2章「神様って言うのはそういうものです」
2章「神様というものはそういうものです」
信司は幼いころから、非日常にあこがれていた。何も変わらない学校生活。部活に入っていないのですることがなくネットに逃げ込む放課後。
そういう当たり前すぎることが、信司は嫌で嫌でたまらなかった。
けれども、先ほどの一件のおかげで信司は非日常に巻き込まれたのだ。ここは、巻き込まれてしまったというべきなのだろうが信司にとっては願ってもないことだったのだ。
「で、聞かせてください。もっと天使について、詳しく…そうでないと僕はこれからどうすればいいのかわかりませんし、戦い方ももう少し学びたいし」
信司は誰もいない家に彩音を連れ込み自分の部屋。2階の階段を上ってすぐ右の部屋で、彩音に天使についての説明を求めていた。
「そうだったね。教えるわ」
彩音はゆっくりと、語りだした。
「もともと天使っていうのはね、ある者と戦うためにあるんだよ。」
「あるもの?」
「そう、えっと…地獄の人ね。分かりやすくいうならば、魔物? 魔人? ってとこかな」
信司は、一瞬―は?―と思ってしまった。そりゃぁ、天使がいるくらいだから魔人や魔物がいてもおかしくはないがいきなり言われるとやっぱり思ってしまう。
「魔人。ですか?」
「そうだよ。その魔人っていうのもねやっぱり元は人間。だけれど生前に人殺しなどをした人が地獄似堕ちるでしょ? そういう人達全員が、魔人と化すの。魔人には基本的に心はないわ。形も変わるの。」
「心が…ない?」
信司は首をかしげる。
心が無いというのはどういうものなのだろうか。想像がつかない。
「そう。泣きもしないし笑いもしないわ。もちろん、人間らしい言語を発することもない…そうね…化け物という表現か正しいかな。うん、そんな感じ。」
信司は、無理やり首を縦に振った。ほんとはあんまりわからないけれど、少しだけなら理解できた。
「で、なんでその魔人と戦うんですか?」
「そうだね、理由は簡単だよ。人間を襲うから。」
「人間を襲う? それは頻繁に?」
「そうよ。日常茶飯事のように起きてるの。」
「でも、そんなとこ見たことないですし、襲われたって人も聞いたことがない。」
「魔人っていうのはね、いくつかの種類に分類できる化け物なの。そして人間には見えない。それをいいことに襲ってその人の…」
「その人の…?」
「体を借りるのよ」
信司は脳をフル回転させた。体を借りる。それってどこかのアニメにあった悪魔のようなものなのか、やどかりのようなものなのか。
「その人の体に入り込んで、その人を演じる。そうすることで人間の目にはその人が死んでいる。なんていう風には映らないでしょ?」
「まぁ、たしかに。そうですね」
「それでね、しばらくしたらまた人を襲うの。そして今度は化け物の姿じゃなくてその人の姿で。人に見えないようにね。」
「人に見えないようにって、どういうことですか?」
「私達天使と同じだよ。戦闘時は人間には見えない。そんな感じ」
「なるほど…」
「それで、今度はその襲った人と今まで借りてた体の両方ともに魔人の魂。まぁ私達は魔魂と呼んでいるわ。それをね、分裂させて両方にもぐりこませるの。」
「そうすることで、どっちもが生きているように見せかける。ということ?」
「そういうこと。飲み込みが早くて助かるわ」
彩音は少し笑う。信司は、まだ何かを考えている様子だ。
そんな信司をよそにまだ彩音は説明を続ける。
「そして、魔人の出所。地獄のことを時刻界と呼び、私達の出所。天国は、天界と呼ぶわ。まぁ、そのままね。」
「あぁ、そうだ。その天界なんだけどさ…神様って、いるの?」
「いるよー」
「会ったことあるの?」
「天使ならだれでもあったことあるよ。結構人間界に降りてきてるし」
「え、神様ってそういうもんなの?」
「そういうもんよ。それに私達の神様は、すごく絡みやすくていい人よ」
「それ以上言われると、イメージが崩れそうだ…」
信司は寝転がって目を覆った。イメージする神様と言えば、偉大で死んだ人でもなかなか会えるものじゃない。この世界を作った人物。というのを思い浮かべるのだが…
「それでね、神様が地獄界に対抗するために生み出したのが私達天使ってわけ。そしてね天使っていうのは組織になっているの。」
「組織?」
「そう…オンラインゲームであるギルドみたいなものだよ」
「あぁ、分かりやすい説明。」
「神様から直接任務をもらうの。それにしたがって動くってわけ。ちなみに任務の通知は携帯にメールが入るよっ」
「イメージが…てか、どんだけ現代的なんだよっ!携帯って…」
信司は、ため息をついた。
神様が携帯にメールをして仕事をさせる。というシステムは想定外だった。というか、誰にもそういう展開は想定できない。
「あと、私達天使には二つ名が与えられてるの。それも神様からもらうんだけれどね」
「そうなんだ…」
「そうだっ! 信司君のこと神様に報告しなきゃぁっ! そして、アドレス教えなさい」
「会うの?」
「そうだよ。今から神様にメールして、人間界に降りてきてもらうから」
『会いたくねぇー…』
信司はそう内心呟いてるのを横に彩音は神様宛てと思われるメールを打っている。そして、数秒後すぐに返事が来た。
「早っ! 神様どんだけ打つの早いんだよっ!」
「えっと、大丈夫だって。でね、明日学校が終わり次第この前の野原に来てほしいそうだよ。」
「明日か、うん。わかった」
「ふぁぁ…よし、それじゃぁさもう今日は、眠たいからお布団敷いてくれる?」
彩音は大きくあくびをする。
それを聞いた信司は、すぐに布団を準備して自分は1階で寝るからと言い残し、階段を下りて行った。
―――そして翌日・学校―――
「えぇ…今日からー、新しくこのクラスに加わることになった人がいる。今から紹介するから、ちょっと待ってなさい。」
―――ざわざわ―――
「男子かな?女子かな?」
「いけめんかな?可愛い子かな?」
そんな声が次々と聞こえる。信司は内心どうでもいいと言った様子で窓の外を見ている。
「よし、入りなさい…」
信司は仕方ないかと前を向いた。その瞬間。信じられないものが映った。
そこには学校の制服をまとった彩音がいるではないか。信司は驚愕で声も出なかった。
「今日から、このクラスで一緒に勉強することになった。中野 彩音ですっ! よろしくお願いしますっ」
「中野、席はだな…」
「私、あそこがいいですっ! ちょうど空いてますよね?」
彩音が指差した方は、信司の隣だった。たしかに開いているけれど、彩音みたいに可愛い子が隣に居ては勉強に集中できない。―――、まぁ、もともと集中していないのだけれどそれにしても…と信司は思った。
『というか、なんで学校にいるんだよ! だいたい、歳がちがうのに同じクラスっておかしいだろ!』
「あぁ、そこでいい。じゃぁホームルームは終わりだ。」
最後は半ば投げやりという風にホームルームは終わった。いつものことだ。
「信司君、よろしくね」
「よろしくじゃないでしょ。なんでここにいるの? ていうか、歳が…っ」
「細かいことは気にしないのっ! もっと、信司君と居たいからに決まってるじゃないの」
「冗談言わないでよ。一緒に居た方が都合がいいってことでしょ」
「違うもんっ」
「いいよいいよ…ていうか、そんなに感情豊かだったっけ?」
「信司君こそ、そんな口調だったっけ?」
「あれだよ、心の持ちようっていうやつだよ」
「私だってそうだもん。」
信司君。なんて呼ばれているもんだから、信司と彩音の周りにはいつの間にやら人だかりが出来ていた。信司に質問を浴びせる声。それらをほとんどと言っていいほど無視し、その後会話を続け授業を受けた。
そして、あっという間に約束の時間となった。
―――放課後・野原―――
「神様ぁ? 来ましたよー」
「おい、ひざまずくとかしなくていいの?」
「言ったでしょ?私達の神様は気軽な人だって」
「そういうもんなの?」
「神様って言うのはそういうもんよ」
彩音は携帯の履歴をチェックしている。神様からのメールは昨日を最後に途絶えている。
そして、しばらく待っていると…
一筋の光が射してきた。
その光は、あまりにも眩しく目が痛くなるほどだった。
「来たよ。神様」
信司は目を見開き、まばゆいばかりの光を見つめた。すると、中に人影が見える。
あれが神様だろうか。現れた人には金色の翼が生えていて、髪は金髪。長身の女性だ。
顔立ちも整っていて非常に綺麗。
「やぁ、君が天使と人間のハーフかい?」
「は、はい!」
「そう固くなることはないよ…信司君、といったね」
「はいっ」
「彩音から話しは聞いているよ。能力をすぐ覚え、応用させてあの炎舞の天使を退却させたそうじゃないか。」
「恐縮です。」
「そんな君にちょっとしたテストをしますっ」
神様は今までで一番軽い口調で宣言した。信司は、一瞬戸惑った。信司はテストが苦手だ。もちろんなんのテストかはわからないが、テストが苦手。テストという言葉そのものに苦手意識があるのだ。
「まぁ、テストと言ってもね君が普段受けているのとはまるで違う…そうだね、今から魔人を倒に行ってもらいたい。」
「魔人。ですか? いきなり実践?」
「まぁ、一番雑魚いやつにするから」
「わかりました。」
「やるかい? 受かったら、彩音のパートナーね♪」
「はいっ!やりますっ!」
彩音のパートナー。その言葉に感化されたということは、誰にも言えない。
スピード更新っ!笑
ウーノも地味に更新っ
休日だからねそれくらいしないと笑