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SEVEN~警視庁特務課~  作者: 桂木 京
第4話:命の価値

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北条の思惑②

警察側に対処の余地を与えない、Fの非情な宣告。

凶悪犯の釈放など国家の威信にかけて許されることではない。

だが、このまま沈黙を続ければ、銀行内の人質たちは一人ずつ、機械的に「処分」されていくことになる。

それもまた、警察として、そして人間として許されることではなかった。


「どうにか、攻勢に転じたいねぇ……」


北条が両手を組み、深く考え込む。

周囲を囲む警察車両。

一課のエースたちが四人も揃っていながら、この「密室」をこじ開ける決定打は未だ見つからない。


「うーん、どうする? 司ちゃん……」


北条は、無線を通じて特務課の司令塔に助けを求めた。


『……こんな時のための特務課。そうでしょう、北条さん?』


司の声に、狼狽の気配は微塵もなかった。

彼女はすでに、この三十分という短時間で、戦況を物理的に書き換えるための準備を終えていたのだ。


『北条さん。手元のモニターに映像を飛ばすわ』


「映像?」


『ええ。これを見れば、中の様子が分かるわ』


司の言葉と同時に、指揮車内のサブモニターがノイズと共に覚醒した。

映し出されたのは、本来なら鉄のシャッターに閉ざされ、闇に包まれているはずの銀行内部だった。


「……これ、銀行の窓口周辺か?」


「そう。防犯カメラの映像だけ、こっそりハッキングして見られるようにしたよ。内部の回線を直接叩いてるから、犯人がモニターをチェックしてても気づかないっしょ」


司に続き、悠真が自慢げに付け加える。


「すごいねぇ……。これで中の様子が「視える」。後手に回らなくて済むかもしれないよ」


北条はモニターを凝視した。

ロビーには、目隠しをされ、手足を拘束された人質たちが一塊になって震えている。

自力での脱出は絶望的だ。

そして、その前方――。


「……あー、あれが犯人だね。あれだけしっかりと見張られていると、何かしようとした瞬間に『ズドン』だ」


ライフルを構え、落ち着きなくフロアを徘徊する人影が一つ。

北条は忌々しげに舌打ちをした。

だが、その鋭い観察眼は、ある一点を見逃さなかった。


(……なんだか、違和感を感じるんだよねぇ)


モニターの中の犯人の身のこなし。

それはどう見ても、血気盛んな、あるいは焦燥を隠せない「若者」のそれだった。

電話越しに、深みのある敬語で知略のチェスを仕掛けてくる、あの『F』の落ち着き払った声とは、どうしても重ならない。


「相当なオジサマ声の若者……なんてね。笑えない冗談だ」


この謎は、早めに解明しておかなければならない。

北条の直感が警鐘を鳴らしている。

彼がこうした『引っ掛かり』を感じる時、それは常に事件の核心を貫く重要な鍵となっているからだ。


「さて……犯人が持っているあの銃火器さえ無力化できれば、一気に人質を解放できるのにねぇ。夕ちゃん、銀行の見取り図はあるかい?」


「え? えぇ……ここに」


秋吉から受け取った設計図を、北条は車内のデスクに広げた。

その指先が、銀行の構造と、防犯カメラの死角をなぞっていく。


「さぁ……一生懸命考えようか。この三十分を、彼らが後悔する三十分にするために」


北条の瞳に、交渉人の穏やかさではない、獲物を追いつめる「猟犬」の光が宿った。

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