盤上の蹂躙と、無慈悲な王
「児戯……上等だ。なら、この力技はどうだッ!!」
俺は白銀の籠手に莫大な魔力を流し込んだ。籠手が神の代償を肩代わりし、銀色の排熱光を噴き出す。
「——神判行使!! 【6の目】!!」
俺の背後に、黄金の巨大な『万軍の戦車』が顕現する。
さらに【1】の権能で戦車の質量をゼロにし、無限大の速度へ加速させるイカサマ・コンボ。アルテアに向かって、光の槍と化した戦車が突進する。
「……学習しないね。直線的な質量攻撃など、重力の最も得意とする的だ」
アルテアは両手を軽く広げた。
「事象圧縮・【黒の地平】」
瞬間、突進していた黄金の戦車の先頭から、まるで「見えない巨大な壁」に激突したように、黄金の装甲がメキメキとひしゃげ始めた。
アルテアは戦車を止めたのではない。戦車が存在する『空間の座標』そのものを、超重力で極限まで圧縮したのだ。
ガガガガガッ!!
数万トンの質量を誇る神の戦車が、アルテアの数メートル前で完全に停止させられ、そのまま空き缶のようにクシャクシャに圧縮されていく。
「嘘だろ……アレスの戦車が、正面から力負け……ッ!」
俺が驚愕した隙を、150年の歴戦の王が見逃すはずがなかった。
「余所見をするな」
声は、俺の耳元から聞こえた。
「——ッ!?」
アルテアが、重力を利用した超高速移動で俺の懐に潜り込んでいた。手首を掴まれる。
「【6】の権能。確かに強力だが、君は『大盾』と『戦車』という手札しか持っていない。引き出しが少なすぎるんだよ」
ドゴォッ!!
アルテアの重力を乗せた膝蹴りが、俺の腹部にめり込む。籠手で防御する暇すらない、完璧な近接格闘術。内臓が破裂しそうな激痛に、俺の意識が白く飛ぶ。
「ガハッ……あ、ぁ……」
俺は床に転がり、血溜まりの中で痙攣した。
白銀の籠手からは危険な排熱の煙が上がっている。腕は吹き飛んでいないが、俺自身の肉体が、すでに限界を超えていた。
「統!! やめて、もうやめてッ!!」
十字架に縛り付けられた紅刃が、血の涙を流して絶叫する。
「アタシはいい! ボスの言う通り、ここで死ぬから……! だからもう、統をいじめないでくれ……ッ!」
「いじめる? 違うな、これは教育だ」
アルテアは倒れる俺の髪を掴み、強引に顔を持ち上げた。
「『王』を名乗るには、君はあまりにも弱く、浅い。奇策一つで僕を出し抜けると思ったその傲慢さの代償を、ここで払ってもらおうか」




