表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神殺しのダイス・マキア ~最弱ギャンブラー、命をチップに傲慢な理を物理で粉砕する~  作者: kiro


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/122

配られなかった手札と、夜明けのカチコミ




深夜の自室。


窓枠に足をかけ、すべてを背負い込んで夜の闇へ消えようとしていたセリアは、背後からの声にビクッと肩を震わせた。


「……す、統? なぜ、起きて……」


「お前の嘘の隠し方が、絶望的に下手くそだったからだよ。ポンコツエリート騎士」


ジャージ姿の俺は、ポケットに両手を突っ込んだまま、ゆっくりと部屋の中へ足を踏み入れた。


セリアの背中から無造作に奪い取った羊皮紙。


そこに記されていたのは、【鋼王・カルマ】からの脅迫状だった。


『極東の白銀の騎士を引き渡せ。さもなくば西東京市を火の海にする』


「なるほどな。……俺のシマを焼かれたくなきゃ、お前が大人しく向こうのコレクションになれってことか」


俺が羊皮紙を読み上げると、セリアは耐えきれなくなったようにポロポロと涙をこぼし、床に膝をついた。


「……ごめんなさい、統。私がいたら、またあなたの日常が壊されてしまう」


セリアは震える両手で顔を覆った。


「統はもう、十分ボロボロじゃないですか。これ以上、私なんかのために王を敵に回す理由なんてどこにも……!」


「理由ならあるぞ」


俺は羊皮紙をゴミ箱に放り捨て、膝をつくセリアの頭にポンと手を乗せた。


「セリア。俺はギャンブラーだ。……自分のテーブルで、手持ちのチップ(手札)を他人にタダでくれてやるような真似は絶対にしない。お前が俺にメシを作って、くだらないことで笑う。それ全部ひっくるめて、俺が死守したい『俺の所有物モン』なんだよ」


俺がニヤリと笑うと、セリアは子供のように声を上げて泣き出し、俺の胸に強く飛び込んできた。


騒ぎを聞きつけ、紅刃と雅が部屋に駆け込んでくる。


「……で、統。どうする気ですか? 相手は鋼王ですよ。また命懸けの戦いになることは必至です。」


雅が妖刀の柄に手をかけながら尋ねる。


「決まってんだろ」


俺は立ち上がり、首をポキポキと鳴らした。


「向こうがこの西東京市に攻めてくるのを待つ気はねえ。シマを焼かれる前に、こっちから敵の懐に『カチコミ』に行くぞ」


八咫烏の諜報によれば、鋼王カルマの尖兵である修道騎士たちが、東京湾の巨大な廃倉庫群に『極東の前線基地』を構築し始めているという。


「だが統、隣の女帝様は中国に帰ってていねえぞ。手札が足りねえんじゃないか?」


紅刃の言う通り、翠蓮は先の『千年の粛清』の情報を組織に共有し、自国での防衛と対策を練るために一時帰還していた。


だが、俺は鼻を鳴らして笑い飛ばした。


「だからなんだ。配られなかったカードをぼやいて勝負を降りるような三流じゃねえよ、俺は。……今テーブルにある手札だけで、あの泥棒猫の顔面をぶん殴る」


俺はジャージのジッパーを首まで上げ、口角を獰猛に吊り上げた。


「夜明けと同時に、その廃倉庫を丸ごとぶっ潰す。俺の第一騎士を脅した落とし前、きっちり払わせてやる」


数時間後。夜明けの東京湾。


海風が吹きすさぶ巨大な廃倉庫群に、俺たちは正面から堂々と足を踏み入れた。


「止まれ! 貴様ら、ここをどこだと……ギャァァァァッ!?」


見張りの武装した修道騎士たちを、紅刃の爆炎と雅の妖刀が一切の容赦なく吹き飛ばしていく。


俺も【1の目】で質量を操作しながら、シャオとの特訓で得た泥臭いインファイトで敵の陣形を崩し、セリアが雷光で俺の背中を守る。


極東の王と騎士たちによる強襲は、敵の前線基地をたった数分で半壊状態へと追い込んでいた。


「……おかしいな」


だが、コンテナの山の上で周囲を見渡した俺は、イカサマ師としての『直感』が強烈な警鐘を鳴らすのを感じていた。


敵の抵抗が、あまりにもアッサリしすぎている。まるで、俺たちがここに『自分から飛び込んでくるのを待っていた』ような……完全に開け放たれた裏口バックドア


その時だった。


『——よくぞ自ら足を運んでくれた、愚かな極東の王よ』


廃倉庫の空間全体から、金属が擦れ合うようなひどく耳障りな声が響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ