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ダイス・マキア  作者: kiro


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34/82

閉ざされた村と、屍王の影



数時間後。ヨーロッパの辺境、深い山々に囲まれた死の谷。


俺たちは崖の上から、眼下に広がる邪教の村を見下ろしていた。


谷底は濃密な瘴気しょうきに覆われ、腐敗した死体の臭いが鼻を突く。


村の中心には血で描かれた巨大な魔法陣が赤黒く発光し、その中央から、山よりも巨大な『二つの頭を持つ腐肉のウロボロス』が、ズルリ、ズルリと現世へと這い出そうとしていた。


そして、その蛇神を待ち構えるように、無数のアンデッドの軍勢が陣形を組んでいる。


「見えたよ。あれが歴120年の六王……『屍王・ゼイン』だ」


レヴィが指差した先。骸骨の玉座に座り、不気味な緑色の毒のオーラを纏った、痩せこけた男の姿があった。


『ギシャァァァァァァッ!!』


ウロボロスが産声を上げると同時に、ゼインが指揮杖を振るう。


アンデッドの軍勢が一斉に神へ群がり、ゼイン自身も強烈な『腐敗の毒槍』を次々とウロボロスに叩き込み始めた。


神の肉体が腐り落ちるが、周囲の村人たちから吸い上げた生命力によって、瞬時に新しい肉体が『超再生』していく。ゼインの毒と、ウロボロスの再生の削り合い。まさにレイドバトルの真っ最中だ。


「さて、僕の役目はここまでだ」


レヴィは崖の上に、どこから出したのか優雅なパラソルとビーチチェアを広げ、紅茶を飲み始めた。


「言っただろう? 僕はあくまでパトロン。手を出せばゼインと全面戦争になる。君が神のトドメを奪う瞬間を、ここから特等席で観戦させてもらうよ。死なないようにね」


「……性格悪すぎだろ、あの300年」


俺は呆れながらも、眼下の戦場を睨みつけた。


「統。どうやってあの神に近づく? 下はアンデッドの海だ。右腕が使えないオマエじゃ、数秒で骨にされるぞ」


紅刃が真剣な顔で問う。

「だから、『隠れんぼ(ステルス)』をするんだよ」

俺は左手で自身の胸を叩いた。


「俺の【1】(ウェイト・ダウン)で、俺自身の『質量』を極限までゼロに近づける。質量がなければ、足音は鳴らない。空気を押し退ける風切り音も、地面に残る足跡も、すべて『ゼロ』になる」


物理法則を無視した、完全無音のゼロ・ステルス。


「俺がゼインの死角を抜けて神の懐に潜り込む。お前らは、派手に暴れてゼインの目を俺から逸らせ。……村人たちの鎖をぶっ壊すのも頼んだぞ」


「承知しました。我が雷光で、邪悪なる死者の軍勢を浄化しましょう」


セリアが白銀の刀を抜き放つ。


「死なせねえよ、誰一人な」


俺たちは崖を蹴り、死の谷へと静かに滑り降りた。

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