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ダイス・マキア  作者: kiro


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22/84

砕け散る奇策と、血に塗れた意地



アルテアの冷酷な青い瞳が、俺の眼球の数センチ先にある。


圧倒的な死の匂い。


だが、俺は最強のイカサマ師だ。盤面がひっくり返されても、最後のチップを握りしめている限り、ゲームは終わらない。


「……傲慢なのは、アンタだろ、金髪野郎……ッ」

俺は血まみれの口元を歪め、アルテアの白スーツに、わざと自身の口から溢れた『血』を吐きかけた。


ベットリと赤い血が付着する。


俺は原初神エレボスの腕を吹き飛ばした時と同じ、起死回生のイカサマを起動した。


「——権能解放!! 逆位置リバース!! 俺の血の質量を……」


「——『限界まで重くして、僕を物理的に縫い留める』。だろう?」


俺の言葉を遮り、アルテアが冷たく言い放った。


「なっ……」 


アルテアは自身のスーツに付着した俺の血に対し、瞬時に「極小の無重力マイクロ・ゼロ・グラビティ空間」を展開した。


俺が質量を数万トンに爆増させた『血の錨』は、アルテアの身体に触れることなく、無重力場に隔離されたまま、彼が指で弾くと同時にボトリと床へ落ちた。


ズドォォォォンッ!!


たった数十滴の血が落ちただけで、床のコンクリートが巨大なクレーターのように陥没する。

だが、アルテア自身には傷一つ、重力の乱れ一つ起きていない。


「原初神を退けた君の戦闘データ。それを僕が事前に解析していないとでも思ったか?」


アルテアは、俺の髪を掴んだまま、つまらなそうにため息をついた。


「君は本当に、底の浅い手品師だ。同じタネが二度も王に通じるわけがないだろう」


ドガァッ!!


アルテアが俺の身体を床に叩きつけ、そのまま俺の背中の上に足を乗せた。


「出力500倍。潰れろ」


メキッ、ミシィィィッ!!


「ガッ……アァァァァァァァァッ!!?」


全身の骨が、一斉に断末魔の悲鳴を上げる。


500倍の重力。息を吐くことすらできず、眼球の毛細血管が弾け、視界が真っ赤に染まる。


『機巧神の籠手』が限界を知らせるけたたましいアラート音を鳴らしているが、俺は指一本動かすことができない。


「統ぁぁぁぁぁっ!!」


紅刃の喉が裂けるような悲鳴と、セリアが這いずってこちらへ向かおうとする音が遠く聞こえる。


「さて、処刑メインイベントの時間だ。新参の王よ、泥の中で這いつくばって、この裏切り者のコアが砕かれるのを特等席で見ているといい」

アルテアは俺を踏みつけたまま、十字架の紅刃へ向けて右手をかざした。


終わった。


奇策も、特訓も、ブラフも、すべてが150年の歴史という巨大な壁の前に粉砕された。


これが、本物の六王の力。


意識が黒い波に飲み込まれそうになる。

——だが。


俺の、血と泥に塗れた眼光は、まだ死んでいなかった。

(……見つけたぜ、アルテア)


俺は、全身の骨が砕ける激痛の中で、ニィッと犬歯を剥き出しにして笑った。


この圧倒的な蹂躙の中で、俺はずっと探していたのだ。


相手が序盤から一切手を抜かず、全手札を容赦なく切ってきたからこそ見えた、アルテアの

『150年の歴史の中で生まれた、たった一つの致命的なバグ』。


勝率1%の、最後の特大ベットの準備が整った。

「……ゲームは、ここからだ」


血まみれの王の意地が、絶望の底で静かに反逆の牙を研いでいた。

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