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ダイス・マキア  作者: kiro


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盤上のブラフと、王の挑発



「イヴ、オウルのアジトの場所は分かるか!」

俺が怒鳴ると、イヴは静かに頷き、ホログラムの地図を空中に投影した。西東京市の地下深く、広大なジオフロントに築かれた要塞『ガーデン』。


「統! すぐに出撃しましょう。私の命に代えても、血路を開きます!」


セリアが白銀の刀を構え、悲壮な決意で扉に向かおうとする。


だが、俺は彼女の肩を左手で強く掴み、引き留めた。


「待て。今すぐ乗り込んで、どうやってあの重力の化けアルテアを倒す? 俺の右腕は丸焦げ、お前も俺も、あいつの指先一つで肉塊にされて終わりだ」


「それは……ッ! しかし、このままでは紅刃が処刑されてしまいます!」


「だから、頭を使うんだ。ハズレ枠にはハズレ枠の戦い方がある」


俺は大きく深呼吸をし、震える足の震えを無理やり止めた。そして、イヴに向き直る。


「イヴ。アンタの魔術ネットワークで、あの金髪野郎に『直接通信』を繋いでくれ」


「……正気ですか? 居場所を逆探知されるリスクがあります」


「構わねえ。交渉ブラフの時間だ」


数分後。


セーフハウスの空間が歪み、魔術による立体映像ホログラムが展開された。


映し出されたのは、豪奢な玉座に深く腰掛ける白スーツの男——アルテア。そしてその足元で、重力の手枷に繋がれ、床に這いつくばる紅刃の姿だった。


「オマエ……! なんで通信なんか! 逃げろって言っただろ!」


ホログラム越しの紅刃が、血相を変えて叫ぶ。

アルテアは面白そうに青い瞳を細め、ワイングラスを傾けた。


『自ら死神に電話をかけてくるとはね。命乞いなら聞かないよ、御堂統』


「命乞いなんかするかよ。取引だ、アルテア」

俺は冷や汗を隠し、極めて傲慢な、生意気な新参の王としての態度を装って言い放った。


「そのストーカー女の公開処刑……『1ヶ月後』まで延期しろ。俺の右腕の【6】が全快するまで待て。その時、俺が正面からお前の玉座をぶっ壊してやる」


俺の要求に、アルテアは数秒キョトンとした後——腹を抱えて笑い出した。


『クックック……アハハハハ! 傑作だ。王になっても、君はただのガキだね。交渉というのは、互いにカードを持っている時に成立するものだ』

アルテアの瞳が、絶対零度に冷える。


『僕がなぜ、アリが鎧を着るのを待たなければならない? 僕は今すぐに君の居場所を特定し、指先一つでこの女ごと君たちを圧殺できる。……君には、僕を待たせるだけの『価値』がない』


一蹴。当然の反応だ。


だが、俺は最強のイカサマ師だ。相手が乗ってこないなら、盤面ごと蹴り飛ばす。


「価値がない、ね。……なるほどな。やっぱりただの『ビビり』かよ、アンタ」


『……なんだと?』


アルテアのワイングラスにピキリと亀裂が走った。


ホログラム越しだというのに、セーフハウスの空気が軋み、俺の膝がガクガクと震えそうになる。だが、俺はニヤリと挑発的な笑みを浮かべた。


「150年も引きこもって王様気取ってるくせに。原初神エレボスにビビって逃げ回ってたアンタが、俺のことは焦って潰しに来る。……なんでか教えてやろうか?」


俺は、自分の黒く炭化した右腕を画面の向こうのアルテアに見せつけた。


「俺が、アンタの逃げた『原初神』に一撃入れて、腕を吹き飛ばしたからだ。俺の【6】の権能が全快して、万全の状態でやり合ったら……歴150年の自分が、新米のガキに『負けるかもしれない』って、心の底でビビり散らかしてるんだろ!」


「統……やめろ、それ以上は……!」


紅刃が絶望的な顔で制止するが、俺は止まらない。


「違うって言うなら、証明してみせろよ! 俺の右腕が治る1ヶ月後……俺の最強のイカサマを、アンタの150年の歴史で正面から叩き潰してみろ! それができねえなら、アンタの王冠はただのメッキだ!」


静寂。


痛いほどの沈黙が降りた。


アルテアの周囲の空間が、怒りの重力で黒く歪み、玉座の肘掛けが粉々に砕け散る。


一線を越えた。殺される。俺の生存本能が警鐘を鳴らす。


だが——数秒の圧倒的な殺意の後。アルテアの顔に、凶悪で、そして酷く歪んだ「歓喜の笑み」が浮かんだ。


『……いいだろう』


アルテアの声は、地獄の底から響くように低かった。


『王の逆鱗に触れたこと、後悔させてやる。1ヶ月だ。君の右腕が治る1ヶ月後、西東京市の地下『ガーデン』にて、この裏切り者の処刑を行う。……逃げずに来いよ、生意気な新米』


プツン、と通信が切れる。


ホログラムが消滅した瞬間、俺は糸が切れたようにその場にへたり込み、大量の冷や汗を吐き出しながらゼェゼェと肩で息をした。


「……はぁ、はぁっ……。心臓、止まるかと思った……」


「統! 大丈夫ですか!」


「見事な交渉ブラフです。歴の長い王ほど、『格』や『プライド』を重んじる。それを逆手に取った完璧な挑発でしたね」


イヴが感心したように拍手を送る。


「……これで、時間は稼いだ。タイムリミットは1ヶ月」


俺は震える左手を強く握りしめた。


俺のハズレ能力【1】と、封印された【6】。それらを使って、1ヶ月で「重力支配」という最強の理不尽を攻略するイカサマを完成させなければならない。


紅刃を奪還するための、絶望的で泥臭いカウントダウンが始まった。

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