表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SEVEN~警視庁特務課~  作者: 桂木 京
第3話:恨みの花火

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/107

渋谷

秋葉原を後にした二人が最後に降り立ったのは、若者の熱気と喧騒が渦巻く街、渋谷だった。


「そろそろ、時間か……」


辰川はセンター街の入り口にある手頃なカフェに入ると、


「ちょっと落ち着こうや。好きなもん頼め」


と、向かいに座る虎太郎にメニューを差し出した。


「あ……ご馳走様っす」


虎太郎が品定めをしている間、辰川は窓の外、通りを挟んで向かいに見える巨大な商業ビルに、吸い込まれるような視線を向けていた。


(もう、あれから十年も経つんだな……)


その横顔があまりに寂寥感に満ちていたため、虎太郎は注文を終えた後、思わず問いかけていた。


「……なんかあったんすか? この場所で」


辰川の視線は動かない。

ただ、深い場所から絞り出すように、ポツリ、ポツリと話し出した。


「あのビルでな、大規模な爆弾テロがあったんだ。死者は三十人。……俺の友人も、あの中で犠牲になった。仕掛けられた爆弾は二つ。一つ目が爆発した直後、警視庁に犯人から挑戦状が届いた。『東京を火の海にしてやる』ってな」


「それ、知ってるかもしれないっす……」


虎太郎がまだ中学生の頃、連日ニュースを震撼させていた連続爆破事件。

記憶の断片が、目の前の光景と重なり合う。


「あれ……このビルだったのか……」


東京各地で何発もの爆弾が炸裂し、大都会が恐怖に慄いた一週間。

当時の捜査一課――北条たちが爆弾処理班と連携し、都庁爆破を未然に防いで犯人を逮捕したことで、ようやく悪夢は終わったはずだった。


「このビルの二発目は、どうなったんすか?」


「あぁ。俺が解除した。だが、犯人のルールはえげつなくてな。二発目を解除した残り時間が、次の現場のタイムリミットに加算される仕組みだった。早く解除すれば余裕ができるが、手間取れば次の現場が地獄になる。常に誰かの命を天秤にかけながらの、ギリギリの作業だったよ」


「なんだそりゃ……クソ野郎だな……」


虎太郎は背筋に冷たいものが走るのを感じた。

秒刻みで削られていく命。

失敗すれば、背後にある街が吹き飛ぶ。

そんな修羅場をいくつも潜り抜けて、今、目の前で静かにコーヒーを待っているこの男。


(なんだよ……ものすげぇデカじゃねぇか、このおっさん……)


辰川への印象が、尊敬を超えた「畏怖」へと変わり始めたその時。

辰川が腕時計に目を落とした。


「十二時まで、あと一分……」


十年前の今日、十二時。

それが、地獄の始まりを告げる一発目が放たれた時間。


「辰川さん……。だから、今日この時間にここに……」


浅草、秋葉原、そして渋谷。

これまでのパトロールコースはすべて、かつての爆破地点だったのだ。

辰川は、あの日救えなかった命を弔うために、街を歩き続けていた。


「さあ……時間だ」


時計の針が、重なり合う。

十年の歳月を飛び越え、運命の十二時が訪れた――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ