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SEVEN~警視庁特務課~  作者: 桂木 京
第3話:恨みの花火

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逮捕から数日……

中山の逮捕から三日後。

事件の熱が冷めやらぬ特務課の自動扉が、軽快な音を立てて開いた。


「やぁやぁ、みんな。すまないねぇ、長いこと休んでしまったよ」


特務課の頭脳、北条がようやく戦列に復帰した。


「北条さん!」


「もう大丈夫なんですかー?」


志乃と悠真が、待ってましたとばかりに北条のもとへ駆け寄る。


「うん、インフルエンザだったらしいね。嫌だねぇ、毎日三食きちんと食べて、おやつまで欠かさなかったのに……」


「食生活の問題じゃねぇだろ……」


突っ込む虎太郎を余所に、復帰した北条は相変わらず飄々としていた。

その視線が、デスクで報告書をまとめていた辰川へと向けられる。


「あ、辰川さん。今回の事件、大活躍だったんだって? テレビで見たよ」


「……なーにを言ってるんだ。最後はお前の根回しがあったからこそだろうが。ったく、どこまで食えねぇ男だよ、お前は」


辰川は苦笑しながら立ち上がり、北条と固く、熱い握手を交わした。


「で、どうだった? 僕の相棒は」


「あぁ。刑事としちゃあ、まだまだヒヨッコだが……。あいつは「良いもの」を持ってる。それは俺でも分かったぜ」


北条が虎太郎を辰川に預けた理由は、二つあった。

一つは、虎太郎の圧倒的な行動力と直感。

経験が浅いゆえに、警察という組織の悪しき風習や固定観念に縛られない彼の「嗅覚」が、膠着した事態を打破すると確信していたからだ。

事実、爆弾事件という巨大なヤマにおいて、各部署、さらには民間人の西尾までもが迅速に連携できたのは、虎太郎の「壁」を作らない熱意が各所を動かした結果だった。


そして、もう一つの理由は――。


「それにね。辰川さんと組めば、刑事としての経験値が一つ上がる。僕はそう踏んだのさ」


自分以外のベテラン、特に辰川のような「傷を知る刑事」の背中を見ることで、虎太郎の視野が広がることを期待していたのだ。


「どうだい、虎。勉強になったかい?」


北条の問いに、虎太郎は少しの間を置いてから、静かに、しかし力強く頷いた。


「あぁ。……犯人を捕まえることだけが刑事の目的じゃないってことを、教わったよ。犯人の背景、被害者の家族、そして平穏を脅かされる周辺の人たち……。正義を守るためには、そのすべてを見て、背負わなきゃならねぇんだな」


北条の願い通り、虎太郎は今回の事件を経て、一皮剥けた「刑事の顔」になっていた。

北条は満足そうな笑顔で、その成長を祝福するように目を細める。


「それでいい。平穏な日常が、ある日突然『事件』に変わる。僕たちはその境界線に立って、しっかり周りを見なきゃいけない。分かったね?」


「……あぁ」


北条はいつもの飄々とした調子に戻り、おどけて辰川の肩を叩いた。


「今度は僕も、辰川さんのパトロールに連れていってもらおうかなー」


「勘弁してくれ。お前まで連れ回したら、俺の寿命がいくつあっても足りやしねぇよ」


特務課に、明るい笑い声が響く。


「蠍」の残した不気味な影はまだ消えていない。

だが、特務課ならどんなに深い闇が訪れても、その中心で「光」を灯し続けるだろう。

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