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神殺しのダイス・マキア ~最弱ギャンブラー、命をチップに傲慢な理を物理で粉砕する~  作者: kiro


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淘汰の抱擁と、非情なる最終ベット(オールイン)



「——極東一刀流、絶技」


灼熱のアフリカ・サバンナが、雅の抜刀と共に一瞬、静寂に包まれた。


次の瞬間、世界から音が消え、第3の執行者が振り下ろした「無へ還す多腕の理」そのものが、漆黒と白金のオーラを纏った雅の刃によって、物理的に『両断』されて左右に分かたれた。


「すばる様がこじ開けた道だ、死に物狂いでぶち込めェ!!」


俺の号令と同時。極東のバケモノたちが、一切の躊躇なく最初から最大火力のチップを、雅が切り開いた「理の亀裂」へと叩きつけた。


「オォォォォォォォォッ!!!」


獣王ガルドが、淘汰の理が割れた一瞬の隙を突き、無防備になった執行者の巨大な胴体へと砲弾のように突っ込む。彼の拳は、空間そのものをすり潰すほどの質量を持って、異形の黄金の砂の身体を粉砕した。


「露払いは、俺様が引き受けるぜェ!!」


剣王レオンが、半分になったクレイモアを膂力だけで振り回し、割れた多腕の断面をさらにズタズタに切り刻む。


さらに、輸送機で眠っていた紅刃が、大剣に刻まれた【6の目】を脈動させながら、シベリアで見せた白金の炎とは違う、彼女自身の魂から湧き出る『空白をも燃やす紅蓮の炎』を纏って特攻した。


「テメェ……アタシの統を……殺そうとしただろォッ!!」


紅刃の一撃が、執行者の身体を概念ごと焼き焦がしていく。


白チップで限界突破した雅。そして、レヴィと紅刃を起点とする、極東陣営の蹂躙(総攻撃)。いかなる王であろうと、この一斉掃射の前では一瞬で塵へと還るはずだった。

だが。


ズォォォォォォォォォンッ……!!!


执行者の身体が、ガルドの拳や紅刃の炎によって粉砕された直後。


爆散した黄金の砂と枯れた大樹の破片が、重力に逆らって再び収束し、何事もなかったかのように、元通りの悍ましい多腕の姿へと『再顕現』した。


「……嘘、だろ」


ガルドが、血の気が引いた顔で呟いた。


破壊されたのではない。彼らの攻撃は、執行者の「多腕による淘汰の理」に触れた瞬間、その切っ先から概念ごと「無へ還され」、ただの徒労として霧散していたのだ。


ギィィィィィィィィィンッ……!!!


执行者の顔——巨大なブラックホールのような空洞が、悍ましい金属質の鐘の音を響かせ、ギョロリと「神殺しの理」を持つ雅、レヴィ、紅刃をロックオンした。


次の瞬間、執行者の背後から、先ほどとは比較にならない数の、数千、数万という不可視の『多腕』が、戦場全体を覆い尽くすように顕現した。

それは、神の理を盗んだ咎人を、一片の例外もなく刈り取るための『大いなる淘汰の抱擁』だった。


「ぐ、あああああッ!!」


「雅殿!!」


レヴィの絶対零度の氷が、不可視の腕に触れた瞬間、概念ごと「無へ還され」て霧散する。レヴィは、自らの理を削り取られる激痛に血を吐いて膝をついた。


紅刃の紅蓮の炎も、多腕の抱擁によって窒息させられ、彼女の全身の包帯が概念ごと抉り取られて血が噴き出す。


最前線で執行者の腕を両断し続けていた雅も、漆黒と白金のオーラが、無数の不可視の腕に絡め取られ、徐々に薄くなり始めていた。


「……す、ばる様……っ。私の剣が……理に、呑まれて……っ」


タイムリミット。雅にベットした【白き配当レイズ・アップ】の効果時間が、切れる寸前だった。



極東陣営、壊滅寸前。


セリアの盾も、翠蓮の攻撃も、執行者の淘汰の前では何の意味も持たなかった。


俺も全身の傷口から血を流し、荒い息を吐きながら、ポケットの中で赤黒く脈打つ【星のブラックチップ】を握りしめた。


(……このままじゃ、全員ここで『無』になる。……ギャンブルのテーブルにおいて、最も勝率の高い手札は……)


俺は、寿命を削ってブラックチップを使うことすら、この執行者の前では無駄であることを悟っていた。相手は、原初の炎すら淘汰する、概念の天敵だ。


ならば。イカサマ師たる俺が、最後に切るべき非情な手札は、一つしかなかった。


「……雅!!」


俺の叫びに、白金のオーラが消えかかっている雅が、死地の中で振り返った。


「は、はい、すばる様……」


「白チップの時間は終わった。……最後のイカサマだ。テメェの刃を、一滴残らず俺に預けろ」


「……え?」


俺は、血に染まった不敵な笑みを浮かべ、执行者の「ブラックホール(顔)」の真正面へ、一切の防御を捨てて堂々と歩み出た。


「おい、クソ胴元(名もなき神)の掃除屋サマよ!! ……神殺しの理を盗んだエラーを、最優先で消去するシステムなんだろ、お前は!?」


俺は、ウロボロスの傷跡が残る左手を高く掲げ、自らの魔力を全開にして、戦場全体に響き渡る声で叫んだ。


「だったら、ここにいるバケモノどもよりも……この盤面のルールを根底からひっくり返す『最悪のイカサマ師(俺)』を、真っ先に消し去らなきゃ、終わらないぜェッ!!」


それは、俺自身を「デコイ」とする、最凶のハッタリだった。


「……統、お前ッ!?」


「すばる君!! それは駄目です!!」


レヴィや翠蓮の悲鳴のような制止の声。

だが。


ギョロリ。


执行者の顔——巨大なブラックホールの空洞が、俺の魔力に反応し、雅やレヴィから離れて、完全に『俺だけ』をロックオンした。


神殺しキラーにとって、最も危険なバグ。俺の存在そのものが、执行者の「淘汰の理」を磁石のように吸い寄せたのだ。


「……ハッ。交渉成立ベット・コンプリートだ」


俺の目の前で、执行者の山脈のような巨大な腕が、無造作に、俺の存在そのものを「初期化(淘汰)」しようと、振り下ろされる。


死王や幻王が、虫けらのように消えた、あの一撃。


だが、俺は逃げない。ポケットの中で、白でも黒でもない、あの『青き払い戻し』のチップを弄りながら。


「……今だァ、雅ァァァァッ!!! 俺の背中を狙って、テメェの魂ごと、理(執行者)をブチ抜いて灰にしろォッ!!!」


俺の放った非情なる全賭け(オールイン)。

俺の後方から。


白チップの効果が切れ、漆黒と白金のオーラを失った雅が。けれど、誰よりも研ぎ澄まされた彼女自身の『忠義の剣』を構えて、地を這うような咆哮と共に、執行者に無防備な俺の背中——その先の執行者のコアへと向けて、神速で突っ込んだ。


「おおおおおおおオオオォォォッ!!!」



雅の一撃が、俺の身体をすり抜け、その先にあった执行者の「ブラックホールの顔」を、真正面から貫いた。


ピキピキピキピキ……ッ。


瞬間。世界が、物理的に砕け散るような音を立てた。


執行者の「無へ還す理」の中心部を、神殺しのイカサマ師(統)に全神経を集中させていた無防備な隙を突かれ、雅の魂の一撃が完璧に破壊したのだ。


パァァァァァァァァンッ……!!!


第3の執行者は、断末魔の音すらない。


イエローストーンの個体と同じく、美しい黄金の砂の粉となって、灼熱のアフリカの空で爆散した。


そして、その黄金の砂が、戦場に静かに降り注いだ、その時だった。


「……っ」


俺は、血を吐いて膝から崩れ落ちそうになった雅を抱きとめるよりも先に。


执行者が消滅した空白の空間から、かつてないほどに重く、禍々しい『淘汰の気配』が、俺に向かって集まっていくのを感じた。


神を殺した勝利報酬(払い戻し)だ。


今回は現実世界で、俺自身を「囮」にして執行者を完全に『破産バスト』させた功績に対する、特別な払い戻しが顕現しようとしていた。


光の粒子が、俺の掌に向かって収束していく。

カチンッ、と。


俺の掌の上に、赤熱するサイコロの「3の目」が刻まれた、悍ましい赤黒いカジノチップ——【赤き払い戻し(払い戻し:淘汰の配当)】が顕現した。


チップに触れた瞬間。


俺の脳内に、第3の執行者が持っていた『無数の不可視の腕』と『概念淘汰の理』が、俺の新たなイカサマの手札として上書きされるのを感じた。


『——新たな権能:【淘汰の抱擁デリート・ハグ】』


「……ハッ。上等だ。相手の権能を、不可視の腕で『なかったこと』にする、新しいカードを手に入れちまった」


俺は不敵に笑い、手の中の赤きチップを握りしめた。


だが、その勝利の代償はあまりにも重かった。

雅は白チップの反動で完全に気絶し、紅刃やガルド、レオンは戦闘不能。


俺も、执行者の囮となったことで、ウロボロスの傷跡が残る魂の奥底をごっそりと削り取られ、寿命が風前の灯火となっている。


『——統。お疲れのところ申し訳ありません』


イヴの無機質な報告が、静まり返った氷のサバンナに響き渡る。


『残る二つの胎動……南米大陸、オセアニア大陸の執行者たちが、第3柱の消滅を検知。……こちらの動きに呼応して、完全に【同時顕現】しました』


イヴのモニターに、残る二つの巨大な赤黒い光点が、脈打っている。


神話の粛清は、まだ中盤に過ぎない。


赤き砂漠を真っ白に染め上げた氷の世界で、極東の狂ったイカサマ師は、新たな絶望の手札チップを握りしめ、血に染まった口元を拭って不敵に嗤う。


「……残るは二つ。……神様、テメェの手札、全部身ぐるみ剥がして破産バストさせてやる」


加速する大いなる淘汰。次なる死地、南米大陸のテーブルへ向けて。


満身創痍の極東陣営は、血みどろのサバイバルの手綱をさらに強く握りしめるのだった。

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