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SEVEN~警視庁特務課~  作者: 桂木 京
第7話:破滅へのドライブ

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悔恨

悪夢のようなバスジャック事件から、一週間。


都心の喧騒を離れた静かな霊園に、特務課の面々と稲取の姿があった。


「……結局、みんなここに来るんだねぇ」


「まぁ、報告がてら、な」


北条の言葉に、稲取が短く応える。

一行が立っているのは、香川とその母親が眠る墓の前だった。


「無縁仏にならなくて良かった。お袋さんの墓には、昔……香川に連れてこられたことがあってな。少し早すぎはしたが……同じ墓に入れてやれて、本当に良かったよ」


他に身寄りのなかった香川の葬儀は、稲取が喪主として執り行った。

一課の若手からベテランまでが参列する中、稲取は終始涙を見せることなく、凛とした態度で「息子」を送り出したのだ。


「葬儀での稲取くんの姿、まるで本物のお父さんみたいだったよ」


北条が、ねぎらうように稲取の肩を叩く。


「そうか……。親より先に逝くバカ息子の葬儀だったからな、涙なんて出なかったんだろうさ」


稲取は照れ隠しのように鼻を鳴らしたが、その横顔には深い慈愛が刻まれていた。


「……さて、僕たちはそろそろお暇しようか。あまり長々と居座ってたら、『親子の会話』の時間が減っちゃうからね」


北条の合図で、一人ひとりが墓前に花を手向け、静かに手を合わせる。


「あぁ、そうだな。……テメェは最初から最後までムカつく野郎だったが、刑事としては見習うべきところもあった……と、少しだけ思ってるぜ」


最後に虎太郎がぶっきらぼうに声をかけ、背を向けた。


「……二人きりに、なっちまったな」


仲間たちが去り、墓前には稲取一人が残された。

冬の冷たい風が、線香の煙をさらっていく。


「なぁ、香川よ……。これは、現実なんだよな? お前、本当にこの下で……眠ってるんだよな……」


稲取はその場に崩れ落ちるように座り込むと、手にしていたコンビニ袋からワンカップの酒を二つ取り出した。


「ほら、お前の分だ」


二つの栓を開け、自分の分を一気に喉に流し込む。

安酒の刺激が、胸の奥に溜まった澱をかき乱す。


「馬鹿野郎……。俺は、こんな風にお前と飲みたかったわけじゃねぇ。俺は、お前と……」


葬儀の時から張り詰めていた糸が、ぷつりと切れた。

ずっと押し殺してきた感情が、決壊したダムのように溢れ出す。


「うっ……俺は……俺は……お前と『親子として』差し向かいで飲みたかったんだ……。こんな、石ころを相手にじゃなくて……!」


止めどなく涙が溢れ、アスファルトに黒いシミを作る。


「……ちくしょう! ちくしょう……!!」


やり場のない怒り、そして『息子』を喪った、えぐられるような悲しみ。

稲取は子供のように声を上げ、数分の間、香川の名を呼びながら泣き続けた。


霊園の入り口で足を止めた北条が、一度だけ振り返る。

遠くに見える、震える稲取の背中。

その姿は、北条の心の中に、今まで以上に熱く鋭い炎を灯した。


(今はしっかりと泣いておくといい。これからはきっと、立ち止まることすら許されない戦いが始まるからね……)


北条はコートの襟を立て、前を見据えた。

香川が遺した爆弾の手がかり。

そして、組織『神の国』の尻尾。

必ずその全てを暴き、白日の下に引きずり出す。


特務課の決意は、新宿の冬の空よりも冷たく、そして激しく燃え上がっていた。

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