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神殺しのダイス・マキア ~最弱ギャンブラー、命をチップに傲慢な理を物理で粉砕する~  作者: kiro


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覇王の布石と、気高き白銀の拒絶



欧州の最深部。深い霧に包まれた古城の奥で、一人の男が巨大なチェス盤を見下ろしていた。


最古の神殺し【覇王・アーサー】。


「……極東に現れたイレギュラー。そして、千年の眠りから目覚めつつある『猟犬(処刑神)』どもか」


アーサーは、チェス盤の上の『白銀のナイト』の駒を指先で弾き倒した。


「盤面が騒がしくなってきたな。……鋼王カルマには、極東の騎士を奪い、あのイカサマ師の力量を測る『捨て駒』になってもらおう。ついでに、目障りな氷王レヴィを削るための手配も済ませた」


アーサーは、薄暗い玉座で冷酷な笑みを深める。


すべては彼の掌の上だ。若い王たちを争わせ、互いの手札を削り合わせる。彼にとって他の王は、自身の『絶対的な支配』を完成させるための盤面の遊戯に過ぎなかった。


東欧、カルパティア山脈。


かつて緑豊かだったその霊峰は、【鋼王・カルマ】の権能によって、草木一本生えない「冷たい鋼鉄の城」へと作り変えられていた。


城の最上階。


太い鋼の鎖によって壁に両手両足を拘束されたセリアは、荒い息を吐きながら、玉座に座る男を鋭く睨みつけていた。


「……素晴らしい。我が城のどのコレクションよりも美しく、そして強靭な白銀だ」


鋼王カルマは、一切の感情を感じさせない無機質な足音を響かせ、セリアの目の前まで歩み寄った。


彼の肉体は、ギリシャ神話の【鍛冶と炎の神・ヘファイストス】を殺し、金属絶対支配という【6】の権能を得たことによる『重すぎる代償』を払っていた。


首から下がすでに『冷たい鋼』へと変貌しており、人間としての温もりも、触覚も、痛覚すらも永遠に失っているのだ。


何も感じない鋼の心臓。だからこそ彼は、自分が永遠に手に入れられない「美しさ」や「生きた騎士の温もり」を異常なまでに渇望し、コレクションとして収集している。


「大人しく我が鎖に繋がれろ、白銀。我は痛みも温もりも感じぬが、美しき武器を愛でる審美眼だけは失っていない」


カルマは、鋼の指先を伸ばし、セリアの白い頬に触れようとした。


「——気安く触らないでください!」


バチィィィィィンッ!!!


セリアは拘束された状態のまま、残された魔力を振り絞って『北欧の雷光』を放ち、カルマの鋼の腕を激しく弾き飛ばした。


「……ほう?」


「私は、極東の王・御堂統の『第一騎士』です。……どれだけ鎖で繋ごうと、私の心はあの温かい食卓に置いてきました。あなたのような冷たい鉄の塊に、屈するつもりは毛頭ありません」


セリアは、翡翠の瞳に強烈な意志の光を宿して睨み返した。


「……フッ、ハハハハハ!」


カルマは弾かれた自身の腕を見つめ、不気味に肩を揺らして笑った。


「良いぞ。ただの飾り物ではなく、その牙の鋭さこそが我が求めた『極上の武器』だ。だが安心しろ。我は騎士の端くれだ。……心まで我が物になっていない女を、力ずくで手籠めにするような無粋な真似はせん」


カルマはセリアに背を向け、残酷な宣言を下した。


「貴様が慕う『極東の最弱王』の首を刎ね、その無惨な屍をこの玉座の前に転がしてやろう。その時、貴様は己の無力を呪い、自ら我に『従属』を懇願するはずだ」


「……統は、負けません。絶対に」


「果たしてそうかな?」


カルマの背後に、巨大な『2つの神威』が立ち昇った。


「我は【鍛冶神ヘファイストス】の他に、もう一つ、ギリシャ神話の青銅の巨人【タロス】を殺して奪った【3】の権能を有している」


カルマの足元の鋼が蠢き、無数の『鋼の自動人形オートマタ』が次々と形作られていく。


「タロスの権能『無尽蔵の鋼鉄兵士』。我は一人にして、決して死なない強固な『軍隊』そのもの。……極東の王がここへ来れば、我が軍勢でそのちっぽけなテーブルをすり潰してやろう」


かくして、極東のイカサマ師と鋼の王による、全面戦争の幕が切って落とされた。

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