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ダイス・マキア  作者: kiro


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死線上のイカサマと、反逆の賽(ダイス)

「消し飛べ」


アレスが大上段から黄金の大剣を振り下ろす。闘技場を真っ二つに割る、回避不能の神の斬撃。


統はその場から動かなかった。いや、動けなかった。 


迫り来る死の刃。それが統の脳天を割る直前、彼は握りしめていた「折れた刀の刃先」を自らの胸の前に掲げ、残された全魔力を一点に集中させた。


——権能解放:【1のウェイト・ダウン】。 対象、己の肉体と折れた刃。


統の体重と刃の重量が「ゼロ」になる。


直後、アレスの大剣が統の足元の地面を粉砕した。その凄まじい「衝撃波」が、重量ゼロとなった統の身体を、大砲の弾のように上方——アレスの懐へとカチ上げた。


「なにっ!?」


神の意表を突いた、衝撃波を利用した自爆覚悟の跳躍。

統はアレスの胸元、絶対防御『不落の大盾』の要である装甲の隙間に向かって、折れた刃を突き出した。


「届……けぇぇぇッ!!」


だが、アレスは冷酷に嗤った。


「愚か者が。我が防御アイギスは概念だ。いかなる奇襲であろうと、貫くことは叶わん!」


刃先が神の胸に触れる直前、見えない黄金の障壁が展開される。最弱の統の筋力では、到底破れない神の壁。


「……知ってるよ。だから、重くするんだ」


統はニヤリと血まみれの口角を上げた。

権能【解除】。


「ゼロ」にしていた己の体重と刃の重量を、元に戻す。

それだけではない。超音速で跳ね上げられた「運動エネルギー」が乗った状態での、急激な重量の復活。さらに統は、限界を超えて【1】の権能の「逆位置リバース」——無理やり対象を「重く」する禁じ手を、自身の右腕にのみ行使した。


超加速からの、極限の質量攻撃。


最弱の能力を極め抜いた統が放つ、物理法則を無視した擬似的な「隕石落下メテオ・ストライク」。 


「なっ——!?」


「神様、物理の授業はサボってたか……ッ!」  


ドゴォォォォン!!


神の概念防御が、一点に集中した規格外の運動エネルギーに耐えきれず、硝子のように砕け散る。


少女の折れた退魔の刃が、アレスの分厚い胸肉を裂き、その奥にある『神核コア』を深々と貫いた。


「馬鹿、な……! この我、が……ただの人間に……!」


アレスの巨体が痙攣し、光の粒子となって崩れ去っていく。


同時に、統も限界を迎えた。右腕の筋肉はズタズタに裂け、全身の骨が悲鳴を上げている。彼はそのまま血溜まりの中へ崩れ落ちた。


   * * *


パチン、と指を鳴らす音がして、世界が静止した。

統の意識は肉体を離れ、星空に浮かぶ巨大なルーレットテーブルの前——精神世界カジノへと飛ばされていた。


『信じられません。まさか、あの軍神を最弱の能力一つで討ち取るとは』


ディーラーの姿をした運命の女神が、驚愕の表情で一つのサイコロを差し出す。 


『さあ、勝者よ。運命のダイスを振りなさい』

どうせまた【1】か【2】だ。統は痛む幽体の腕を動かし、適当にサイコロを放り投げた。


カラン、カラン……。

サイコロが止まる。その表面に刻まれていたのは、赤く輝く**【6】**の数字だった。



『……っ!? お、おめでとうございます、新たなる王よ!』

女神の声が震える。


『軍神アレスの絶対権能、【万軍の戦車】および【不落の大盾】の簒奪を確認。これより、貴方の霊格を特別指定枠【六王シックス】へと引き上げます——』


   * * *


現実世界。

ミトス・ドメインが解除され、春の風が吹く京都の街並みへと戻っていく中、瀕死で倒れ伏す統の全身から、アレスから奪い取った黄金のオーラが爆発的に噴き出した。裂けた右腕の傷が、神の力によって強制的に塞がっていく。


「嘘……あなた、自力で神を……まさか【6】を……?」

目を覚ました銀髪の少女——セリアが、信じられないものを見る目で統を見上げる。命の恩人が、世界に数人しかいない厄災クラスのバケモノに成り果てた瞬間だった。 


名も知らぬ二人の視線が交差する。

だが、互いに名乗り合うよりも早く。


背後の空間が、ガラスが割れるようにパリンと砕けた。

『——へぇ。新しい【六王】が産まれたって言うから来てみれば。なんだ、ただの満身創痍のガキじゃないか』

燃え盛る炎を纏いながら、空間の裂け目から一人の女が歩み出てくる。


ダイスの目は【4】。他の神殺しを狩る凶悪な【簒奪者ハンター派】の狂戦士、紅刃こうじんだった。

『その産まれたてで熱々の【6】の権能……アタシのサイコロの肥やしにさせてもらうよ!』


アレスとの死闘を終えたばかりで、立っているのがやっとの少年。名前も知らない見知らぬ少女。そして手に入れたばかりの、代償も分からない未知の最強権能。


最弱の力で日常をやり過ごしてきた少年の、春休みの小旅行は終わりを告げた。世界を敵に回す殺し合い(ダイス・マキア)が、今、強制的に幕を開けたのだ。

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