最弱の横取り(キルスティール)
眼下では、120年の王・屍王ゼインが、再生力を失った蛇神ウロボロスに向けてトドメの『極大腐敗槍』を振りかぶっていた。
セリアと紅刃が村人たちを逃がすために派手に暴れているおかげで、ゼインの意識は完全にそちらへ向いている。
俺は廃教会の屋根から、左手で数トンの石の十字架(※【1】の権能で質量ゼロ状態)を抱え、音もなく飛び降りた。
風切り音すら消した完全なステルス。神と六王の死角からの、決死のダイブ。
「120年の悲願、ここで成就する! 消え失せろ、蛇神!!」
ゼインが腐敗の槍を投擲した、まさにそのコンマ一秒前。
「——悪いな、屍王。その経験値、俺がいただくぜ!」
「なッ!? 貴様、どこから……ッ!」
俺は空中で、ゼインの放った腐敗の槍の側面に、自身の靴底を叩きつけた。
「権能解放!! 槍の質量、ゼロ!!」
ゼインの放った必殺の槍が、俺の蹴りによって質量を失い、羽のように軽く軌道を逸らされて明後日の方向へと飛んでいく。
そして俺は、ガラ空きになったウロボロスの巨大な頭上(神核の真上)へと到達し、抱えていた石の十字架を真っ直ぐに叩き落とした。
「——権能解除! さらに逆位置! 【特大質量】ッ!!」
ゼロだった十字架が、俺の魔力によって「数十トン」の極大質量へとバグめいた変化を遂げる。
ズドゴォォォォォォンッ!!!
「ギ、ギャァァァァァァァァッ!!?」
ゼインの猛毒で瀕死になっていたウロボロスの頭部が、数十トンの十字架の物理的な圧殺によって、トマトのように無惨にひしゃげた。
神核が砕け散る乾いた音が響き、巨大な蛇神の肉体が、光の粒子となって崩壊していく。
「あ……あ……?」
ゼインが、信じられないものを見るように目を見開いた。
神が消滅する。俺の手によって。
その瞬間、パチンと世界が静止した。




