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光の女神ポースと闇の神スコタディ信仰の世界

卒業パーティーで空気を読まない令嬢達

作者: 宝月 蓮

 グリムアーリア王国の魔法学園ではこの日、卒業パーティーが開催されていた。

 会場中央にはこの世界に降り立った光の女神ポースと闇の神スコタディの像があり、祈りを捧げてから卒業パーティーが始まる。

 皆、仲間と学園での思い出を語り合ったり、料理や音楽を楽しんだりしている。


 そんな中、グリムアーリア王国王太子フール・グリムアーリアの声が響き渡る。


「アップレン公爵令嬢セレスティーナ! 貴様は身分を振り(かざ)しここにいるロッテン男爵令嬢ブリアナに陰湿ないじめを繰り返していた! そんな女は未来の王妃に相応(ふさわ)しくない! セレスティーナ、貴様とは婚約破棄だ! そして新たにここにいる心優しいブリアナを俺の妻として迎える!」


 フールはブリアナの肩を抱いて勝ち誇ったような表情である。

 庇護欲そそる容姿のブリアナだが、彼女もセレスティーナに勝ち誇ったような表情を向けていた。

 婚約破棄を告げられ断罪されているセレスティーナは、動じることなく毅然とした様子である。


 談笑していた者達はしんと静まり返り、戸惑いながらフールの方へ注目する。それがある意味当然の反応だ。


 しかし、フールの声など聞こえていないかのように振る舞う令嬢達がいた。


「ねえ三人共、このお料理とても美味しいわよ。赤ワインで柔らかく煮込まれた牛肉、口に入れた瞬間とろけるわ」

 子爵令嬢ローズ・ストロベリナである。

 料理に舌鼓を打ち、この世で一番幸せであるかのような表情だ。

「まあ、舌が肥えているローズさんが言うなら間違いないわね。私達も食べましょう」

 ローズに続く令嬢は、リリー・メローナ。そしてヴァイオレット・チェリン、デイジー・グレーピアの二人も料理を楽しんでいる。

 ローズ達四人は全員幼い頃から仲が良い子爵令嬢だ。


「ねえ皆さん、こちらのカルパッチョも美味しいわ。レモンの酸味が爽やかよ」

 ローズは牛肉を食べていたかと思いきや、次はカルパッチョに手を伸ばしている。

「流石は一流シェフの料理ね」

「あ、ローズさん、ケーキもとても美味しそうよ。リリーさんもデイジーさんも一緒に取りに行きましょう」

「ヴァイオレットさんの言う通りだわ。カラフルで可愛らしいケーキばかりね」

 ローズ達四人は、王太子フールの発言など聞こえていないかのように楽しくはしゃいでいる。

 ローズ達四人の声はかなり目立っているのだ。


 フールは皆が見ている中、セレスティーナと婚約破棄をし新たにブリアナを未来の王妃として認めさせようとしていた。しかし、自身の声を無視して仲間内で楽しむローズ達の声は、フールにとって邪魔な雑音でしかない。


「おい、そこの四人!」

 フールは苛立ちを露わにしながらローズ達の元へ向かった。

「……王太子殿下、何でしょうか?」

 楽しんでいる最中を邪魔され、ローズは怪訝そうな表情である。

 リリー、ヴァイオレット、デイジーも困惑したように顔を見合わせた。

「今俺は大切なことを話している! お前達も黙って聞け!」

「嫌ですわ」

 ローズは即答した。

「なっ!」

「ちょっと貴女達、フール様に逆らうなんて不敬よ!」

 絶句して言い返せないフール。そんな彼の代わりにブリアナが不満を露わにする。

「学園では身分関係なく平等のはずですわ。それに、今は卒業パーティーです。私達卒業全員が主役なのに、どうして貴方達だけ目立とうとしているのです?」

 ローズは呆れながらため息をついていた。

「ローズさんの言う通りだと思います。私達はただ美味しいお料理を食べて、学園での思い出に浸りたいだけですのに」

 リリーはローズに加勢した。

「私達の楽しみをよく分からないことで邪魔しないでください」

「お料理が冷めてしまいますわ」

 ヴァイオレット、デイジーも不満を表情に出していた。


「貴様ら……! よくも俺の邪魔をしやがって……!」

 フールは怒りのままに、ローズ達に向かって風の魔力を暴走させる。

 魔力量の多いフールの攻撃を受けたら一溜まりもない。

 ローズ達は冷や汗をかいて身構える。


「そこまでです!」

 そこへ、凛とした声が響いたと共に、ローズ達四人の前に氷の結界が張られた。

「セレスティーナ様……!」

 ローズは自分達の目の前に庇うように立っているセレスティーナの姿を見て目を大きく見開いた。

 魔法で氷の結界を張ったのはもちろんセレスティーナ。彼女は水の魔力の持ち主で、魔力を応用して氷も操ることが出来る。


「王太子殿下、婚約破棄の件は承知いたしました。しかし(わたくし)がブリアナ様に対していじめを(おこな)った覚えはございません。婚約者のいる男性との距離感を気をつけるべきだと注意をしただけでございます。この件は父にも報告いたしますわ」

 セレスティーナの凛としたしなやかな声が響き渡る。

 そしてセレスティーナは会場にいる者達の方へ向く。

「皆様、せっかくのパーティーですのにお騒がせして申し訳ありません。ローズ様達が言ったように、このパーティーの主役は卒業生全員。それぞれ楽しめたらと存じますわ」

「セレスティーナ様……!」

 ローズはセレスティーナの美しい笑みに感激してしまう。

「まさか卒業パーティーでセレスティーナ様を間近で見られるなんて……!」

 リリーはセレスティーナを見てうっとりとした表情を浮かべていた。

「ああ、セレスティーナ様が眩しい」

「本当ですわね」

 ヴァイオレットとデイジーもセレスティーナを見て目を輝かせている。

 実はローズ達四人はセレスティーナに憧れているのだ。

 憧れの人物を目の前にして胸がいっぱいの四人である。

 フールやブリアナなど眼中になかった。


 その後、学園の騎士団によりフールとブリアナは無理矢理退場させられ卒業パーティーは再開した。

 ローズ達は憧れのセレスティーナと話が出来て大満足の卒業パーティーであった。


 ちなみに、フールはその後廃嫡され生涯幽閉が決まった。グリムアーリア王国現国王の歳の離れた弟である王弟が新たな王太子となるらしい。

 ブリアナも戒律の厳しい修道院へ行くことになり、生涯そこで慎ましく過ごすことが確定したそうだ。

 そしてローズ達が憧れているセレスティーナは、彼女よりも八つ年上の、王太子となった王弟と婚約することになった。

 フールの時とは違い、お互いを尊重し合える関係が築けているそうだ。

 卒業後、定期的に開催されるローズ達四人のお茶会では、セレスティーナの話題で盛り上がっていた。

読んでくださりありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
幽閉はやい なんて短く読める話だ
ローズ達が正しく、フール達が場違いだったと言う話。 そして場を理解しない愚か者が表舞台から退場するのは当然の結末。
我が道を行くローズ達と、凛としたセレスティーナ。 断罪劇場を蹴散らす展開が、楽しかったです♪(*ˊᵕˋ*)
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