして俺は3分の2を強制退職させ、見事黒字、それもかなり下回り、借金返済に充てられる額も発生した。
俺は、議員支持率0% 国民支持率100%の総理大臣となった―
夢を見た。