屍王の隠し札と、破滅の足音
「バ、バカなッ! 最高位の権能を、反動もなしに連発するなど、神の器(肉体)が持つはずが……ッ!」
ゼインが悲鳴を上げながら、腐敗の壁を展開して戦車の突進を防ごうとする。
だが、デメリットを完全に克服した俺の『無限戦車』は止まらない。
右腕が爆ぜては治り、治っては殴る。狂気的な連続攻撃の前に、ゼインの誇るアンデッドの軍勢はただのチリと化し、彼が120年かけて築き上げた防壁が次々と粉砕されていく。
崖の上では、レヴィが立ち上がって「ブラボー!」と惜しみない拍手を送っていた。
「ハァ……ハァ……。これで、チェックメイトだ」
俺は息を切らしながらも、ゼインを祭壇の端まで追い詰めた。
あと一発、戦車を叩き込めば、この気味の悪い六王を完全に盤面から退場させることができる。
だが。
追い詰められたはずのゼインは、突如として不気味な笑い声を漏らし始めた。
「……ククッ、フハハハハハッ! 素晴らしいぞ、新米。まさか私に『これ』を使わせる者が現れるとはな」
「……負け惜しみか?」
「いいや。私を、ただの『死体と毒を操る程度の底の浅い王』だと勘違いしている君への、教育だよ」
ゼインが、自身の胸ぐらを強く掴み、バリッと音を立てて自らの皮膚を引き裂いた。
その胸の奥、心臓の位置に、不気味に蠢く「漆黒のサイコロの刻印」が刻まれていた。
俺の持つアレスやウロボロスの刻印とは全く違う、禍々しく、底知れない悪意の塊。
『イヴ! なんだあれは!』
俺がインカム越しに叫ぶが、イヴの声も焦燥に満ちていた。
『分かりません! 魔術協会のデータベースにも、ゼインのあの権能の記録は一切存在しません! 統くん、下がって!!』
「遅い。私の真の力は、誰にも見せずに120年間、この胸の奥で温め続けてきたのだからな」
ゼインが、その漆黒の刻印に魔力を流し込んだ。
「——神判行使。【6の目】・『魂の略奪者』」
その瞬間、俺の『不死の右腕』が、目に見えない何かに「ガブリ」と喰いちぎられたような激痛に襲われた。
「ガ、アァァァァァァァッ!!?」
右腕が、再生しない。
ウロボロスの不死性が、ゼインの未知の権能の前に、完全に沈黙させられたのだ。
俺の背筋に、本物の『死の悪寒』が走った。




