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神殺しのダイス・マキア ~最弱ギャンブラー、命をチップに傲慢な理を物理で粉砕する~  作者: kiro


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イカサマ師の探りと、鋼の相乗効果(シナジー)



「死ね、極東の王」


鋼王カルマが無機質な声で指を鳴らした瞬間。玉座の間を構成するあらゆる『鋼』が、数万の凶刃となって俺の全身に襲いかかった。


「ッ……!」


俺は【1の目】で質量をゼロにし、紙一重で無数の刃の嵐を掻い潜る。


だが、カルマの放つ刃はただの物理攻撃ではない。空中で幾度も軌道を変え、まるで意思を持っているかのように俺の死角を正確に抉ってくる。


「ガハッ……!」


回避しきれなかった鋼の刃が、俺の脇腹と太ももを深く切り裂いた。


「統ッ!!」


鎖に繋がれたセリアの悲痛な叫びが響く中、俺は血を吐きながら床を転がり、カルマを鋭く睨みつけた。


「……ハァ、ハァ……。一つ聞かせろ、鉄クズ野郎」


俺はウロボロスの超再生で強引に止血しながら、荒い息を吐いた。


「下の階にいた数千の自動人形オートマタ。……あの異常な数の不死身の軍隊を創り出しながら、この玉座の金属まで完璧に支配してやがる。テメェ、【6】の権能をいくつ隠し持ってんだ? せめて格下のルーキーへのハンデとして、手札の枚数くらい教えろよ」


俺が血まみれの顔でニヤリとカマをかけると、カルマは表情一つ変えずに嗤った。


「ほう。我を過大評価しているのか、それともシステムの理を過小評価しているのか。……極東の王よ、我の持つ【6】の権能は『鍛冶神ヘファイストス』の一つのみだ。あの自動人形どもは、青銅の巨人【タロス】から奪った、【3】の階位の権能に過ぎん」


「【3】だぁ……? 嘘つけ。そんな低階位の能力で、数千の軍隊なんて作れるわけねえだろ」


俺が眉をひそめると、カルマの足元からドロドロに溶けた鋼が数秒で精巧な兵士の形を成し、そこに赤い単眼の光(命)が宿った。


「本来、【3】のタロス単体では数十体のゴーレムに命を吹き込むのが限界だ。……だが、我には『金属絶対支配』たる【6】の権能がある」


カルマは無機質な瞳で俺を見下ろした。


「【6】の権能で、数千の兵士の『器(金属)』を一瞬で大量生産し、【3】の権能でその器に『命令いのち』を吹き込む。……能力同士の完全なる相乗効果シナジーだ。この二つの権能が組み合わさった時、我は単騎にして『国を落とす軍隊』そのものとなる」


(……冗談じゃねえ。権能を掛け合わせて、チートコードを作ってやがる)


俺は奥歯を噛み締めた。


能力の底上げによる無尽蔵の軍隊と、玉座の間すべての金属を支配する絶対的なアドバンテージ。まともにやり合えば、俺の魔力が先に尽きる。


「だったら、本体のテメェを直接叩き潰すまでだ!」


俺は足元の石畳を全力で蹴り飛ばし、カルマの視界を塞ぐように大量の瓦礫を巻き上げた。


そのまま瓦礫に隠れて死角に回り込み、質量をゼロにして気配を絶った状態から、カルマの首元へ黄金の炎を纏った拳を振り下ろす。


イカサマ師の十八番。ブラフ(目眩まし)と奇襲のからめ手だ。


だが。

ガキィィィィンッ!!!!


「……なッ!?」


俺の拳は、カルマの首に届く数センチ手前で、極薄の『見えない鋼の糸』の結界に阻まれていた。


「無駄だ。我には死角など存在しない。空気中に漂う微小な砂鉄の動きで、貴様の質量変化のブラフなど完全に読み切っている」


カルマの鋼の腕が、容赦なく俺の腹部を殴り飛ばす。


「ゴハァッ……!!」


「それに、我は鍛冶神の代償で『感覚』を失っている。痛みも、熱さも、恐怖も感じない。……貴様のような、ブラフと心理戦で相手の感情を揺さぶる三流のイカサマ師にとって、我は『最悪の相性』だ」


吹き飛ばされた俺の四肢を、床から伸びた鋼の杭が深々と貫き、壁へと縫い付けた。


「ガ、ァァァァッ……!!」


「統!! やめて、お願いだからもうやめてッ!!」


セリアが鎖を引きちぎらんばかりに暴れ、涙を流して絶叫する。


だが、俺は身動き一つ取れない。超再生が追いつかないほどの出血と魔力の枯渇。薄れゆく意識の中で、カルマの冷酷な声が響いた。


「チェックメイトだ、極東の王。……さあ白銀よ、我が足元に這いつくばり、この男の命乞いをしろ」


カルマがセリアに迫る。自分のせいで、愛する王が殺される。その絶望に、セリアの心がポキリと折れかけた。


——その時だった。


朦朧とする意識の中で、俺は奇妙な感覚に囚われていた。


全身の血が抜け、魔力も完全に空っぽになっているはずなのに。


俺の胸の最も深い奥底で、何かが『どくン』と冷たく脈打ったのだ。

(……なんだ、この違和感は?)


熱もない。痛みもない。ただひたすらに重く、息が詰まるような、暗くて冷たい『湿気』。


(この途方もない重圧と、海の底みたいな気配……まさか、原初神の……?)


記憶の底から、あの悍ましい夜の出来事がフラッシュバックする。


海の原初神ミリアから強引に奪われた『誓いの口付け』。あいつはただ俺の唇を奪っただけじゃなかった。俺の魂の最深部に、神の概念という名の強烈な『力(深淵のひとしずく)』を植え付けていたのだ。


(……人の盤面に、勝手に変なカード(異物)を混ぜていきやがって)


本来なら、こんな正体不明の手札(カード)、ギャンブラーの矜持として使うつもりはなかった。


だが、今は手札が足りない。愛する日常テーブルが、目の前でひっくり返されようとしている。


(……だったら、使わせてもらうぜ。この盤面をひっくり返せるなら、海の底からだろうとジョーカーを引きずり出してやる)


俺は、薄れゆく意識の底で、その悍ましい深淵の力に向かって自ら手を伸ばし。


——ガキンッ! と。その重い封印を、力任せに引きちぎった。

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