激怒の王と、反逆の三位一体
「……僕の、完璧な玉座に……泥を塗ったね、ゴミ屑どもが……ッ!!」
地下要塞『庭』の最下層。
俺の『質量バグ』によって計算を狂わされ、無様に吹き飛ばされたアルテアの顔は、先ほどまでの「余裕の王」から、屈辱に歪む夜叉へと変貌していた。
「150年だぞ! この僕が、ぽっと出のハズレ枠の小細工ごときにッ!」
アルテアが両腕を天に掲げた瞬間、空間の軋みが臨界点を突破した。
先ほどまでの、俺の動きを予測してピンポイントで潰しにくる「最適解の重力」ではない。闘技場全体を無差別に圧殺する、純粋で巨大な『暴力の嵐』だ。
ゴゴゴゴゴォォォッ!!
アルテアの周囲に、真っ黒な『超重力の球体』が複数顕現し、周囲の瓦礫や鋼鉄の壁をメキメキと吸い寄せ、粉砕していく。
「統! ご無事ですか!」
セリアが雷速のステップで落石を弾きながら、俺と紅刃の元へ合流した。
「無事じゃねえよ、全身骨折一歩手前だ。……だが、あの金髪野郎、ついにキレて『雑』になった。的がデカいなら、ブチ破る隙はある」
「……アタシが行く。アタシの炎で、あの重力の壁をこじ開ける」
紅刃が、血に濡れた顔で前に出た。彼女の両腕が、マグマのような爆炎を纏った獣の爪へと変貌する。
「やめろ紅刃! オマエの【4】じゃ、あの密度の重力には届かない!」
俺が制止するが、紅刃は振り返らずに笑った。
「分かってるよ。アタシ一人じゃ、六王には傷一つつけられない。……だから、統。オマエのイカサマを通すための『道』を、アタシとセリアで作ってやる」
紅刃が地面を蹴る。同時に、セリアも白銀の刀を構えて並走した。
「消し飛べ、不敬なる者どもッ!!」
アルテアが黒い重力球を二人に放つ。触れれば一瞬で肉塊となる絶対の死。
「アタシの炎を舐めんじゃねええええッ!!」
紅刃は重力球そのものを破壊するのではなく、その「周囲の空気」を超高温の炎で爆発的に膨張させた。熱膨張による強烈な上昇気流が、重力球の軌道をほんの数センチだけ上にズラす。
その極小の隙間を縫って、セリアの落雷がアルテアの足元の地面を粉砕した。
「小賢しいッ! だが、僕の『絶対斥力』の鎧には通じない!」
アルテアの身体を覆う見えない重力の鎧が、二人の炎と雷を完全に弾き返す。やはり、格が違いすぎる。二人は凄まじい反発力で後方へ吹き飛ばされた。
だが、アルテアの絶対防壁が二人の攻撃を弾くために「出力」を外に向けた、そのコンマ一秒。
「——よくやった、お前ら!!」
吹き飛ぶ二人の間をすり抜け、俺はすでに【1】の権能で体重をゼロにし、音速を超えるスピードでアルテアの真正面に肉薄していた。
「なッ……!?」
「これで最後だ……。俺の全魔力、全存在を賭ける!!」
俺の右腕の『機巧神の籠手』が、限界を知らせる危険なアラート音を鳴らし、真っ赤に焼け焦げるほどの熱を放つ。
俺は、アルテアの絶対防壁の「中心」——たった一点のみを対象に取り、権能を限界突破させた。
「——神判行使!! 【6の目・戦車】の概念出力!!」
籠手に軍神の『蹂躙』の概念を宿す。
「からの、逆位置!! 【特大質量】ッ!!」




