表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SEVEN~警視庁特務課~  作者: 桂木 京
第1話:美しき犠牲者たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/28

検視結果

「死因は、薬物による中毒死だったッス。外傷はなし。傷痕は、右腕の正中静脈に注射痕がひとつだけ……。これは、シロウトが見てもまず気付かないレベルの職人技ッス」


司令室に検視報告を持ち込んだのは、特務課が信頼を寄せる解剖医・桜川雪だ。

『きちんとしていれば』誰もが振り返る美女なのだが、よれよれの白衣にボサボサの髪、顔を半分覆うような瓶底メガネが、彼女の「女」を完全に封印している。


「おー、雪ちゃん。お疲れさん! 頑張ったご褒美に、今度美味いもんでも食べに行こうよ」


北条がいつもの調子でからかうと、雪は耳まで真っ赤にして俯いた。


「い、いや……自分、仕事めっちゃ溜まってますから。……また今度ッス!」


「ざーんねん。じゃ、そのうち暇になったらね。……それで、肝心の『中身』は何だったんだい?」


北条の瞳が、ふっと刑事のそれに切り替わる。


「テトロドトキシン……っす」


「テトラ……なんだって? 呪文かよ」


横から報告書を覗き込んだ虎太郎が、慣れない単語に眉を寄せる。


「テトロドトキシン。フグ毒だよ、虎。……雪ちゃん、ホトケさんはフグでも当たったのかい?」


北条の問いに、雪は無機質な首振りで応えた。


「いえ……胃の内容物は、主にパンケーキっす。……おそらくパンケーキの専門店かどこかで犯人と接触し、その後に殺害された……というのが有力っすね。それと、もうひとつ」


雪が資料を捲る指が止まる。


「睡眠薬が出てます。眠らされて、抵抗できない状態でテトロドトキシンを流し込まれた……。殺害方法は極めて計画的で、冷酷っす」


「うーん、酷いことをするねぇ……」


北条が吐き出した溜息に、司令室の空気が重く沈む。


「……報告は以上ッス。自分、失礼するッス」


雪は足早に、逃げるように司令室を後にした。


「わざわざ睡眠薬を飲ませるってことは、顔見知りか、あるいは……。よし、被害者の身元、大急ぎで洗わなきゃな」


北条が動き出そうとした瞬間、正面の大型モニターに鮮やかな顔写真が映し出された。


「被害者は長島綾ながしま・あや、二十三歳。都内のショッピングモールでサービスカウンターに勤務していました」


志乃の淡々とした、しかし完璧な仕事に、北条が感嘆の声を漏らす。


「志乃ちゃん、相変わらず早業だねぇ。どうやって見つけたんだい?」


「ちょうど捜索願いが出ていたんです。同居している恋人から。二日経っても帰ってこないから、心配でたまらない、と」


「タイミングが良いのか悪いのか……。じゃあ、その彼氏さんに教えてあげなきゃいけないね。彼女に何が起きたのかを……」


北条の声には、やるせない響きが混じっていた。

一人の若者の日常が、毒物とカミソリによって無残に引き裂かれた事実。


「彼氏さんに連絡を取って。……それから、親御さんにも。会わせてあげよう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ