第1話 とりあえず記憶喪失です
あれから気付けば私は学校まで走っていました。
“覚えていない”
この事実がすごく悲しくて……
「大丈夫よ、アオイ。人違いよ、人違い。」
「そうだよ。こんな所にリュウがいるわけないよ。」
「うん……」
二人は私を励ましてくれました。二人も忘れられていて辛いはずなのに……
人違い、そう思いたかった。でも…あの声、あの顔は、間違いなく彼のもの。
確信が持てる自分が憎い……こんな思いは初めてでした。
「はーい、アンタら早く席に着け~」
担任の青山先生が入ってきました。
青山先生は二十代後半の女性で、すごくきれいで生徒とまるで友達のように話す人。学校の男子からも人気が高い、美人教師です。
「今日は転校生を紹介するわよ~!男子諸君、残念!男の子だ!」
相変わらず元気な青山先生、そして残念がる男子生徒たち。
その中にタカ君も入っていました。
「……タカ~!」
「い、痛い痛い痛い!!」
予想通り、タカ君はサユリに攻撃されてました。タカ君は気付いてないようだけど……サユリ、バレバレだよ?
「では登場してもらいましょうか!入ってきて良いわよ~」
(ガララ)
「……!!」
青山先生に言われて入ってきたのは……
「佐伯龍治です。よろしく。」
リュウ君でした。
ん~、自己紹介したのは良いけど……さっきのヤツらのいるじゃねぇか。しかもガン見してるし。
都合が良いって言ったの、撤回するわ。
だって…さっきの悲しそうな顔してたヤツ、今にも泣き出しそうだもん。
「じゃあ、ちょうどあそこの席が空いてるわね。あそこに座って!」
何だよ、そのギャルゲーみたいな席の決め方。
しかもあそこの席って、アイツの隣じゃねぇか!!
「どうしたの?早く座って、ホームルーム始めるわよ。」
座ったのは良いけど……
気まずっ!うわっ、メッチャ気まずっ!!
おいおい、これからどーすんのぉ?
もう学校サボって帰るか?でも授業の単位とか足りなくなったらめんどくせぇしなぁ……
「はい、じゃあホームルームを終わります。生徒諸君、今日も頑張ってくれたまえ!!」
そういって担任が教室を出た瞬間……
(ザザザザザッ)
「ねぇ、どこから来たの!?」
「趣味は!?」
「好きな食べ物とかってある!?」
あ~、マンガとかでよくある風景だな。転校生がクラスメイトに囲まれるってヤツ。
「彼女とかいるの!?」
「好きなスポーツは!?」
「写真撮らせて!!」
「あ~、とりあえず一人ずつ頼む。俺、聖徳太子みたいに複数人の話聞けねーから。」
今、彼はクラスメイトに囲まれて質問されています。
「…行かなくていいの?」
タカ君が心配して話しかけてきてくれました。
「タカ君こそ。昔一番仲良かったじゃない。」
「僕はアオイの方が仲良かったと思うよ。……なんというか、話しかけづらいんだよね。」
「うん…」
私たちはリュウ君に話し掛けられずにいます。
『アンタら、誰?』
またさっきのようにそう言われるのが怖くて……
「……ところでサユリは?」
「そういえばどこに行ったんだろ?………って、サユリ!?」
私たちが目にしたのは、リュウ君の制服の襟を掴んで引っ張るサユリの姿。
「ちょっと来なさい!!アオイとタカも!!!」
(ズルズル…)
「一体なんなんだぁ?」
「ちょ、ちょっと待ってよ、サユリ!!」
転校初日から何だよ、コレ?
俺は現在、朝見たヤツらと人通りの少ない廊下にいます。
「何かいうことは?」
「……戻っていい?」
「違うでしょ!!」
「ちょっと、サユリ落ち着いて!」
な、何なんだよ…
「もう一度聞くわ!アタシたちに言うことは!?」
「……はじめまして?」
(バンッ)
おお、いい右ストレート。
俺の顔の横に置いてあった金属板、ちょっと凹んだぞ。
「アタシたちのこと覚えてないの!?」
そう言われてもなぁ…
ん?『覚えてないの!?』ってことは、やっぱり昔の知り合いかぁ!で、俺が記憶喪失なのを知らないから、ただ単に忘れたと思って怒っていると。あぁ、納得!
「なんとか言ったらどうなの!?」
目の前で怒鳴る少女が若干涙目になってきちゃったよ。うわぁ、メッチャ罪悪感あるわぁ……
「あ~、喋っていい?」
「何よ!?」
「え~っと…単刀直入に言うと、俺記憶喪失なの。」
「「「…え?」」」
「三年前に事故にあって、それ以前の記憶が全くねぇんだ。悪いけど、そーいうこと。」
「「「………」」」
「さっきまでの話から察するに、アンタらは記憶喪失になる前の俺を知ってるんだろ?どんなヤツだったか、教えてくんない?なにしろ家族はみんな死んで自分がどんなヤツだったかをわからなくてなぁ。」
「……ごめんなさい」
「ん?」
「ごめん…なさい……!」
え?何で謝ってんの?何で泣いてんの?俺、泣かすようなこと言った?
よく見るとコイツだけじゃなくて隣の席になったヤツも泣いてるし!
え?俺、泣かすようなこと言ったかな?
((ダッ))
「あ、おい!」
「ふ、二人とも!」
女子二人が逃げ、俺はこの男と二人になった。
「えっと……俺なんか悪いことした?」
「……いや、リュウは何もしてないよ。ただショックだったんだと思う。」
「ショック?」
「僕たち四人は幼稚園からずっと一緒だったんだ。でも小学校六年生の時にリュウが海外の学校に転校して、僕らと別れた。そして三年前……僕らが中学一年の夏、君が事故で死んだと聞かされたんだ。」
「……マジかよ。」
俺死んでねーのに。
「うん。でもリュウがさっき僕らの前に現れた。でも僕らのことを忘れていた……だから、ショックも大きかったんだと思う。そして今混乱しているんだと思う。僕も若干何がなんだかわかんなくってるしね。」
「………」
「とりあえず…これからよろしくね、リュウ。あ、呼び方、リュウでいい…かな?」
「むしろそっちの方がいいかもな。なんか思い出すかもしれないし。」
「じゃ、リュウって呼ぶね。僕は品川隆弘。“タカ”でいいよ。」
「じゃあこれからよろしく頼むわ、タカ。」
「うん。とりあえず、教室戻ろうか。」
「そうだな。授業遅れて教師になんか言われるのも面倒だしな。」
俺達は教室に向かって歩き出した。
佐伯 龍治
年齢;16才
職業;高校一年生
容姿;髪は黒でちょっと長め。顔はそこそこ。
性格;ドS。基本的に自分に危害を加える者はゴミ扱い。でもたまに優しい…?いや、そんなことないか。
本人より一言;「あ~、よろしく頼むわぁ。」




