虎太郎の奮闘
一方、風を切って疾走した虎太郎は、辰川の予測を上回る早さで目的地へと滑り込んでいた。
「……入り口近くのゴミ箱。ここだな」
指示通りの場所に、それはあった。
一見、何の変哲もない公園の風景。
だがその中には、十年前と同じ死神が潜んでいるはずだ。
虎太郎は周囲を見渡し、腹の底から声を張り上げた。
「警察だ!! 全員、今すぐ俺から離れろ! このゴミ箱の中に危険物が隠されている可能性がある。急げ!!」
なりふり構っている暇はない。
一秒の遅れが、ここにいる誰かの命を奪う。
だが、虎太郎の必死の形相とは裏腹に、周囲の反応は鈍かった。
「なにあれ? 撮影かなんか?」
「ドッキリじゃない? カメラどこだろ」
「ねぇ、どっかに芸能人いるかもよ」
スマホを向け、薄笑いを浮かべながら距離を詰めようとさえする群衆。
(ちっ……平和ボケした連中だ。こうなることは予想してたけどよ……!)
説得では間に合わない。
説明している間に針は進む。
虎太郎は焦燥を噛み殺し、最悪の選択を覚悟した。
「……司令、聞こえるか?」
無線を叩く。
『どうぞ、虎太郎くん』
「警官の応援を待ってる時間はねぇ。始末書でも謹慎でも、処分は後でいくらでも受けてやる!」
『……え?』
司が言葉の真意を問う暇もなかった。
「警察だと言ってるだろ!! 今すぐ、一歩でもいいからここから離れろ!! 指示に従わねぇ奴は、女子供だろうが容赦しねぇ。全員、公務執行妨害でしょっ引くぞ!!!」
警察手帳を高く掲げ、虎太郎は獣のごとき咆哮を上げた。
「警察……本物なの?」
「逮捕って……本気?」
鬼気迫る虎太郎の叫びに、ようやく人々が不安の色を見せ始めたその時だった。
「皆さん! この方の言っていることは真実です!!」
公園の管理人が、喉を鳴らしながら駆け寄り、拡声器で叫んだ。
「先ほど警視庁より緊急連絡が入りました! 公園内に爆発物の疑いありとのことです! 現場の刑事さんの指示に従い、直ちに避難してください!!」
「警視庁から……?」
「私が連絡を入れました。一人で吠えるより、二人で訴えた方が信憑性は増すでしょう?」
呆気にとられる虎太郎に、無機質な、しかし頼もしい志乃の声が届いた。
「助かったぜ、志乃さん。……さすが仕事が早い!」
管理人の言葉に、群衆は一気に雪崩となって散っていった。
数秒。
先ほどまでの喧騒が嘘のように、虎太郎の周囲に真空のような静寂が訪れる。
「思ったより時間がかかっちまったが……こいつか」
虎太郎は意を決し、ゴミ箱の蓋を跳ね上げた。
生ごみの臭いの中に、不釣り合いに鎮座する小型のジュラルミンケース。
規則正しく、冷徹に。
異形の金属箱は、死のカウントダウンを刻み続けていた。
「……見つけたぜ、死神さんよ」
虎太郎の瞳に、爆弾の警告灯が赤く反射した。
「あったぞ! 爆弾発見!!」
虎太郎の声が無線を震わせる。
『よーし、上出来だ。こっちの解除も今、完了した。俺は「次の現場」へ向かう。その爆弾は任せたぞ』
すぐさま返ってきた辰川の、あまりに淡々とした報告。
「解除したって……もうかよ!?」
『あぁ。勝手知ったる他人の家ってやつだ。俺にかかりゃ、こんな爆弾は玩具みたいなもんよ』
「……すげぇな」
爆弾処理のスペシャリスト。
その肩書きが伊達ではないことを、虎太郎は嫌というほど思い知らされた。
『ホラ、感心してる間にも死神の時計は進んでるぜ』
辰川の乾いた声が、虎太郎の思考を現実に引き戻す。
「あ、あぁ……。それで、この爆弾はどうやって解除すればいいんだ?」
『解除の必要はねぇ』
「……え?」
『そのまま持って走れ。そして近くの池に思い切り投げ込め。それでその公園の件は終わりだ』
あまりにも単純明快な、力業の処理。
だが、虎太郎はその意図を瞬時に理解した。
「あぁ……。だから、こっちの現場を俺に任せたのか。爆弾そのものの威力は、それほど大きくねぇんだな?」
『……ふっ、さすがは北条の愛弟子。察しがいい。その通りだ。専門技術を動員するほどの代物じゃない。だが、放置すれば確実に死傷者が出る。だからお前の「脚」を頼ったのさ』
「なるほど……。よし!! じゃあ早速、池にぶん投げてくる!!」
虎太郎はゴミ箱からジュラルミンケースを引っ張り出し、タイマーを確認した。
「残り七分。池までは、俺の足で五分弱……余裕だな」
爆弾を抱え、虎太郎は弾丸のごとく地を蹴った。
(ふざけやがって……。大勢を傷つけるこんなゴミを、ポンポン設置しやがって……!)
走りながら、腹の底から湧き上がる怒りを両足の推進力に変える。
早く、一秒でも早く、この忌々しい塊を視界から消し去りたい。
だが、視界に飛び込んできた「池」の光景に、虎太郎は息を呑んだ。
「……おいおい、嘘だろ!!」
『どうした、虎!』
辰川の無線に、虎太郎は絶叫を返した。
「池が……池が干上がってやがる! 水たまりみてぇだぞ!!」
『何!? そんなはずは……十年前はたっぷりと深さがあったはずだぞ!!』
辰川の動揺に重なるように、志乃の冷徹な声が割り込む。
『……志乃です。現在の公園状況を照合。今日は水草の刈り込み作業のため、池の水を八割方抜いているそうです……』
最悪のタイミング。
十年の歳月がもたらした、計算外の変数。
「ヤベェ……。この水位じゃ衝撃を抑えきれねぇ……爆発するぞ」
残り、四分。
『近くに他に水場はないのか!?』
「ここには池しかねぇよ!!」
『とにかく、人気のない方へ投げろ! このままじゃお前まで巻き込まれる。虎、早くそれを捨てろ!!』
辰川の叫びが無線を叩く。
しかし、虎太郎の視界には、避難しきれず遠巻きにこちらを見ている一般人の姿がまだ残っていた。
(今ここで投げれば、あいつらが死ぬ……!)
虎太郎の足が、止まらない。
捨てろと言われても、捨てられない。
爆弾を抱えたまま、虎太郎はさらに加速した。
「畜生!! どうしろっていうんだよ!!」
腕の中に抱えているのは、人生で初めて触れる本物の爆弾。
もし今、これが爆発したら。肉も骨も一瞬で飛散し、自分という存在がこの世から消える。
死の恐怖が、虎太郎の背筋を氷のように冷たく撫で上げた。
『待てよ……』
その時だった。
無線の向こうで、辰川の思考の歯車が噛み合う音がした。
『志乃ちゃん、その池の水が抜かれたのはいつだ?』
『はい……。今日の午前八時。今から約四時間前です』
『それなら――虎! 構わねぇ、そのまま池のど真ん中に爆弾をブチ込め!!』
「え!? でも、水がねぇんだぞ!?」
底に溜まった泥が虚しく陽を浴びているだけの池。
だが、辰川の返答はこれまでの飄々とした態度をかなぐり捨てた、烈火のごとき怒号だった。
『構わねぇから投げろ!! 死にたいのか!!』
虎太郎は反射的に身体を動かした。
渾身の力で、ジュラルミンケースを泥の底へと放り投げる。
タイマーの数字は、非情にも残り「一分」を切っていた。
爆弾は吸い込まれるように重い泥の中に埋まり、数秒後――。
ドォォン!! と、低く籠もった音が響いた。
「……え?」
高く泥が跳ね上がったものの、爆発の衝撃は池の淵を越えることすらなかった。
予想していたような大惨事とは程遠い、あまりに呆気ない幕引き。
「なんで……?」
唖然と立ち尽くす虎太郎の耳に、無線の向こうで辰川が安堵のため息を漏らすのが聞こえた。
『ふぅ……。危なかったな、虎』
「辰川さん……これ、どういうことだよ」
『簡単なことをテンパって忘れてたぜ。水よりも泥の方が粘度が高い。粘度が高い方が爆圧を封じ込め、被害を最小限に抑えられる。……結果的に、あの泥池に投げ込んだのは最善の選択だったってわけだ。虎、お手柄だぞ』
「お、おぅ……」
理屈はわかった。
だが、咄嗟にその判断が下せなかった自分への不甲斐なさが、じわりと胸を焼く。
北条や辰川。
この男たちは、どれほどの修羅場を潜れば、死の淵でこれほど冷静な最適解を導き出せるようになるのか。
(俺はまだ……ただの鉄砲玉だ)
言われるがまま走り、身体を張るだけ。
警官時代から何一つ成長していないのではないか。
「……まだまだだ。刑事としても、人間としても」
己の無力さを痛感しながらも、虎太郎は前を向いた。
まだ、事件は終わっていない。
「ご苦労だったな、虎。次は……」
辰川が十年前の記憶を辿り、次の座標を告げようとしたその時――志乃の鋭い声が割って入った。
『辰川さん!! 辰川さん宛てにメールが届きました!』
「俺宛てに……?」
『はい……。件名なし、送信元は偽装されています。……開いても?』
『あぁ。頼む』
志乃が本部の端末でメールを展開する。
直後、無線越しに彼女が息を呑む気配が伝わった。
「……え?」
「どうした、志乃」
『て、転送します……!!』
直後、辰川と虎太郎の端末が同時に着信を告げた。
ディスプレイに表示されたのは、十年前の惨劇を知る者なら、決して忘れることのできない「呪い」の言葉だった。
「な、何だと……?」
志乃から転送されたメールを読み、辰川の表情が急速に曇る。
―――『十年前の英雄よ。開幕の狼煙は見ていただけただろうか? ささやかな花火が上がらないところを見ると、きっと参加してくれたのだろうと思う。 しかし、十年前、英雄に救われた者ばかりではないということを、今回の「祭り」をもって知ってもらいたい。 今回の爆発は、こちらの意志で行わせてもらう。前回通りの順番で爆発が起こることはない。そして、同じ箇所に同じ爆弾が使われるかどうかも、私次第だ。そう解釈していただこう』―――
文面を確認した虎太郎の瞳にも、隠しきれない焦燥が浮かぶ。
「辰川さん……これじゃ、前回通りにはいかないってことだろ? 完全に後手に回らされるじゃねぇか!」
「あぁ……。悔しいが、そういうことになるな」
辰川がギリ……と奥歯を噛み締めた。
十年前の悪夢のすべて――場所、種類、順序は、その身を焼くような後悔と共に辰川の脳裏に焼き付いている。
だが、犯人はその「唯一の武器」である記憶を、嘲笑うかのように無効化した。
早期解除で時間を稼いでも、次の標的が分からなければ移動も準備もできない。
暗闇の中を、死神に手を引かれて歩かされるようなものだ。
「……相当、俺のことが嫌いらしいな」
辰川が力なく自嘲の笑みを漏らす。
爆弾を解除できるのは、自分だけ。
時間を割り出し、優先順位を見極められるのも、自分だけ。
一人で抱えるには、東京という街はあまりにも広すぎた。
(どこから手を付ければいい……。俺一人で、またあの惨劇を繰り返せっていうのか……)
絶望に呑まれかけた辰川の背中に、弾丸のような声が突き刺さった。
「本部!! 各部署に片っ端から応援要請だ! 辰川さん一人に背負わせるんじゃねぇ!」
虎太郎だった。
「辰川さんが全部解除しなきゃいけねぇなんてルールはねぇだろ! まずは人をかけて爆弾を片っ端から見つけ出す。その中から辰川さんじゃなきゃダメなヤバイやつに、辰川さんが向かえばいいんだ。大丈夫っすよ! 俺だって、今一つ片付けたんだからな!!」
その言葉が、凍りついていた本部をにわかに沸き立たせた。
『――そうね。虎太郎くんの言う通りよ。即座に各課へ応援要請、並びに全緊急配備を敷くわ』
司令官・司の声が、迷いを捨てた冷徹なトーンを取り戻す。
『辰川さん、その場でいい、十年前の爆弾のデータと設置場所をすべて共有サーバーに飛ばして。そこに優先的に捜査員を送り込む。犯人が「場所」を変えていないなら、見つけ出すのは警察の数の力よ!』
「……っ、了解した」
辰川の震える指先が、端末を叩く。
一人で戦っていた十年前とは違う。
前を走る熱い相棒と、後ろで支える冷静な仲間たちがいる。
「虎……。お前に倣って、俺も根性見せなきゃならねぇな」
「当たり前だろ! さあ、次の『花火』を止めに行くぞ!!」
絶望のカウントダウンを、特務課の反撃が上書きしようとしていた。
「お前ら……」
十年前、辰川が持っていなかったもの。
喉から手が出るほど欲して、それでも手に入らなかったもの。
それが今、無線のノイズとともにここにあった。
『頼れる仲間』。
自分より遥かに若く、青臭い。
だが、誰よりも熱く背中を預けられる連中が。
「辰川さん! 自分一人で抱え込もうとするなよ! これはあんたが主役のゲームじゃねぇ、事件なんだ! 俺たちがやるべきことは、犯人の挑発に乗ることじゃねぇだろ! 何の関係もねぇ人たちを守ること、それだけだろ!!」
虎太郎の怒号に近い訴えが、辰川の凍てついた心を真っ向から打ち砕く。
「……一人だと思い込んでいたのは、俺の傲慢だったみたいだな」
十年前、彼は『爆弾処理の天才』と持て囃されていた。
期待に応えようとするあまり、いつしか周囲を頼ることを忘れ、守るべき市民の顔よりも「爆弾をどう解体するか」というパズルにばかり執着していた。
「ありがとうよ、虎……。お前のおかげで、目が覚めたぜ」
「……え?」
「今までの俺は、一人だったんじゃない。ただ、仲間と背中を合わせることを忘れていただけだ」
孤独という殻を脱ぎ捨てた男の顔に、かつての天才の輝きではなく、真の刑事の凄みが宿る。
『辰川さん! 新たなメールを受信しました!』
不意に、志乃の緊迫した声が響く。
「……読んでくれ。全員で共有する」
『はい。――「次の花火は、港区台場のテレビ局。かつてない大花火を打ち上げてやろう」……とのことです!』
「台場のテレビ局だと……? 十年前には、そんなルートはなかったはずだ」
辰川が眉を潜める。
だが、その戸惑いを虎太郎の言葉が鮮やかに切り裂いた。
「もしかして……犯人は、辰川さんの『記憶』を逆手にとって遊んでるんじゃねぇか?」
「なんだと?」
「だって、解決済みの事件をなぞるだけじゃ、またあんたに解除されて終わりだろ。本気で辰川さんを絶望させたいなら、もっと新しい『絶望』を用意するはずだ。だからさ……」
虎太郎の脳裏に、師である北条の不敵な笑みが浮かぶ。
常識を疑え。
犯人の視点に立て。
「渋谷のビルも、公園の爆弾も、ただの『狼煙』だ。犯人はあえて十年前を見せて俺たちを釣った。本番はここから……新しい連続爆破事件の始まりだ」
「……なるほどな。サンキュー虎、俺の頭から固定観念をきれいに叩き出してくれた」
辰川は深く息を吐き、愛用のグローブを締め直した。
もはや、過去の地図に頼る必要はない。
今、この瞬間の悪意を、自分たちの手で叩き潰すだけだ。
「さあ……始めようじゃないか。一世一代の『鬼ごっこ』をな!」
辰川の瞳に、獲物を追う猛獣の光が宿る。
「ターゲットは台場。司、全捜査員に緊急手配! 志乃はテレビ局の入館ログと周辺カメラの解析、悠真はSNSのノイズから『次の爆破予告』を予測しろ! 虎、行くぞ!!」
特務課という巨大なシステムが、一人の男の意志とともに、凄まじい熱量で駆動し始めた。
「まずは台場へ向かう。そこは、俺が直接この手で処理すべき案件だ」
推理だけで終わらせるつもりはない。
辰川は迷いを断ち切ると、渋谷の喧騒を背に台場への直行を決めた。
「辰川さん、俺も向かうぜ! あんたの身に何かあったら、このヤマは詰む。……用心棒だと思って使い倒してくれ!」
虎太郎の決意は固かった。
爆弾の専門知識がない自分にできること。
それは、唯一の対抗手段である辰川に「爆弾以外の外敵」を寄せ付けないこと。
それが事件を終わらせる最短ルートだと、本能で理解していた。
「分かった。テレビ局で落ち合おう。頼りにしてるぜ、虎!」
「おう! 任せとけ!!」
二人がそれぞれのルートで最前線へと走り出した直後、虎太郎が無線を叩いた。
「なぁ、志乃さん……」
『どうしたの?』
「十年前の事件を詳しく知ってる奴って、当時の警察関係者と、被害者、その遺族……そんなところか?」
『ええ、基本的にはそうなるわね。大きな事件だったから世間の知名度は高いけど、爆弾の詳細な構造や、解除の成否まで把握している人間となると、極めて限定されるわ……あ』
虎太郎に説明を続けるうちに、志乃も「その先」にある可能性に気づき、声を詰まらせた。
「いつまでも犯人のメールを待ってちゃ埒が明かねぇ。こっちはこっちで、ホシに繋がりそうな連中を片っ端から洗ってみねぇか? もちろん、他の課の力も借りてさ」
その提案に、司令室の司は目を見開いた。
(虎太郎くん……。北条さんと組んでから、この子の成長速度は予測を超えている。犯人のプロファイリングや割り出しなんて、これまでの彼なら口に出すことさえなかったはずなのに……)
北条が隣にいた時の虎太郎は、文字通り「身体」だった。
逮捕のために地を這い、犯人を追ってビルを駆ける。
推理や手配といった「頭脳」の領域は、すべて師である北条に預けていた。
だが今、北条という盾を失ったことで、虎太郎は師が隣で何をしていたのかを、必死に思い出し、自分の血肉に変えていた。
『犯人逮捕への最短距離は何か』を、自らの頭で弾き出したのだ。
『――GOODよ、虎太郎くん。即座に実行に移すわ。志乃さん、当時の関係者を至急リストアップ! 私は各部署へ応援を回し、リストの人物を一人残らずマークさせる!』
『了解です!』
(ほぉ……虎の一声で司令部が、いや警視庁という巨大組織が動き出したか。北条の旦那にも見せてやりてぇな)
移動中のタクシーの中で、辰川は無線のやり取りを聞き、静かに、しかし誇らしげに口角を上げた。
過去の亡霊が仕掛けた復讐劇。
それに立ち向かうのは、かつての英雄一人ではない。
「台場まで飛ばしてくれ。特急だ」
辰川は運転手に告げると、眼前に広がるレインボーブリッジの先、巨大な「戦場」を見据えた。




