表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダイス・マキア  作者: kiro


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/91

歪な食卓と、平穏の味


「お静かに。ここは病室ですよ、騒がしいお姫様たち」

ヒールの音を響かせて入ってきたイヴが、カルテを見ながら呆れたようにため息をついた。


「統くん。結論から言いますと、アルテアの地下要塞『庭』は機能停止。構成員たちは四散し、オウルは事実上の壊滅状態です。アルテア自身も致命傷を負い、当分は表舞台に出てこられないでしょう」


「……そうか。じゃあ、俺の勝ちらしいな」


「ええ。ただし、あなたの右腕も限界です。砕け散った『機巧神の籠手』の修復と、あなた自身の魔術回路の回復には、また数ヶ月の時間を要します」


手札の最強カードである【6】が、再び完全に封じられた。


だが、あの150年の王の鼻っ柱をへし折ってやったのだ。安い代償だ。 


「まあいい。……帰るぞ、お前ら。母さんの飯が食いたい」


数日後。俺は無事に退院し、西東京市の自宅へと帰還した。


「……で?」


玄関のドアを開けた瞬間、そこには腕を組んで仁王立ちする幼馴染、あおいの姿があった。 


「スウェーデンからの留学生セリアの次は、赤い髪のヤンキー(紅刃)が『遠い親戚の居候』として転がり込んできたって? ……統、あんた本気で頭おかしくなったの!?」


「いや、これは親戚っていうか、その……ボディガード?」


「警察呼びますよ!?」


葵の怒声が西東京市の平和な住宅街に響き渡る。

セリアが「私が正妻ですが」と余計なことを言い、紅刃が「アタシの方が戦闘力高いから第一夫人だろ!」と応戦し、葵が完全にパニックを起こして卒倒しかける。

地獄のようなカオス。だが、命を奪い合う『ダイス・マキア』に比べれば、天国のようなドタバタ劇だ。


その日の夜。


御堂家の食卓には、母さんが作ったハンバーグや唐揚げが所狭しと並んでいた。


「ほら紅刃ちゃん、いっぱい食べなさいねー。うちの息子が迷惑かけてない?」


「え、あ、はい……! いただきます……っ」


紅刃は、フォークを握る手を微かに震わせていた。


『庭』での食事は、栄養ブロックを水で流し込むだけの「生存のための作業」だった。誰かと食卓を囲み、温かい料理を分け合い、笑いながら食べる。そんな「当たり前の平穏」は、彼女の17年間の人生に一度も存在しなかったのだ。


「おい、ストーカー女。俺の唐揚げ勝手に食うなよ」


「うるさい、早い者勝ちだろ、ハズレ枠」


紅刃は口いっぱいに唐揚げを頬張りながら、不意に、ボロボロと涙をこぼした。


「……おいしい。こんなに……おいしい飯、初めて、食った……」


「紅刃……」


「アタシ、絶対に……この場所を守る。何があっても……っ」


彼女の流した涙は、もう恐怖や絶望の涙ではない。


俺は黙って自分の皿の唐揚げを一つ、彼女の皿に放り投げた。この歪で騒がしい日常は、俺だけでなく、彼女にとってもかけがえのない『テリトリー』になったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ