紅蓮と白銀の陽動作戦
「オラァァァァッ!! 燃えカスになれ、骨董品どもッ!!」
紅刃の咆哮と共に、彼女の両腕から放たれたマグマのような『獣神の爆炎爪』が、アンデッドの軍勢を数十体まとめて灰燼に帰した。
「我が一撃、神の理を断つ——【迅雷・白夜】!!」
同時に、セリアの白銀の雷撃が邪教徒たちの陣地を正確に撃ち抜き、村人たちを縛り付けていた呪いの鎖を次々と破壊していく。
「ヒィィッ! 侵入者だ! 村人たちが逃げていくぞ!」
邪教徒たちがパニックに陥り、儀式の陣形が完全に崩壊した。
「何者だ!? 僕の、120年かけた美しい儀式を邪魔するゴミはッ!」
ゼインが激怒し、自身の軍勢の半分を紅刃とセリアの方へ差し向ける。
「アルテアの残党か? いや、魔術協会の犬か……! どちらにせよ、あの女たちを毒の沼に沈めろ!!」
完全にヘイト(敵視)が二人に向いた。
紅刃の爆炎とセリアの雷光は、暗い谷底でこれ以上ないほど目立つ「極上の囮」だった。彼女たちはアンデッドの波を押し返しながら、村人たちを谷の外へと誘導していく。
「アタシたちが全部引き受けてやる! 早くやれ、統ッ!!」
遠くで紅刃が叫ぶ声が聞こえた。
ゼインの意識は、完全にウロボロスと、暴れ回る二人のヒロインに二分されていた。
俺の存在に気づいている者は、この死の谷に誰一人としていない。
「……リーチだ」
俺は廃教会の屋根の上で、崩れかかっていた巨大な『石造りの十字架』に左手で触れた。
【1】の権能を起動し、その数トンの十字架の質量を「ゼロ」にして、左手一本で軽々と持ち上げる。
眼下では、ウロボロスの再生力がついに限界を迎え、ゼインがトドメの一撃である『極大の腐敗槍』を上空に生成していた。
「さあ、泥棒の時間だぜ、屍王さんよ」
右腕の使えない最弱の王は、質量ゼロの巨大十字架を構え、神と六王の死角から、完璧なタイミングでの『ラストヒット強奪』に向けて音もなく跳躍した。




