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───残暑・アイ───
夕暮れが降りてくる。
昼の熱を薄めるように、淡い影が伸びていく。
その時、僕らの声は重なった。
長く、細く、胸を締めつける調べ。
人は「物悲しい」と呼ぶその響きを、
君はただ微笑んで受け止めてくれた。
「寂しい音色ね」
そう言った君の横顔が、夕焼けに赤く染まっていく。
けれど僕には、君の声と重なるこの響きこそ、
愛の証に思えたのだ。
足元には彼岸花が咲き誇っていた。
燃えるように立ち並び、しかしどこか冷たく揺れている。
まるで、僕らの行く末を見守る境界の灯火のように。
恋は長く続かない。
やがて訪れる夜の深みに、僕らは消えていく。
それでもいい。
命の最後まで、君と声を重ね合えたのなら。
──夏の終わり。
誰もいなくなった宵に響くのは、
二つのひぐらしの声だけだった。